ワタシのコイビト
私はこれまでに、数多くの男性に心を奪われてきた。
その事実は、私という人間を形づくる上での、けして小さくない要因である。
ある時は、純粋を絵に描いたような、清らかな心を持つ文学青年に心奪われたことがある。
図書館に通いつめていたその青年は、そこが自分の定位置であると主張するかのように、いつも同じ席に腰掛けていた。
いつ足を運んでも棚に鎮座している、誰も借りたことのないような小難しそうな本みたいに。
図書館という空間に溶け込んでいる彼は、私の目にとても好意的に映った。
そんな空間を共有したい。
その想いが、私を恋という激情に駆り立てたのだ。
またある時は、会社の上司に恋い焦がれた。
彼は妻子ある身であったのだが、燃えはじめた感情を制御することが、私にはできなかった。
そればかりか運命の歯車もまた、私たちの関係を後押ししているかのように二人を引き合わせたのだ。
私たちは互いに互いを求めあい、来るべき破局までの逢瀬に身を震わせていた。
またある時、私は異国の町娘になり、旅の道中にふらりと立ち寄った男性と恋に落ち、住み慣れたまちを離れて、彼のとなりを歩く決意を固めた。
またある時は、血のつながった実の兄妹で恋情を交わし、淫靡で背徳にまみれた瞬きの刹那の時を謳歌した。
ぬるま湯のような日々は魅力的で、私は眩暈のような感覚の中、ただ彼の身体の温もりに溺れていた。
他にも、かつての幼なじみと偶然再開を果たしたのをきっかけに結ばれたり、異世界で種族間の隔たりを越えた大恋愛を展開したりもした。
カクヨムは私に、たくさんのコイビトとの逢瀬の時間を与えてくれたのだ。
ーーーそして今、ワタシは新たな物語を手にしている。
ジャンルは、ホラー。
ワタシの恋人は今、ちょうどこのお話を読んでいるアナターーー。
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