1-9 同居人
朝早く日も出ていない頃に俺は、荷物を持ち今までお世話になった家に挨拶してガイルと町の出口まで歩いて行った。
町の出口には町民が俺を待っていた。
「カイ、頑張ってこいよ!」
「カイその荷物で大丈夫なのか?」
「カイ兄ちゃん頑張ってね!」
町長とその奥さん、アルたち町民のみんなから送り出された。ガイルに別れの挨拶をすませると大きく手を振り町をでた。
ああ、遂に俺は入学するんだ。新しく始まる世界に少し緊張するな。
そして、走り出した。
半日かけ、魔王城ガナシエラのある街モラエに着いた。
ここに来るのもこれで二回目だな。入国審査を受け、城下町に入った。やはり人が多いな。とりあえず、寮へ行くとするか。荷物を置いて行きたいしな。
地図を見ながら、寮へ向かった。
ここが、俺がこれから暮らす寮か。思ったより綺麗なんだな。それもそうかこの国で一番実績の高い学園の寮だからな。
しばらく寮の外見を見ていると、後ろから声をかけられた。
「やっぱり、あなたもこの学園に入ったのね。カイ・グリアムズ!!」
振り向くとそこには少女がいた。
「確か、俺に負けた天才少女ニア・リヴァイアスで合っているよな」
「嫌味かしら?天才なんてよく言ったものね。私が天才ならあなたは何なのかしら」
「俺は田舎者かな」
適当に返事をするとニアを無視し寮の中へ入って行った。
「俺の部屋番号は何番だ?」
寮長は一瞬戸惑った顔をしたが、すぐ営業スマイルを作り出した。
「すみません。お名前はなんでしょうか」
「カイ・グリアムズだ」
寮長は名簿を取り出し、確認し始めた。
「111号室ですね。もうすでに同居人の方もいらしているので仲良くお願いしますね」
「わかった」
相部屋か相手はどんな奴なんだろうな。初対面だろうから軽く自己紹介したほうがいいだろう。
111号室。一応ノックしたほうがいいか。
コンコンとノックをすると室内から声が聞こえてきた。
「はい、今出ます」
ん?随分と可愛らしい声だな。
ドアが開くとそこから腰まである髪を一つ結いにした少女が出てきた。
少女は、警戒した顔で質問してきた。
「どちら様ですか?」
「ここが111号室で合っているよな」
「そうですけど」
ふむふむ、俺が部屋を間違ったわけでも彼女が部屋を間違ったわけでもないようだな。
「すまない。驚かせてしまったな。今日からこの部屋で暮らすことになったカイ・グリアムズだ。よろしくな」
彼女は、固まり一時停止している。しばらくして再起動し始めた。
「えっ!?どういう事ですか」
「ん?今説明したと思うのだが?仕方ないもう一度説明してやろう」
「そういうことじゃないですよ。なんで男女で相部屋なんですか!可笑しいじゃないですか」
「そうか?とりあえず中に入れてもらいたいんだが」
部屋へ入ろうとすると、阻止された。
「なぜ、入れてくれないんだ?」
「今は無理です」
「なぜだ?」
「無理だから無理です」
「説明してくれないか」
「説明も無理です」
こんな水掛け論をしていたら、時間が無駄だな。少し強引にでも入らせてもらおう。
彼女と扉の隙間が空いたタイミングで素早く中へ入った。
「あれどこにいったの?」
彼女は俺の動きに目が追いついていなかったようだ。
「なるほどな。随分と散らかっているな」
「いつ入ったんですか!!」
凄い勢いで目を塞がれる。
「これじゃ、なにも見えないじゃないか」
「そうです。なにも見ないでください」
「見られて困るようなものあったか?」
「あるんです。頼みますから少しの間、目を綴じていてください。絶対に開けないでくださいよ」
「わかった」
俺が目を綴ると手が顔から離れていった。
「本当に綴じてますか?」
「綴ている」
「本当になにも見えませんか?」
「見えていない」
「本当ですか?」
「いい加減諄いぞ」
そう言うと、彼女の移動音と物を動かす音が聞こえてきた。
「そろそろ開けてもいいか?」
「まだです」
しばらくすると扉の閉まる音がした。それから音が一切しなくなった。
「開けるぞ」
返事が無かった。
ゆっくりと目を開けると彼女が荷物ごと消えていた。
何処かへ行ってしまったな。まぁいいか。時間はまだあるし、筋トレでもしてるか。
筋トレを始めて三十分程度経つとノック音がした。
「入って来てくれ。今、手が話せなくてな」
ドアが開くと先程消えていなくなった少女が入ってきた。
「ちょっと上半身裸で何しているんですか?」
「お前こそさっきいなくなったが何をしていたんだ」
質問を質問で返した。
「いやちょっと講義しに行ったんですけど……」
「なるほどな。却下されたのか」
「正解です」
大体予想していた事のようだった。
「却下されたのなら仕方ないだろ。受け入れて俺と同じこの部屋で寝ろ」
「急に何言ってるんですか。俺と寝ろ?頭イッてんじゃないですか?」
彼女は顔を紅くし叫びだした。
「変な誤解をするな。お前には全く興味が湧かない。」
筋トレを終了させ、床に座り直す。
「お前も座れ、自己紹介をしようじゃないか」
一瞬焦った顔を見せたが、彼女は指示どおり座った。
「俺は、カイ・グリアムズだ。これからいろいろ
「カイ・グリアムズさんですね。よろしくお願いします。って誰が迷惑をかけるですって?」
「さっき、かけられたと思うが?」
そう言うと、彼女は黙った。
「次お前の番だろ。自己紹介しろ」
「私は、カミュ・クリシュナ。よろしく」
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