1-23 カミュの成長
「あーあ、もったいぶんじゃねぇよ」
ラフクスは不満げな顔をし、机を蹴り八つ当たりしていた。
「おい、ラフクス。机が壊れるだろ」
俺は、机が嫌な音を出していたのでラフクスを注意すると、ラフクスは意外な顔をした。すると、教室のあちこちから笑い声が上がった。
「おいおい、人の人格を壊したお前が言うのか」
ラフクスが馬鹿にした顔で俺の肩を叩く。クラス全員が「そうそう」と頷いていた。その中でニアだけは不貞腐れた顔をしていた。
俺の悩みがラフクスによって解明された。
『このクラスにまでカミュの事が広がっていたのか。だから最近廊下を歩いていると生徒たちが逃げるようにいなくなったのか』
最近の悩みがなくなったが、また新たなしかも大きな悩みが生まれた。
俺は寮まで続く道を歩いていた。
『確かにカミュは見違えるほど成長した。しかし、見違えたのは外見だけでなく性格もだ。あれは俺ですら鳥肌が立つ。どれだけ厳しくしようがカミュは厳しくされるだけ喜ぶのだ』
今までの事を振り返っていると後ろからなにか衝撃を感じた。
「ぐぇ」
俺は考え事に集中していたせいで情けない声を出してしまった。振り返るとそこにはカミュがいた。俺は呆れるとともに自分が未熟だと思わされた。
『あいかわらず、こいつは影を薄くするのがうまいな。今の俺ではこいつが完全に気配を消したら姿を現すまで見つけることはできないだろう』
自分の不甲斐なさを目の当たりにしている俺とは対象的にカミュは嬉しそうに話しかけてきた。
「教官殿、学年別対抗戦出場の一人に私が選ばれました!!」
カミュは手を上げてピョンピョンしながら俺の前にいる。俺は視界の下から何度も飛び出すカミュに不快感を覚えた。
「跳ねるな。目障りだ」
俺は、何度も飛び跳ねるカミュの頭を手で抑えつけ動けなくした。しかし、カミュは一層笑顔になる。
「えっ!?教官殿が私の頭を撫でてくれている。うれしいーーー!!」
カミュは俺の行動を誤解すると、叫びながらどこかへ走り去ってしまった。
「仲のいいこと」
少し前から隣にいたニアが嫌味ったらしく言うと、恥ずかしそうに頭を下げて、小さい声で話し始める。
「三人目、私が選ばれたら私にも…なでなで…してね」
あの常識人のニアですら、俺がカミュの頭を撫でているように見えていたようだ。
『なぜに、誤解するんだ』
俺は頭が重くなったように感じた。
「いいか、ニア。俺はなカミュの頭を撫でてなどいない」
誤解を解こうとしたが、ニアは唇を尖らせた。
「したかしてないかはどうでもいいの。とりあえず私が選ばれたら頭を撫でてね」
彼女は俺の前に人差し指を突き出した。
部屋についたがドアには鍵がかかっており中には人の気配が無かった。カミュはまだ帰ってきていないようだった。
『いったいどこまで行ったんだ』
俺は、荷物を置くと
空から探索しているがなかなかカミュの姿が見当たらなかった。
『あらかた全部見て回ったと思うのだがな』
「きょ……かん……」
俺は諦めて部屋に帰ろうと方向転換したとき後方から声が聞こえた気がした。振り返るが誰もいなかった。
『空耳……か』
俺は、再び方向転換し進み始める。
「きょう…ん」
するとまた後方で声がした気がした。振り返るがやはり誰もいなかった。
再び部屋へ向かおうとすると足に重りがついたかのような感覚が走った。
『俺は空中にいるわけだから足が引っ張られる訳がない』
足元を見るとそこには俺の足を両手でがっちりホールドし必死に掴んでいる少女がいた。
「カミュ!お前何してるんだ!!」
あまりの光景に驚きつい叫んでしまった。
「いやー、空に教官殿が見えましたので魔王城の壁を登り、そこから飛びつきました」
彼女は悪そうな笑顔をしながら説明した。
仕方が無いので彼女を抱き上げ部屋に向かった。
「うわぁ〜教官殿にお姫様抱っこされてますわ」
カミュは腕の上で上下左右にバタバタ暴れていた。
「少しはおとなしくしてろ」
飛びづらかったので彼女を抱き上げている両手に少し力を入れると彼女は「ひゃっ…」と驚いた声を出すと静かになった。
『やれやれ、これで安全に飛行できる』
俺はカミュを落とさないようにしながら低スピードで寮へ向かった。
寮へつくとカミュを降ろさずそのまま首根っこを掴み部屋まで連れていった。
「少し、静かに魔力制御でもしてろ」
俺は投げやりに命令すると、彼女は真面目な顔になり動かなくなった。
『これでやっと静かになった』
俺は本を出し、本を読み始めた。
そこには、魔力の層に属性を加える方法が載っていた。
『そういえば、結局あいつら魔力の層を作ることができなかったな。どうして出来なかったのだろうか』
俺はその日その事だけを考えたが、結局答えらしい答えが浮かばなかった。
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