1-10 魔王城立魔王育成専門学園

 俺とカミュは、自己紹介を終えた。

「また、筋トレを再開するが気にしないでくれ」

「丁度いいわ、私も荷解きをするから絶対にこっちに目を向けないでね」

 俺は、筋トレを再開した。


 さっき、隙間を通ったときカミュは俺の動きを見ることが出来ていなかった。カミュがただ単に見ることが出来なかったのか。それとも同世代は皆そのぐらいなのか。これは確かめる必要があるな。


 荷解きを終え、休憩していたカミュに声をかけた。

「ちょっといいか?」

「なに?」

「カミュは魔力審査と体力審査どのくらいだったのか聞いてもいいか?」

 カミュは暗い顔をした。

「言いたくないんだけど」

「それなら、カミュは高いほうか。それとも低いほうか。」

「真ん中ぐらいね」


 なるほど。彼女が真ん中ぐらいなら俺は、高いほうなのかもしれないな。


「あんたはどうだったのよ」

「俺か?別に隠すつもりはないが、別段言う必要もないぐらいだぞ」

「そっか。その程度なのね。そろそろ時間だし出発しなくちゃ」

「そうだな。しかし、俺はこの街の事をあまり詳しくないから道案内してもらえると助かるな」

 カミュは一瞬嫌な顔をした。

「しょうがないわね。一緒に行ってあげるわよ」

「ありがとう。感謝する」


 身支度をすませ、寮を出るとそこにニア・リヴァイアスが立っていた。

 遠回りをし、無視して通り過ぎようとすると

「無視すんじゃないわよ!!」

 鼓膜を劈く大きな声で叫びだした。隣でカミュが、話しかけてくる。

「あの人、天才って言われるほどすごい人なの。あの歳でもう独自の魔法ユニークを使えるんだよ」

「ほう、そうなのか」

 話していると、ニアが近づき俺の耳元で叫んだ。

「聞こえないの!?」

「うるさいやつだな。いったいなんのつもりだ」

 耳を抑えながら返事をする

「なんのつもりってあなたがよ。さっきから無視してくれちゃって。おまけに女の子まで連れ歩くなんて」

「ニア、お前は誤解している。こいつは同居人のカミュだ」

 そう言いながら、カミュへ目線を向ける。カミュは今の状況を理解できていないようだ。

「カミュ、お前はよく固まるやつだな」

 彼女は、耳元でささやいた。

「だだって、ニアとあんたが知り合いだったなんて知らなかったのよ」

「実は俺もこいつが有名だとさっき聞いて驚いているんだ」

 横から会話を聞いていたニアが、話し出す。

「そうよ。私はとても有名なのよ」

「しかし、天才って有名な割には弱すぎないか」

 そう言うと、空かさずカミュが俺の頭を叩いてきた。

「何言ってんのよ。彼女はとても強いのよ」

「だがな、こいつは俺に負けてるんだぞ。」

 カミュは本当ですかと言いたげな顔をしてニアを見る。

「ええ、そうね。完全に遊ばれてたわ。手も足も出なかったわ」

 カミュは口をパクパクさせていた。

「そろそろ解放してくれないか、学園へ向かいたいんだが」

「私も一緒に行くわよ!!」

「わかった。だからその無駄にうるさい口を閉じろ」


 俺たちは、魔王城立魔王育成専門学園へ着いた。

「案外距離がないんだな」

「そうみたいね」

 右隣にいるニアが相槌を打つ。

 一方、左隣にいるカミュは緊張しているのか全く話さなくなってしまった。

「カミュ、そんなに緊張することはないぞ。ただ入学式に出るだけなんだからな」

「そんな事に緊張しているわけじゃないわよ」

 そう言うと、カミュは再び黙りこくってしまった。

 よくわからないな。しかし、この煉瓦造りの学園はいい味を出していて、俺の好みを突いてきている。まあ、たまたまなんだろうが。


 園内に入ると、とても広い空間が広がっていた。

「こんなに広いものなのか」

「ええ、確かに学園にしては広いわね」

 周りに気を取られ観察していると、バリモ・テラクリスが声をかけてきた。

「カイよ。よく来てくれた」

「学長先生じゃないか。何か用か」

 バリモ学長は耳を貸せと手招きをした。

「ちょっと待っていてくれ」

 その場にいたニアとカミュに一言いうと、バリモ学長の元へと歩いて行った。


「登園そうそうに呼び出して悪かったね」

「そんなに忙しいわけではないから気にするな。それで、わざわざなぜ呼んだんだ?」

 バリモ学長は、笑いながら話し始めた。

「実はだね。新入生代表の言葉を君にやってもらいたいんだ」

「随分と急だな。まぁいいだろう」

「ありがとうね。この話は誰にも内緒だよ。楽しみにしてるよ」

 と言うと、どこかへ歩いて行ってしまった。

 

 なぜ内緒にしなければいけないのだろうか。別に言ってもいいと思うのだがな。学長ともなると色々あるんだろうな。


 ニアとカミュの元へ戻るとニアが話しかけてきた。

「なんで、登園初日に呼び出されてるのよ。なにかやらかしたんじゃないでしょうね」

「髪の毛染めてるんじゃないって怒られただけだ」

「確かに貴方の髪の毛って独特な色をしているわよね。染めたの?」

「生憎だが、これは元からこういう色だったんだ」

「へぇ、そう」

 俺たちは、入学式場へと歩いて行った。

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