第21話 伏兵
Aブロック第一試合も大詰めで『リース』のギルドは最後の一人となり、観客席に居る者達は優勝候補『サシス』のギルドの勝利を信じて疑わなかった。
まだ『サシス』のギルドは先鋒が戦っており、この後にまだ二人も残っている。そして更に言えば万が一に大将戦までもつれ込んだとしても、
しかし観客席とは打って変わって観戦室では、ソフィとニーアがリマルカ選手に注目をしていた。
「ニーアよ、
突然問いかけられたニーアだが、あまり迷わずにすんなりとソフィに答えを出す。
「相手にこちらの間合いへと入らせない為に、小規模の魔法でタイミングを狂わせたりするかな」
ニーアの答えに満足気に頷いたソフィだが、ソフィはまた違う見解を示した。
「うむ。まぁそれも間違いではないがな、一定以上の戦力差がある時は
そして審判が試合開始の合図を出したと同時に、リマルカは詠唱なしで即座に魔法を放った。
「いくぞ……!」
――上位魔法、『
リマルカが杖を高く掲げて魔法を放った。
――その瞬間。
何もないところからいきなり強力な風が巻き起こり、ミルリに激しい風の圧が次から次に襲い掛かっていった。
「ぐ、ぐおおお……っ!!」
ミルリは『
そして何とかミルリはリマルカとの距離を縮め拳が届く距離まで辿り着く。
「はあああっ!」
そして力を溜めた渾身の一撃を放とうと、リマルカの鳩尾をめがけて拳を突き出す。
その一撃の威力は相手に届く前であっても、見ている者に伝わる程の重そうな一撃であった。
たとえ相手が魔法使いではなく、近接戦闘を行う戦士のような相手であっても耐えられそうにない程である。
しかし――。
「ふっ……、残念だったな」
――上位魔法、『
突如、風が立ちはだかりミルリの拳は、風の圧に阻まれて押し戻されてしまった。そしてミルリは数秒逡巡したが、そのまま
「勝者、リマルカ!」
観客席から歓声が再び挙がった。
「相手に合わせて的確に『魔法』を使い、そしてあれだけの魔力を使ってもまだまだ余力がある」
同じ魔法使いとして色々と先を進んでいるリマルカの様子に、ニーアは尊敬の念を抱き始めたようだった。
(うむ。奴の戦力値は少しばかり、他の者より差があるようにみえる。このままであれば決勝トーナメントにまで残るのは奴で間違いないだろうな)
まだ『サシス』の次の選手も見てはいないが、戦力値70000を超える者はこの世界の冒険者ギルドというモノを通して一か月程見てきたソフィに、なかなか居ないだろうと判断させるのだった。
そして『サシス』の町の二人目が出て来る。
――『サシス』ギルド所属の代表選手『ウォルト』(剣士 冒険者ランクB)。
「流石に『サシス』の町の冒険者ギルドは層が厚いね。勲章ランクが高い冒険者がゴロゴロいる」
基本的にどこのギルドも遠征登録をしている冒険者が多い筈で、当然名誉ある対抗戦も重要ではあるが普段の生活がある以上は遠征に出ている選手も多く居る。
それ程までに遠征は稼げる上に、依頼を達成した時のポイントが大きい。そうだというのにギルド対抗戦にこれだけ多くのBランクを出場させられるというのだから『サシス』のギルドの厚さが窺える。
あまり高ランク冒険者が居ない『グラン』のギルドではとても考えられない事であった。
ニーアの呟きの言葉にソフィがグランの冒険者ギルドの事を考えていると、審判の合図で第四試合目が開始されるのだった。
新たに始められた第四試合だが、同じ冒険者ランクBといってもリマルカの『魔法』の攻撃速度が速く、先程の第三試合と同じ展開になりつつあった。
開幕に『
そのまま前に出るしかないウォルトは、防戦一方で全く良いところを見せられずにいるようであった。
あくまでこの世界の常識ではあるのだが、普通であればこれだけの『魔法』を連発すれば、魔力切れを起こしてそのまま倒れるのがオチなのだが、リマルカの持っている『魔力』は相当なモノのようで、これだけ連発しているというのに一向に魔力切れを起こす素振りが見られなかった。
しかし速さを活かした攻撃を行いながら徐々にではあるが、ようやくウォルトは間合いを詰める事に成功する。
そして自分の間合いになったところでようやく
どうやらリマルカはかなり近距離戦に戦い慣れているらしく、対近距離戦では対策パターンが確立されているようだ。
こうなると飛び道具等を持たない物理前衛の職は辛い。
結局何も出来ずにウォルトは遠距離からの『
「勝者、リマルカ!」
これで『リース』ギルドも二連勝となり、大将対決にもつれ込んだのだった。
「ふっふっふ、追いつきましたな」
意気揚々と『リース』のギルド長ミケイドが『サシス』のギルド長であるクラッソに話し掛けるのだった。
「ええ、どうやら貴方のギルドの大将を務めているリマルカ選手は、相当にやるようですね? 過去に見た事がありませんが、最近所属されたのですかな?」
「え? う、うむ。まぁ、そんなところですよ……」
ミケイドは少しはクラッソが悔しがる顔を見て今までの留飲を下げようとしていたのだが、全く焦りを見せないどころか、むしろ余裕すら感じさせる様子にアテが外れてしまった。
――クラッソが
大将が
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