第13話 後輩ちゃんに短編の感想をもらいたい

 ゴールデンウィーク最終日なので満喫していきたい。のだが、特に予定もないのでいつものようにスタバを訪れるおれ。


 まあ後輩の勉強を見るゴールデンウィーク最終日も悪くないだろう。


 短編を書き終わった解放感からふんふんふふ~ん♪と鼻歌交じりに、おれはスタバに入店する。まあ推敲はしなければならないがかなり気は楽だ。


 上から順に読み進めていき、誤字や脱字に気づけば修正していく。


「・・・・・・」


 他にも語感やリズム、表現にも気になるところがあれば直していく。


「・・・・・・」


 それと、登場人物の感情が飛躍しているように感じれば、しっかりと間が繋がるように地の文を追加していく。


 そうこうしているととなりに立花が座った。


「・・・・・・お、うい」

「あ、はい」


 おれはそちらに視線を一瞬向け、再び画面に目を戻す。

 そして再び推敲を進めていく。


「・・・・・・ぅぅん」

「?」


 おれの口から微かに唸り声のようなものが漏れる。


 面白いな、めちゃくちゃ。うん。

 サクサク読めるしどーんと盛り上がってきっちりカタルシス。かなりいい出来だと思う。適当に小説投稿サイトに投稿するつもりだが、そこそこpv数を稼げる気はする。


 でも、どうなんだろう。


 今までの経験からして、おれの自身の小説に対する評価は高めなのだ。高校時代、そこそこ小説を読む友人に書き上げた短編を読ませていたが、おれの中では最高の出来でもたいてい反応はそこまででもなかった。


 おれの文芸部の先輩もみんなそう言っていたのでこれはおそらく物書きあるある。


 出来るだけ面白い物語を書きたいと思っているし、修正点はちゃんと見つけていきたい。そのためには他人からの意見というものがものすごく大事なのだが・・・・・・


「あ、立花」

「?」


 おれの半ば無意識の呟きに立花が手を止めこちらに振り向く。


 もちろん高校時代の友人には原稿を送りつけるつもりだが、なにやら忙しいらしく感想が返ってくるのはかなり遅れるだろう。ということで、小説を読んでいておれが気軽に会える人を頭の中で探してみたところ、立花が思い浮かんだというわけである。


「・・・・・・ああ、いや、なんでもない」

「そ、そうですか?」

「ああ」


 おれが軽く首を振ると、立花は不思議そうな顔をしながらも勉強を再開した。


 立花がテスト勉強をしているのを思いだしたのである。この前言っていたことによるとテストは一週間とあと少しの所まで迫っている。そんなときに、短時間とはいえ、おれのために時間を使わせるのは申し訳ない。真面目な立花のことだから、感想とかちゃんと考えてくれそうだし。考えてみれば、べつにおれの方の要件は急ぐものでもない。テストが終わってからでも全く問題ないのである。


「あ」

「?」


 立花がきょとんとした顔を向けてくる。


「・・・・・・いや、悪い。なんでもない」

「そ、そうですか・・・・・・?」

「ああ」


 おれはそう言って、立花に勉強を再開させる。


 ・・・・・・今気づいたのだが、明日以降におれと立花が出会う保証はどこにもないのだった。おそらくおれは明日以降もバイトが休みの日は大学の課題などを片付けるために定期的にスタバを訪れるのだが、立花はどうなのだろう。


 もし、明日以降立花と会わないのなら感想を尋ねることが出来ない。立花の連絡先知らないので。部活やってたときに聞いとけばよかったな・・・・・・。


 ・・・・・・整理すると、今おれの取れる選択肢は2つ。


1.立花に連絡先を尋ね、テスト後に感想をもらう


2.立花に感想をもらうのを諦める


 ・・・・・・うむ。


 数秒悩んだおれは口を開いた――

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