因果応報

 目には目を、歯には歯を、と兄ちゃんは言った。

 難しい言葉はよくわからないけれど、どうもやられたら同じことをやりかえすってことらしい。


 昨日におやつのプリンを食べられた仕返しとして、兄ちゃんは今日のおやつを全部(僕の分まで)食べてしまった!


 僕は怒った。

 けれど、元をただせば僕の責任なわけで、振り上げた手をどこにおさめればいいのか、僕はもんもんとした。


 そこで自転車で走って気をまぎらわせようとしたのだけれど、

 なんと、ハンドルの所にくもの巣がはっていて、出鼻を挫かれた僕は大いに憤慨した。


 そして、力任せにくもの巣を壊してしまったのだ。


 これで心安らかにサイクリングに興じられる。

 僕はペダルをこぎ始めた。


 すると、

 どすん!と大きな音が背後からした。


 振り返ると、巨大な蜘蛛が僕の家を踏み潰していた。

 あっけにとられた僕に、蜘蛛はこういった。


「同害報復、相応の報いを」と。


 僕は怒り心頭に発したものの、

 振り上げたこぶしの行き先は、やはり見出せなかった。

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