第97話 レイズ魔国城陥落

 間近で次々と『レイズ』魔国兵達が自爆攻撃をしていく様を見ていたシュライダーは、唖然とした表情を浮かべていた。


「こ、こいつら狂ってやがる……っ!」


 レイズ魔国の重鎮や幹部だけならまだ理解は及ぶが、単なる一兵卒までもが全く躊躇う事もせずに極大魔法を自分を中心に展開して自爆していくのである。


 それもやぶれかぶれで行っているのではなく、明確に『ラルグ』魔国兵を探し出して自爆を行う為に、その覚悟の大きさが見て取れるのであった。


 ラルグ魔国所属のNo.4である『シュライダー』は残っている『レイズ』魔国兵達を生かして、捕虜にする事を条件に『ラルグ』魔国に連れ帰るつもりだったのだが、目の前でこうも死を恐れずに次々と自爆されてはその気を完全に失ってしまうのであった。


 ――こいつらに生かす交渉など、全く意味を為さない。


 祖国のためにあっさりと自分の命を投げうって、自爆を行う覚悟ある者がこれだけいるという事実に『シュライダー』は、改めて『レイズ』魔国の恐ろしさを理解した瞬間でもあった――。


 それだけ『シス』という『レイズ』魔国の女王と、その女王を支える『ヴェルトマー』という側近の影響力が、この国にとって絶大なるものであった事の証左である。


「全く! !」


 シュライダーはそう吐き捨て、軍特務曹長『ナゲイツ・ディルグ』に後の事を任せて、自分の指揮下の部下達を引き連れて一足先に『ラルグ』魔国へと帰還するのであった。


 この日『ラルグ』魔国から仕掛けた開戦宣言から、僅か四時間余りという短い時間で戦争は終結した。


 そしてその日の内に『ラルグ』魔国は、完全に『レイズ』魔国を制圧してその近隣の街や村を全て『ラルグ』魔国領とする宣言を果たして、支配領域を伸ばす事に成功するのであった。


 今回の一件で過程はどうであれ、結果として『ラルグ』の王『シーマ』はこれで一気に『』に近づくのであった。


 そしてその日から数日が経ったが『ラルグ』魔国では『レイズ』魔国を陥落させた祝勝会が連日に渡って開かれ続けていた。


 まだ『トウジン』魔国という大きな敵国が残ってはいるが、国力の差から『ラルグ』の者達は、『レイズ』魔国程までには『トウジン』魔国を警戒をしてはいないようだった。


 それもその筈『ラルグ』魔国の『シーマ』王以下『ラルグ』の現体制は完璧に近い布陣が整っているからであった。


 ラルグ第一軍、総勢3500名  平均戦力値『500万』。

 ラルグ第二軍、総勢4000名  平均戦力値『350万』。

 ラルグ第三軍、総勢7000名  平均戦力値『150万』。

 『シュライダー』私兵軍 総勢700名  平均戦力値『400万』。


 ラルグ全軍――、凡そ万を越える『魔族』達が『シーマ』王に忠誠を尽くして『ヴェルトマー』大陸統一に命を懸けている。


 そしてその『ラルグ』魔国兵を取り纏めている幹部達もまた、それぞれが侮れない膨大な力を持っている。


 『シーマ』王【戦力値3770万】『ラルグ王』


 『ゴルガー・フィクス』【戦力値2237万】『王補佐』


 『ネスツ・ビデス』【戦力値1800万】『ラルグ統括軍事司令』


 『シュライダー・クーティア』【戦力値1640万】『ラルグ統括軍事副司令』


 『ニーティ・トールス』【戦力値1320万】『ラルグ軍事管理部隊長、槍兵特攻隊長』


 『ナゲイツ・ディルグ』【戦力値700万】『ラルグ第一軍特務曹長』


 これが現時点で『ヴェルマー』大陸でである。


 ……

 ……

 ……


 そしてレイズ魔国の大魔法使いであった『ヴェルトマー』の魔法によって『ヴェルマ』ー大陸から、強制的に転移させられた『シス』女王は『ミールガルド』大陸のに飛ばされていた。


 シス女王は意識を失っていたが、目元から涙がぽたりと一滴。


 頬をつたって落ちていった――。

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