1-12 異変
俺は今校長室前へ来ていた。入学式が終わると校長に呼び出されたからだ。
「カイ・グリアムズだ。来たぞ学長」
軽くノックすると中から返事が返ってきた。
「入ってくれたまえ」
「失礼する」
ドアを開け校長室へ入ると、そこにはバリモ学長と見知らぬ女の魔族が立っていた。
「よく来てくれた。さっきのは見ていて面白かったぞ」
「そうか。まさかそれを言うために呼び出したのか?」
バリモ学長は、両手を上げ首を横に振ると、やれやれと言った。
「私の隣にいる先生は君のクラスの担任となるわけなんだが、彼女がどうしても君と話をしてみたいと言うわけだ」
バリモ学長が言うと隣にいた先生がお辞儀をした。
「私は、フォン・ユアテルといいます。よろしく、グリアムズ君」
「よろしく頼む。ユアテル」
俺は、軽く会釈をした。
「私は、あなたの先程の魔法を見たとき、こう思ったんです」
彼女は、顔をぐいっと近づけ、目を輝かせ始める。
「あなたと戦ってみたい。とね」
「なるほど。それで?」
「それで、明日自己紹介を兼ねて1-Sクラスで実戦を想定した試合をやりたいと思っているのですよ」
彼女は、なぜ一生徒の俺にこんな話をしてきているんだ?明日クラスでいえばいいだけなんじゃないのか。
「俺に明日なにかしろというのか?」
「いえいえ、そういう訳ではなく」
なんだ?俺に何か頼み事があるわけでもないのか。
「あなたが本気を出して、今の生徒と戦ってしまうと下手したら殺しかねないので少々手加減してもらいたいのです」
俺は、つい笑ってしまった。
「なるほどな。先生の目には俺がクラスメイトを殺すように見えたのか」
「そういう訳でもないですよ。念の為ですよ」
彼女も笑い出す。
「そういう事か。わかった。明日は生徒を殺さないように肝に免じておく」
そう言い、立ち上がると俺は校長室を出た。
校長室を出て学園の入り口、門のところまで歩いていると一人の少女を見つけた。
「ニアか。こんな所で何をしている」
「何をしているって貴方を待ってたのよ」
苛ついた顔でそう言い放つ。
「なぜ待っていたのだ」
「なぜって聞きたいことがあって」
俺が歩き出すとニアも歩き出した。
「何を聞きたいんだ」
「さっきの魔法はいったいなに?」
「あれはな、
「へぇ、いつから使えたの?」
この質問で彼女が俺に言いたい事がわかった。
「一昨日ぐらいだったと思うぞ」
「本当?嘘ついていないでしょうね」
「こんな事にわざわざ嘘をつく必要は無いだろう」
「まぁ、いいわ」
すると、ニアは機嫌が良くなった。
生まれ持っての天才などそうそういないだろう。ゆえに彼女ニアも相当な努力を重ね天才と呼ばれるまでに成長したのだ。そんな彼女が同世代の魔族から手加減されて負けたとあっては、彼女自身のプライドが許さないのだろう。
「そういえば、カミュはどうしたんだ?」
「カミュ?あの人なら見かけていないわよ。先に帰ったんじゃないの?」
「そうか」
カミュの行動は所々違和感がある。寮に戻ったら聞いてみるか。
「なに?あの子に惚れたの?」
ニアはにやつきながら聞いてくる。
「いや、全く。彼女の行動が変だからな。気になっているだけだ」
しばらく歩くと、寮へ着いた。急にニアが立ち止まる。
「どうした?急に立ち止まって」
「番…」
ニアはもごもごと口を動かした。
「なんだ?よく聞こえなかった。もう一度お願いできるか」
「私の部屋の番号は一四七号室よ」
「ほう、そうなのか」
俺がそう言うと、静かな時間が過ぎる。
「あなたの番号は?」
「なぜ教える必要がある」
「あなただけ知ってるなんてフェアじゃないわ」
「俺は聞いていないぞ。お前が勝手に言っただけだと思うが?」
そう言うと、彼女は涙目で上目遣いになる。
「私に……教えるの嫌なの?」
そんな顔されたのでは、後味が悪いな。
「しょうがないな。俺の番号は百十一号室だ」
「ありがとう」
彼女は、笑うと走って行ってしまった。
俺は、少々不安になっていた。
あいつ、今日変だったな。!!。もしかしたら俺が寝ているときを見計らって攻撃を仕掛けてくるのではないだろうか……それはないか。わざわざ寮で暴れるメリットがわからない。俺を殺せたとしてもその後が面倒だろうからな。
部屋に入ると、カミュが布団に包まっていた。
「体調が悪いのか?」
「べつに」
「何か飲み物いるか?」
「いや」
冷たく棘のある言い方で返事をしてくるな。こういうときは、あまり触れないでおくのに限る。
俺は、
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