1-27 聖剣
念のため回復魔法をかけている間、大蛇から目を離さなかった。
確実に死んでるな。
大蛇が死んでいるのを確信すると狼たちを弔い、その場を後にした。
結界に守られた城に帰ってきた。
もしかしたらと思い、城へ帰ってきたのだが、やはり結界は解除されていないな。
ノックするように結界を確認すると、白い魔力の層で体を包んだ。
ここの結界は白い魔力で構成されている。先程の大蛇も白い魔力の前では無力に等しかったところから見るにこの白い結界と俺の魔力は同じ種類の魔力なのではないのか。
結界へ足を踏み入れると難なく結界の内側へ入る事ができた。
やはり、俺の推測は当たっていたか。
俺は軽くガッツポーズをとると、城へと向かった。
城は孤島のようなところに建っており、周りから切り離されていた。城門まで続いてる唯一の橋は石造りになっており橋の部分部分に設置されている外灯はとても趣があった。
俺は橋を渡り終えると大きくそびえ立つ城門の前に立った。
もしかしたら、誰か住んでいるかもしれないな。
城門を叩いてみたが、扉の向こうからは何の反応も返ってこなかった。
「失礼するぞ」
念のため一言断りの言葉を入れながら扉を開ける。
城内は思ったよりかは汚れていなかった。そして、長い間放置されたような雰囲気を醸し出していた。
奥の大扉へ続く廊下にはレッドカーペットが敷かれており、その脇には普通のドアがあった。
やはり、人がいるとしたら。あの一番奥の大きな扉の向こうだろうな。
レッドカーペットに従い真っ直ぐ大扉へと向かう。
大扉を押すと古い木製のドア特有の音を立てて動き出す。
部屋の中心には台座が置かれていた。
台座に近づくと開けっぱなしにした大扉が勢いよく閉まった。大扉に続くようにカーテンが閉まっていき、外からの光が遮断されると台座の上に王冠を頭に乗せたふくよかな体型をした男が映し出された。
「よくぞ、
自称王様は、ウィンクをすると話を続けた。
この城の屋上にドラゴンを倒すため、聖霊族が使用した聖剣が保管されている。この聖剣は選ばれし者しか抜けないと言われてな。この城に入ることのできたお主なら抜くことも容易いであろう。その聖剣を抜き、各所に散らばる聖武具を集めドラゴンが復活した際にドラゴンと戦ってほしいのだ」
自称王様は話終えると一拍おき、再び話始める。
「残りの時間はお主の質問に答えてやる。あまり時間が無いのでな、本当に聞きたいことだけを聞くんじゃ」
俺は頭を整理して重要な事だけ聞くことにした。
「お前、本当に王様なのか」
自称王様は驚いた顔をした。
「お主の本当に聞きたい事がそんなことなのか…。とりあえず質問には答えよう。そうだとも私はこの街の王様だ」
俺はこいつの話したことが本当かどうかを見極める必要があると思ったが自称王様が徐々に薄くなってきているので、とりあえず、大事なことだけ聞くことにした。
「他にも聖武具があると言っていたがどこにあるんだ」
自称王様は眉毛をハの字に曲げ困った顔をした。
「聖武具がいくつかある事は聞かされたのだが、どこに封印するかまでは教えられなかったんだ。しかし、聖霊族が立ち去る前に『もう少し北の方に一つは封印する』と言っていたのを聞いた」
質問に答えると自称王様の姿は完全に見えなくなった。
そしてカーテンが開き、大扉が音を立てながら開いた。
時間切れか。確かこの城の屋上に聖剣が保管されていると言っていたな。ひとまず見に行くか。
城の屋上へつながる階段を探すがなかなか見つからなかった。
この部屋にあるわけではないのか。
他の部屋も探すが屋上へつながる階段を見つけることは出来なかった。
いったい、どうなっているんだ。あの自称王様が嘘をついていたと言うことか。
再び台座のある部屋に戻り、台座を入念に確認するとそこに手をはめるための穴が彫られていた。
恐る恐る手を置くが何も反応しなかった。
俺は不思議に思い、何度も繰り返す。しかし、何度やっても何も起こらなかった。
体を白い魔力で包み込み、手を置いてみると手形の真ん中に取り付けられていた宝石が俺の魔力を吸い取り始めた。
しばらく吸わせていると天井から階段が降りてきた。
結構魔力を吸われたな。この先に聖剣があるんだな。門番のような奴がいなければいいのだが。
俺はゆっくり階段を上った。
階段は屋上につながっており、ボロボロの剣が台座に突き刺さっていた。
これが本当に聖剣なのか。長い間、放置され続け風化したのでは。
俺はボロボロの剣の柄を両手で握りしめ勢いよく抜いた。
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