1-13 1-Sクラス

 なるほど。魔法にもいろんな物があるのだな。

 本を閉じ、窓の外へ目をやると既に暗くなっていた。

 こんなに時間が経っていたのか。知識欲というのは怖いものだな。次から次へと本を読みたくなってしまう。だからといって、切のいいところまで読んでしまうとこの通り時間を忘れてしまう。自己管理がまだまだだな。

 少し離れたベッドににいる。寝ているであろうカミュの方へ顔を向ける。

「おい、カミュお腹は減らないのか」

「さっき食べたわよ。あなたが本に集中している時に」

 そうだったのか。そこまで俺は本に集中していたようだな。

 俺は、差出ゼントで材料を取り出すと調理を始めた。肉の焼ける香ばしい匂いが部屋の中に広がる。完成したのはステーキとサラダだ。

 初めてにしては焼き加減がうまくいったな。そういえば明日試合をすると言っていたな。念の為今日は早く休むか。


 今日はニアと登園だ。なぜか、カミュは支度を終えるとすぐ出てしまった。昨日から避けられているようだ。俺が彼女になにかをしてしまったのだろうか。昨日を振り返っても全くわからない。

「カイ、聞いてるの?」

 横からニアが話しかけていた。

「すまない。少々考え事をしていた」

「もう……だから、今日から学園が普通に始まるけどいったい何をするんだろうね」

 ニアは俺と普通に話してくれている。というか少し距離を縮めてきたようだ。

「確か。自己紹介を兼ねて試合をするとか言っていたな」

「なんでそんなこと知っているの」

 ニアは訝しんでいるようだ。

「それはな、昨日校長室に呼ばれて担任から教えてもらったんだ」

「もう、担任の先生にあったの?なんでカイばっか特別扱いされてるのよ」

 少々気に食わないという顔をした。

「そんなことを話していたら、学園に着いたぞ」

「そうね。それじゃあ、教室に向かいましょうか」

 ニアは教室に向かおうとする。

「ニア聞きたいのだが、教室はどこにあるんだ?」

 ニアは素っ頓狂な顔をした。

「なんだ、急に変な顔をして」

「あんたが変なこと言うからでしょ!!なにが『教室はどこにあるんだ?』よ。目の前に地図があるでしょ」

「なに!?」

 俺は、正面の壁を凝視する。

「確かに地図のようだな。よくわかったな」

「誰でもわかるわよ!!」

 ニアは朝からテンションが高いな。

 俺とニアは教室へ入る。すると、教室がざわつき始めた。

「おい、あれニア・リヴァイアスだよな!天才の」

「そうだ。天才と言われてるニアと新入生代表の……誰だったかな」

 俺は、教壇へ上がると

「おはよう。皆知りたいようだから教えてやる。俺の名前はカイ・グリアムズだ」

 すると、ニアが俺の頭を叩いた。

「なにをするんだ」

「こっちのセリフよ。何急に教壇に上がってるのよ」

「ここで発表するんじゃないのか」

「確かにここで先生が話すけれど、初対面の人にあんな事言わないわよ」

 俺は、ニアに引っ張られ席へ連れて行かれる。すると、横から刃物を投げつけられた。

 俺は刃物を人差し指と中指で捕まえる。

「よぉ、白髪。お前も1-Sクラスだったのか」

「ラフクス・サリヴァンだったか?おはよう」

 ラフクスは拳に力を入れた。

「おはようじゃねぇよ。この間の借りを返させてもらうぞ」

 と、その時チャイムがなり先生が入ってきた。

「ほら、皆座って」

 ラフクスは舌打ちをすると席へ戻った。

 あいつは、言動は乱暴だが真面目なようだな。いい友達になれそうだ。

「このクラスの担任を任された。フォン・ユアテルと申します。皆よろしくね」

 フォンは、軽い自己紹介をしお辞儀をした。

「皆も知ってのとおり、この学校は成績でE.D.C.B.A.Sとクラスを分けられています。AからEは二十人だけれど、私達のクラスは特待生のみのクラスになっているから、人数は六人なの」

 そうだったのか。だから昨日、ニアは自慢げにクラスをいい、カミュは恥ずかしそうに言っていたのか。

「今日は、初日だし自己紹介を兼ねて実戦を想定した試合をやるから、皆この箱からボールをとって。番号が同じ人が相手だよ」

 俺は最後にボールを取りに行く。

 番号は三。

「一試合目、ニア・リヴァイアスvsパクル・ドール。ニ試合目、ラフクス・サリヴァンvsウド・グラリス。三試合目、カイ・グリアムズvsピカトル・パック」

 ラフクスが俺にささやいてきた。

「うまく逃げやがって、お前ら三試合目は二回戦がねぇじゃねぇか」

 逃げやがってと言われても俺は最後のボールを取っただけなんだがな。ラフクスは相当俺と戦いたいようだな。

 フォン先生は笑顔になる。

「勝ち残った人は私と勝負よ」

 この場にいた俺以外全員が驚いた。

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