1-39 カミュに魔力提供

 俺は自分の周り結界を張り、次から次へと爆発させる。

 正直これだけでカミュを倒せるとは思ってもいない。あいつがどの程度成長したのかわからないからな。手を抜かずに殺す程度で構わないだろう。

 十分程爆発し続ける。

この程度で十分だろうか。しかし、これ以上続けたらそこらへんでのびてる奴らにも影響が出かねない。

 爆発を止めると一気に視界が開けていく。周囲を確認するがカミュらしき姿はどこにも見えなかった。

 やりすぎたか?体が残らないほど爆発させてしまったのだろうか。しかし、こんなに弱いわけがない。

 俺は勢いよく腕を後ろへ振った。すると、何かにあたった感覚が右腕を通じ感じてくる。

「やはりな、こういうときは背中を取ってくる。そういうやつだもんな、お前は」

 カミュは顔を抑えながら姿を表した。

「イテテ、絶対私の勝ちだと思ったのに油断したな」

「いつも言っているだろう?油断は大敵だぞ」

 人差し指をカミュに向けるとカミュは余裕の笑みを浮かべてきた。

「えへへ、でも私の方が有利だという事は揺るぎませんよ?」

 カミュは再び姿を消そうとするが消える事ができなかった。

「ん?どうした?姿を消すんじゃなかったのか?」

「そのつもりなんですけど……あれ?何度やろうとしてもうまくいかない。なんで?」

 カミュは顔中に汗を流し始めた。

「さっき、お前に触れたときお前の体に俺の魔力を少し混ぜてやった。どういう事か、わかるな?」

「もしかして、魔力をうまく制御できなくなってる」

 俺はカミュに拍手を送った。

「正解だ。つまり、今のお前では俺の前から姿を消す事はできないというわけだ」

 カミュに近づき、魔力を流し込む。カミュは急に大量の魔力が流された事により魔力酔いを起こし気絶した。

「ふぅー、手こずらせやがって、短期間でよくここまで成長したもんだな」

「勝者Sクラス!!上級生への挑戦券を獲得したのはSクラスだ」

 拡声器から声が流れるとラフクスが叫んだ。

「よくやった!流石はカイだ」

 俺はニアとピカトル二人を肩に担ぎ演習場を出た。

 久しぶりに緊張したな。しかし面白かったぞ。俺を楽しませることのできるやつが上級生にまだいるのか?


 次の日、上級生との試合の連絡があった。フォンが嬉しそうに話す。

「上級生への挑戦のことなのですが、カイくんが異常な程強いという事で三年生とだけやることになりました」

 三年生とだけか、まあいいだろう。別に弱いやつとやるつもりは無いがな。

「それと言い忘れてましたが上級生への挑戦券を持つのは一人だけです。カイくんは明日に備えてくださいね」

「わかった」

 ニアは隣で悔しそうな顔をしていた。

「どうした?そんな顔して、昨日負けたのがそんなに悔しいのか?」

「当たり前でしょ?入学当初は私よりも弱かった人に負けたんだから。同じ時間を与えられたのに彼女のほうが強くなってるのよ。自分の怠惰ぶりに嫌気がさすわ」

 ニアは負けた事が悔しいというよりは自分の不甲斐なさに苛ついているようだな。今まで自分に溺れていたからな。いい薬になっただろう。

「カイ、あなたなら軽く勝てると思うけど油断しないでね。三年生の代表なんだから今までのように簡単にはいかないだろうからね」

「心配してくれてありがとうな」

 俺は軽くニアの頭を叩いた。


 第一演習場はいつも以上の観客で賑わっていた。

「おいおい、一年生の代表ってお前だったのか」

 馬鹿にするような口調で三年生代表は俺に声をかけてきた。

「ああ、お前は確か入学式の日に一番騒いでいたやつだな。少しは強くなったのか?」

 三年生代表は、その鋭い目で睨みつけてきた。

「やっぱり、お前のその態度気に食わねぇな。この試合は国中に中継されているんだ。俺にぼこぼこにされる様子を皆に見てもらおうぜ」

 俺の両目から涙が出てきた。3年生代表は笑ってきた。

「どうした?そんなに怖いのか」

「ああ。明らかに弱いお前が威張っているもんだから俺の魔眼が悪くなったのかなと怖くなってきたんだ」

 俺は笑い声を出さないように我慢しながらそう言うと三年生代表は尚更目つきが悪くなった。

「あ〜、マジうぜぇ」

 拡声器から声がなる。

「これより、魔王城立魔王育成専門学園の一学年代表カイ・グリアムズVS三学年代表ジャス・テラクリスの試合を始めます。両者は準備を始めてください」

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