第3章 残された時間
第7話
学校生活も慌ただしく過ぎていく。
「部長、一宮先生が探してたよ」
文芸部の
「ありがとう、篠宮くん」
わたしは春菜ちゃんと一緒に図書館に向かう。
「
「え? どう思うって……」
今日のHRで慧が転校することが知らされた。
夏休みまであと二週間くらいしかないので、このタイミングで伝えることになったみたいだ。
「国内だったら、また会えるけど……アメリカは……遠すぎるって思った」
「そうだよね」
わたしは少しだけ元気がなくなっていた。
春菜ちゃんはなんか察してくれたみたいで、そっと背中を押してくれた。
「大丈夫だよ。蒼空」
「うん……なんか元気、出てきた」
図書館に着くと、一宮先生が部活での展示の内容について助言をもらった。
「とりあえず、夏休みには作業に入れたらいいと思うよ。これで、いいと思う」
「今日の部活はこれでやります」
先生に言われてホッとしたとき、視界に入った小説があった。
「あ、これって」
それはずっと追いかけている小説のシリーズの最新刊だ。
「先生。これ、借りてもいい?」
「いいよ。なにか、悲しいことでもあった?」
「幼なじみがアメリカに行くんです、夏休みが終わったら」
わたしは先生に理由を話した。
「そっか。もう一ヶ月くらいしか、会えないもんね。最後まで二人で楽しんだら?」
「そうですね! そうします」
慧が日本を旅立つまでの間に会えるか、わたしにはわからない。
部活も運動部と文化部で活動場所や時間も違うので、二人で楽しめる計画を考えておこうと思った。
教室に戻ると、慧が男子たちとじゃれあっていた。
「慧! 今度の土曜日にある部活のあと、ゲーセンに行こうぜ! 音ゲー、最新機種が出たみたいだから」
「行く! 俺も行きたかったんだ」
わたしはロッカーに裁縫箱を取りに来た。
今日はもう一つの選択科目である被服の授業がある。
しかも被服検定という検定試験の結果が返ってくるはずだ。
ドキドキしながら、被服室に向かった。
「あ、こんにちは。緒川先生」
「あら、新城さんじゃない。試験の結果が気になったのね?」
緒川先生はここの卒業生であり、大学では被服専攻をしていた。
被服の科目は男女関係なく受け付けてるけど、だいたいの男女比は1:9くらいみたいけど……今年の二年生の生徒は珍しく男子は二割くらいいるって、先生が話していた。
ここの授業は被服に興味のある子が多くいるので、結構早くに課題の作業が終わる子も少なくはない。
被服検定の四級は巾着をミシンで縫う。
難しいと思っていたけど作業を始めると、めちゃくちゃ簡単なものだと気づいたの。
検定試験のときにはきれいに作れるのが楽しくなってきて、いまいるクラスで最速で作り上げたんだ。
授業が始まると、みんな検定試験の結果発表をしていく。
名前を呼びに前に来て、その検定の合格証書をもらえれば合格なんだよね。
「新城さん」
「はい」
ちょっとにやけそうになるけど、それを抑えながら先生の前に行く。
「おめでとう、後期は三級をがんばって」
「はい!」
わたしはとても嬉しくなった。
三級は筆記試験が入ってくるのと、実技試験でハーフパンツを作るらしい。
その検定試験の合格証書はとても大事にしまった。もしかしたら大学受験で使えるみたいだった。
そのまま次の課題であるエプロンの製作に取りかかった。
事前に決めておいた色で途中まで作られたエプロンを完成させるんだ。
わたしが選んだのは黒いエプロンだ。
説明書を読みながら、作業を始めることにした。
今日の授業はすぐにチャイムが鳴った。
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