1-24 白い魔力

 俺は、魔力の層に属性を加える方法が載った本を一通り目を通すと

「カミュ、明日は帰ってこないかもしれない」

 魔力制御に集中していたカミュに話しかけると、彼女は何かを察したのか真剣な顔になった。

「わかりました。気をつけていってらっしゃいませ………まぁ、教官殿も男の子ですしね」

 カミュはにやつく。

 最近、確信し始めたのだがこいつは早とちりがすぎるな。

 俺は説明するのを面倒に感じそのまま誤解させることにした。

 次の日、学園に早く着くとフォンに会いに行った。

「今日、俺は学年別対抗戦のために山籠りして来ようと思うのだが許可をくれないか」

 この学園は、学園を私事で休む際、担任の許可が必要なのだ。

 フォンは、快く承諾してくれた。

「構わないわよ。カイ・グリアムズ君なら学長先生もすぐ許可してくれるだろうし」

 そう言うと、彼女は書類を書き始めた。担任のサイン欄に名前を書く。

「これを学長先生に見せてサインもらってきて」

 そう言うと、俺に書類を渡してきた。軽く会釈し礼をいうと俺は学長室へと向かった。

 コンコンコン。

「カイ・グリアムズだ。失礼するぞ。バリモ学長」

 恒例の如く、返事を待たずに部屋へ入る。そのまま、学長の机に書類を置く。

「これにサインをくれないか?」

 学長は何も聞かず、すぐサインをくれた。

「君の圧倒的な力を対抗戦で見られると祈っているよ」

 学長は笑顔で俺を送り出してくれた。

飛行フーブ

 宙へ舞うと、人が住んでいなさそうな山へ向かい飛び出した。

 街を抜けると田んぼが見え始め、次に果樹園。そして俺の目的地の山へ着いた。

 できる限り山奥に行くか。使ったことの無い魔法を唱えるからな暴発して辺りを消し炭にしてしまったら後味が悪い。

 俺は魔力の層を作り出す。属性を加えてみたが、なかなかうまく行かない。普通に魔法を使う時よりも魔力に集中しなければいけないようだな。

 周辺一帯の木がカイの放つ魔力によってざわつき始める。動物たちは巣へと逃げ帰りたちまちその場にいた動ける生命体は姿を消した。

 カイの体から白い光が放たれる。白い光はカイを中心にどこまでも広がり、世界を包み込んだ。一瞬の出来事だった。光は収まり、中心にいたカイは清らかで純粋な白い魔力を体から発していた。

 成功か?

 俺は、自分の体を確認する。今までと感覚が違う。体がとても軽くなった気がする。身体強化魔法に似ているな。今なら何でもできるそんな気さえする。

 姿を消した動物たちが姿を現し、カイの下へ集まってくる。動物たちは俺の足元に来ると居心地が良さそうに寝始めた。

 この白い光が動物たちの警戒心を緩めているのかもしれないな。

 寝ている動物の頭を撫でた。

 その後、他の属性には変えられるか試してはみたが、どの属性もうまくはいかなかった。

 もしかすると、得意な分野で変わるのだろうか。しかし白い魔力とは聞いたことがないな。

 俺は差出ゼントで属性についての本を取り出し読んでみた。しかし、どこにも白い魔力についての記述は載っていなかった。

 ん?どこにも載っていないとなると尚更不思議でならないな。しかし、正直魔力の消費量からみても、身体強化魔法のほうが効率がいいな。

 などと考えにふけっていると辺りは暗くなっていた。

 今から帰るにしても暗くて危ないな。カミュには伝えてあるから寮に帰らなくても大丈夫だろう。

 俺は木の枝を集め、魔法でそれらを燃やし焚き火を作ると差出ゼントで山へ来る前に買っておいた肉を取り出した。

 肉を焼くと香ばしい匂いが森中に広がる。すると、近くの草むらで何かが動く音がした。魔眼で見るが魔力の反応はない。

 魔力の反応が無ければただの動物だろうな。

 俺は警戒を解き肉を焼く事に集中する。

 肉の焼き加減ですべてが決まる。一瞬も目を離すことは出来ない。何者であろうと俺の焼き肉を邪魔したやつは生きては帰さない。

 すると、脇腹や肩などに何かが触れてきた。グイグイと引っ張られるが俺は無視し肉だけを見続ける。引っ張られる部位が増えていく。

「いい加減にしろ!!なんださっきから」

 俺は、立ち上がり振り向くとそこには複数の狼がいた。

 なるほど、狼に噛みつかれていたという事か…。

 俺は魔力を最大限に体外へ放出する。

 狼たちは怯み草むらへ逃げようとするが俺が創り出した魔法の縄は軽々と狼たちを捕らえた。

 俺は、狼を睨みつける。

「お前らは、俺の邪魔をした…。覚悟はできているのだろうな」

 俺は丁度良く焼けた肉を持ち、狼の下へ行く。

 狼たちは肉の匂いを嗅ぐと食べたそうにだらしなく涎を垂らしている。

「なんだ、涎を垂らして。この肉がそんなに食べたいのか」

 俺は、狼の口元へ肉を近づけていくと狼は口を大きく広げた。口を閉じた瞬間に肉を素早く俺の口元に移動させ俺が食べる。

 うまそうに肉にかぶりついていると狼たちが甘えた声を出す。しかし俺は狼たちに見せつけるように肉を食べ続けた。

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