第4章 夏休み

第10話

 夏休みが始まり、わたしは七月の最終週は部活で学校にずっといた。

 部活は今日で最終日だった。

 部誌の制作を最優先で行われているためか、いまはホチキスで部誌をとめていく。

「部長のが終わったら。次は美裕みひろくんだね」

「はい。篠宮しのみや先輩、印刷室で一宮先生が呼んでましたよ」

 そのまま篠宮くんが急いで顧問の先生がいる印刷室へと向かう。

 わたしと春菜ちゃん、鈴木くん、一年生の佐伯くんと大島さんのみんなで部誌を作っていく。

 B5で両面刷りに小説の文章が印刷してあって、毎回注意してはいるんだけど起きるできごとがあるんだよね。

 それは最後の一冊になったときに起こる。

「あ! 最後、足りない」

 部誌のどこかのページが足りない=四十冊作ったなかで同じページが重なってることが判明する。

「ええ!? マジか」

 これは一年生のときからあったけど、探すのがめちゃくちゃめんどくさい。

「はい。それじゃ、表紙が二枚あるの、捜索開始!」

「はーい! めんどくさいけど、早めに終わらせよう。篠宮くんのが来る前にね」

 春菜ちゃんの号令もあって、急いで三十九冊の中から表紙が二枚ある部誌を探し始めた。

 すぐにわたしは表紙が二枚あったのを見つけて、ホチキスでとめてか次の部誌の制作に移っていく。



 部活が終わると、春菜ちゃんと一緒に駅まで向かう。

「あれ? あそこにいるのって」

 雑貨店にけいがいた。

 でも、その隣にいるのは同じ高校の制服を着た女の子がいた。

 それは同じクラスの飯塚さんだった。

「え、杏梨あんりちゃんじゃない?」

 春菜ちゃんとは中学時代の同級生みたいで、慧のことを好きだって聞いたことがあったの。

「え? ほんとだ」

 飯塚さんはとてもきれいな子だ。

 明るい茶髪に琥珀色の瞳をしている飯塚さんは、慧とはつきあってる噂が流れていたんだ。

 わたしは二人の姿を見て、ショックを受けてしまった。

「ごめん、春菜ちゃん……わたし、帰るね」

「あ、うん。わかった」

 春菜ちゃんと改札で別れると、そのまま電車に乗った。

 心がざわついて、冷静でいれなくなっちゃう。飯塚さんと仲がよさそうでお似合いなカップルのような気がする。

 慧もにこやかに笑っていたし、好きって言いづらくなってしまうかもしれない。

 LINEにメッセージが送られてきていた。

 その相手は慧からだった。


『蒼空、今度の花火大会は早めに迎えに行くから』


 そのメッセージを見て、疑ってしまいそうになる。

『了解』 

 わたしは返信をして、そのまま電車が最寄り駅に行くのを待っていた。

 家までの帰り道は泣きそうになってきた。

 慧が飯塚さんと仲良さそうに話ながら商品を見ていたのを、わたしはただ遠くから見るのもつらい。

『あと、迎えに行くとき。びっくりするなよ?』

『わかった!』

 気持ちとは真逆のことを送ってしまう。

 それがいいのかもしれない。

 残された日本にいる時間はみんなで過ごしてほしい。

 花火大会の日が慧に最後に会える日になるかもしれない。


 そして、花火大会の日を迎えた。

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