1-8 ドラゴン伝記

これは何百年も昔の話。

 

 この世界は神々によって創造された。曰く神々は雪のように白い髪をしていた。曰く神々は稲妻のようにきれいな黄色い目をしていた。曰く神々は神々しくその姿を直接拝見することは不可能であった。──と。

 神々は生命の種を蒔いた。種から四人の新たな生命が誕生した。人族と魔族だった。最初は仲良く暮らし、共に繁栄していた2種族だったが、魔族は魔力というものを扱えた。それ故に『魔族こそ最強なのだ!』と人族を奴隷のように扱う者が現れた。人族は魔族の束縛からの開放を望み。戦う事を決心する。しかし、魔族には魔法という絶対的な揺るがない強さがあった。人族は、嘆き悲しんだ。ある日、人族に『勇者』というものが生まれた。勇者は特別な力を用い、魔族と同等に戦うことができた。人々の中に勇者を慕う者達が生まれ、勇者は特別な力を自分を慕う人族に分け与えた。勇者勢力は魔族を親の敵のように殺していった。勇者に対し魔族は自分たちの種族の中で一番、魔力の扱いに長けた若者を『魔王』と崇め勇者たちと戦うことになった。勇者と魔王の戦いだったものが、いつしか種族同士の戦いへと発展してしまった。長い間戦い続けた。自然豊かな森は焼け野原となり、街や村は廃墟と化した。そんな中、勇者の子供と魔王の子供が恋に落ちてしまった。二人は密会し合い二人の間に子供を授かってしまった。それを知った勇者と魔王はそれぞれ怒り狂い、牢屋へ閉じ込めてしまった。二人の赤ちゃんは、異常な早さで成長し少年になると、勇者と魔王を殺してしまった。矛先は当然その親である二人へ向いた。二人はそれぞれ、処刑された。二人の親を同時に失った少年は悲しみ怒り狂った。少年の小さな体は徐々に大きくなり、ドラゴンへとその姿を変えてしまった。ドラゴンになった少年は殺戮を楽しみ出した。何百何千何万と両種族を殺していった。笑いながら。その時には両種族の敵はドラゴンになっていた。両種族は協力し合い、ドラゴンと戦った。しかし、全く叶わなかった。大陸は暗闇に包まれてた。両種族が絶滅まで追い込まれそうになると、両種族は天に祈りを捧げた。すると、暗闇を切り裂くように空から光の柱がさし始めた。光の柱から一人の青年が現れる。青年は光り輝く武器を持ち、ドラゴンと戦った。何度も朝と夜を繰り返す。光の青年とドラゴンは三日三晩戦い続け、ドラゴンが地面に倒れた。青年は、ドラゴンを封印すると生き残った者達に『ドラゴンを封印する事には成功した。しかし、いずれまた復活するだろう』と伝えた。すると、その体は光に包まれ空の彼方へ消えてしまった。魔族は学園をつくり、来たるべきその日のために力を伝承、継承していった──。おしまい。


「ありがとう」

「カイは本当にこの話が好きだな」

「好きだよ!!俺がいつかドラゴンを倒すんだ。そのためにもっと力をつけないと」 


 俺は、おとぎ話を昔、本当にあったことだと信じてやまなかった。


「その時は、カイと一緒に私も戦うよ!!」

「俺とガイルが手を組めばドラゴンなんてへなちょこだな」


 ガイルは、頷くと荷支度を再開した。


「カイ、準備できたぞ。必要そうな物はまとめたから。魔法でしまっておいてくれ」


 ガイルは、荷物を入れた革製の袋を渡してきた。


「ああ、うん。後で入れておくよ」

「どうした?ぼーっとして、明日から学校なんだからシャキッとしろ。そんなに心配する事はないさ」

「もう寝るね。おやすみ」 


 俺は、これからのことが楽しみで仕方ない半面、未知の世界に緊張していた。

 片付けられベッドしか置かれていない部屋へ入ると、どこか寂しさが感じられた。そして明かりを消した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る