1-40 意外な申出
「ん?テラクリス。どこかで聞いたことがある名だな」
ジャスは悩んでいる俺の姿を見、なにかと勘違いしたらしく誇らしげに胸を張った。
「今更気づいたか。俺の親はこの学園の学長なんだよ」
俺は呆れてなにも言えなくなった。
「ははは、怖気付いたか。だがな今更遅いんだよ」
なんだこいつ、いったいどこからこんな自信が出てくるんだ。しかもなにも考えずに突進してきてるし、どうせ俺が得意なのは魔法だけだとでも思っているのだろうな。
ジャスが一方的に殴りかかってくる。
「おいおいどうしたよ。防戦一方じゃねぇか。避けてるだけじゃ勝てねぇぞ。やっぱりお前は魔法だけのようだな」
俺はジャスに笑いかけてやる。
「俺がなぜ避けているのかもわからないのか」
俺の笑顔に怯えたか。ジャスは一瞬攻撃の手を緩めた。それのせいで俺の避けるタイミングがずれてしまった。もろにジャスの拳が俺の顔に命中する。
ジャスを応援していた三年生達がドッと湧き上がる。
「痛え!!」
ジャスの声が会場の喧騒をかき消した。観客席ではなにが起こったのか分からずざわついていた。
「すまなかったな。お前が急に攻撃を緩めるものだからタイミングがずれたんだ」
ジャスは不思議そうに自分の手を見ていた。
「くそ、どう言うことだ。っは!!そう言う事かなにか魔法を使ったんだな」
自己解決し間違った答えを導き出したジャスに本当のことを伝えた。
「俺は魔法など使っていないぞ?」
「嘘に決まってる」
「いや、嘘ではない。お前の拳より俺の顔の方が硬かった。ただそれだけのことだ」
信じられないといった顔をし恐怖心をかき消すようにジャスは残った左手で殴りかかってきた。今度はジャスの手から鈍い音が鳴った。
「人の言ったことを信じないからそうなるんだ」
自分の左手を凝視してやめないジャスに殴りかかる。ジャスは俺の動きにはお構いなしと呆けたツラをし固まってしまった。
「勝者カイ・グリアムズ」
学校側が俺の勝利だと伝えたが三年生達が納得いかないと抗議をし始めた。内容は前例がないだの。三年生が一年生に負けるはずがないだの。どれもくだらないものだった。
俺は会場にいる全員に聞こえる声で叫んだ。
「納得がいかないと不満を持つものは直接来るがいい。実力差を直接体に教えてやる」
観客席から大量の三学年が降りてくる。中には二学年のようなやつまでいるようだ。
「俺の試合を見てこれだけの数が納得いかなかったのか。こんなことを言うのも嫌だが、お前たち才能ないぞ」
忠告を挑発と受け取った二百人弱が一斉に突撃してきた。
それぞれが何かを叫んでいるので一人一人がなにを言っているかまでは聞き取れなかった。
「これだけの数をバカ正直に相手するのも疲れるな」
俺は自分の魔力の一部を周囲に飛ばし一人一人に俺の魔力を少しぶつけた。すると百九十人が俺に恐怖を覚え放心状態になった。
「残ったのは十人だけか……」
残った十人は一斉に倒れた仲間を見て動揺している。
「これでも俺に勝負を挑むのか?それならば本気で相手してやろう」
俺は威嚇する程度に魔力を飛ばしてやると残り十人もその場に力なく倒れる。
「素晴らしいよカイ・グリアムズ君」
試合を見ていたバリモ学長が俺に拍手を送った。すると会場中に拍手が広がって行く。
「三年生相手に勝ってしまうとは予想もしていなかったよ」
バリモ学長は俺の肩に手を置いた。俺はその手を払う。
「お前誰だ?学長ではないな。姿形は似ているが魔力が少々違っている」
偽バリモはお手上げだと両手を上げ敵意はないということを伝えてきた。
「聞いてた以上だよ」
「だろう?本当にすごいだろう」
バリモ学長が空から降りてくる。
「そうだな。バリモ君の言う通りこれだったらうちの学園に来ても申し分ないだろう」
俺は二人がなんのことを話しているのかいまいちわからなかった。
「おい、学長いったいなんの話をしているんだ?」
「おお、そうだった。紹介しよう。彼は勇者育成専門学園の学長をしている私の友達の笹原和義
バリモ学長の紹介が終わると笹原学長は頭を下げた。
「はじめましてカイ・グリアムズ。君の話はよくバリモ君から聞いていたのだよ。それで今話していたのはだね。君はすでに魔王学園で学ぶことは無くなったということで私の学園への編入を考えていたのだよ」
話を聞いていた会場の全員が声を出した。
「魔族が人族の学園に編入だって!?しかも勇者とか言っていたぞ」
会場。いや国中が騒ぎはじめた。
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