その2.
1.こちら探索少女二名、海に来てます。
青い海。青い空。そして二人の女の子。
何とも素敵な組み合わせがここにある。
そして、ただひたすら、それしかない。
青い海。青い空。女の子が二人。以上。
何か問題が、と思った貴方に補足情報。
まず、女の子二人だが水着姿ではない。
たぶんこれが一番重要な情報だと思う。
がっかりされた方々も多いと思われる。
女の子の片方は健康的な美脚で生脚で。
それを割と際どいとこまで出していて。
それはそれで最高だけどそうじゃない。
そう考える方もきっといることだろう。
というわけで、二番目に重要な情報だ。
女の子二人はおんぶしながら走ってる。
生脚出してる女の子がおんぶしてる側。
おんぶされてる側はひらひらした格好。
おんぶしてる側の娘はひたすら走って。
おんぶされてる側の娘は日傘を差して。
ぱしゃ、ぱしゃ、ぱしゃ、ぱしゃ、と。
穏やかな波の間を二人組が駆けている。
言うまでもなくフーコとマリーである。
さて、三番目に重要な補足情報である。
勘の良い人はすでにお気づきかと思う。
ここは、素敵な夏の浜辺では全くない。
ってか、周囲を見渡しても浜辺がない。
なら実は岩場なんだろ、と思われた方。
違う。岩場ではない。発想は悪くない。
しかし切り立った崖すら周囲にはない。
テトラポット。それはこの世界にない。
要するに、二人は海の上を走っていた。
その周囲に見渡す限り何もない海の上。
青い海。青い空。そして走ってる二人。
この場所には、今、ただそれしかない。
「フーちゃん! うゆにーっ!」
と、マリーがフーコの背中でそう叫ぶ。
「うゅに? マリー、何それ?」
フーコの方は海を走りながら聞き返す。
「こんな光景を昔はそう呼んでたんだよ」
と、マリーはドヤ顔でフーコに言った。
いや違う。たぶん微妙に間違っている。
が、それを訂正する者はここにいない。
「なるほど。うゅに」
と、マリーの言葉を繰り返したフーコ。
こっちも何か微妙に発音が違う感じだ。
だが、マリーも特に訂正はしなかった。
「うゆにーうゆにー」
「うゅに。うゅに」
「うっゆにぃーっ!!」
「うゅにー」
と、馬鹿を言い合って笑っている二人。
もうちょっと見ていたい光景ではある。
が、ここはまず、ネタばらしをしよう。
二人がこうして、海の上を走れる理由。
いや「だって、フーコだし」ではない。
いくらフーコだって海の上は走れない。
河川ならなんか行けそうな気もするが。
さすがに海だと無理である。まあ沈む。
さっさと答えを言ってしまうと線路だ。
海の中に半ば沈んでしまっている線路。
フーコはその線路を伝って走っている。
線路は劣化していて、破損箇所も多い。
踏み外したらアウトな危険な道である。
が、フーコはその道を駆け抜けていく。
マリーと、平然とお喋りを続けながら。
そりゃもう、余裕で平然と走り抜ける。
どうしてそんな無茶苦茶ができるのか。
いやまあその――だって、フーコだし。
それはそうとして別の疑念が出てくる。
何故、こんなところに線路があるのか。
その理由はフーコよりはわかりやすい。
元はここに設置されたものでないから。
異世界から飛ばされてきた代物だから。
海に沈んだ線路の続く先に目を凝らす。
終点に見える海と空と二人以外の何か。
その何かが海の上を走る二人の目的地。
海の中に半分沈んだ――大都市の残骸。
二人が今回探索するダンジョンだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます