第12話

 花火大会が始まって、どんどん花火が上がっていく。

けい……あのさ、飯塚さんのことなんだけど」

 わたしは慧に話し始めた。

 そのことをずっと気になっていた。

「うん」

「もしかして……つきあってるの?」

「え? 違うよ?」

「え!? そうなの? でも、飯塚さんと雑貨店にいたのは……」

 その話をしたときに、慧は自分で持っていた小物入れから取り出したのは小さな紙袋だった。

「誤解させて、ごめん……誕生日プレゼントを買おうと思ってて。その……どういうのがいいのかわからないから、飯塚に聞いてみただけだよ」

 紙袋を開けると、とてもびっくりした。

 それは欲しかったイヤリングだったの。

「え、慧……これって?」

 慧は顔を赤くして、夜空に咲く大輪の花を見ていた。

「その……蒼空そらの誕生日プレゼントだよ、飯塚にアドバイスをもらったんだよ」

 誕生日プレゼントは慧からはもらったことがなくて、わたしはとてもびっくりしていたときだ。

「蒼空」

 名前を呼ばれて、わたしは顔をあげる。

 慧は優しげな笑顔で変にドキッとしてしまった。



「好き、蒼空のことが」



 そのときに一番大きな花火が上がった。

 わたしはその花火よりも、慧の方を向いていた。

「え……ほんと?」

 思わず、本音が出てしまった。

「うん……ごめん、いきなり言って」

「ううん。わたしも……ずっと好きだったの。ずっと一緒にいたいけど……」

 慧にようやく言えた。

 少しだけ泣きそうになる。

 わたしの手をそっと繋いで、慧は笑っているけどすぐにうつむいた。

「俺も一緒にいたかったな。これから」

 慧の声が少しだけ震えているのがわかって、わたしはその手を強く握った。

 夜空に上がる花火を見て、わたしはとてもすっきりした気分になっていた。



 花火大会も終わり、わたしは慧と一緒に帰ることにした。

「あ~あ。楽しかったな!」

「初めて間近で見れたし。誕生日プレゼント、ありがとうね」

「喜んでくれて、よかったな。俺のときは何でもいいよ?」

 慧の誕生日プレゼントは少しだけ考えていたけど……日本を出発する日なんだよね。

「うん。わかった」

 慧と手を繋ぐのにも慣れてきた。

 もう少しで手を繋ぐのもできなくなるのは寂しくなる。

 でも、慧と一緒にまたどこかに行きたいと思い始めていた。

「蒼空は見送りに来てくれる?」

「え? うん。行くよ! もちろん」

 近所になってから言ったときに、慧にぎゅっと抱きしめられる。

 フワッと慧のぬくもりと匂いに包まれて、ドクドクと心臓の音が聞こえてきた。

 心臓の鼓動が速くて、わたしと同じみたいだった。

「慧……どうしたの?」

「蒼空。つきあってくれる?」

 その言葉の答えは、もう決まっていた。

「はい!」

「よろしくお願いします!」

 お互いにおじぎをしたとき、慧と思わず笑ってしまった。



 シャワーを浴びて、部屋に戻った。

 あのあと、慧が家まで送ってくれた。

 そのときにアメリカに行く飛行機の日時を聞いた。

 羽田空港から行くみたいで、そのときにイヤリングをつけていこうと思っている。

 あと、慧に渡そうと思っていたものを見つけた。


 そして、慧の誕生日を待った。

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