第1章 梅雨と恋

第1話

 電車の運転見合わせにより、学校の授業は繰り下げで二時限目からになっていた。

「よし……セーフ?」

 息を切らしながら、慧と共に教室に入った。

「慧~! 遅かったな。蒼空と一緒だったんだな~」

「お~、あの路線、人身事故が多すぎんだよね。毎回困るよ~」

 わたしはクラスメイトの春菜はるなちゃんと一緒に話すことにした。

「春菜ちゃん、おはよう! 大変だったよ……慧と一緒に来た」

 春菜ちゃんはふわふわしたボブをしていて、赤いおしゃれなメガネをしている。

 とても頭が良さそうに見えるけど、わたしと共に追試を回った友だちなんだ。

「蒼空、授業変更で、二時限目は数学になったよ」

「ええ~!? 嫌だよ。数学……」

 わたしの最も苦手な教科の一つで、テストでは赤点を抜け出せそうにない。

「うちも……佐倉さくらに教わればいいのに~。アイツ、成績トップじゃん?」

 佐倉っていうのは慧の名字だ。

「え……慧は」

「蒼空~。絶対に好きでしょ? 佐倉のこと」

 春菜ちゃんに言われて、顔が赤くなる。

「ちょっと! 春菜ちゃん、ダメだよ。まだ本人にも言ってないし」

「片想いしてるの、いつから?」

 数学のノートとワーク、教科書をロッカーから出して席に置いた。

 前期中間テストが終わってから、席替えをしてから初めての授業が始まる。

 春菜ちゃんは右隣でわたしはとても楽しくなれそうだった。

 体育祭が終わったとほぼ同時に梅雨が始まった。

 あと一ヶ月くらいで梅雨明けするらしいけど、それが待ち遠しく感じている。

「高校二年の夏休みって、結構大事なんだよね?」

「うん。絶対オープンキャンパスには行っておいた方がいいみたい。絞っておかないと、うちらの学年から大学受験が変わるからね」

 春菜ちゃんはHRで配られたプリントをもらった。

 うちの学校は高校二年生の夏休みに最低でも二校以上の大学のオープンキャンパスに行かないといけない。ちなみに専門学校は三校以上。

 わたしは大学には行きたいと思ってはいるけど、いまの成績じゃちょっとまずいと思っている。

 数学の授業が始まると、わたしはノートを広げて黒板に書かれた問題や教科書の説明文を書いていく。

「え~と。ここは今度の前期期末テストで出すから、覚えておくようにね。

まず問題を解いてもらいます」

 数学の授業はペースが速い。

 先生は教科書見開き三ページのペースで毎回進んでいる。

 それに必死に食らいついてはいたけど、なんとかっていう成績を保っている。

「――はい。じゃあ、今日はここまでです。号令はなしで終わります」

 わたしはノートを閉じると、ため息をついた。

 周辺の席を見渡すと、自分と数人が起きてる状態だったの。

「春菜ちゃん、授業が終わったよ?」

「う~ん……ありがとう、蒼空」

「みんな寝てたけどね。次の授業は選択科目だね」

「よっしゃ! 作品を作るのに没頭できる!」

 今日は選択科目のある日で、この科目は二時間通しでやる授業の一つ。

 二年生と進路別の選択科目がある三年生は、各科目がある教室に移動を始めていた。

 二年生と三年生の選択科目は種類や分野が異なる。

 二年生は興味のあるものを選択するけど、三年生は進路に向けての分野や科目を選択しないといけないんだ。

 わたしは春菜ちゃんと同じ美術を選択していて、今日は切り絵を黙々と作っていくことになった。

 下書きの上をカッターで切っていく。

 わたしが下書きに描いたのは浴衣の女の子で、女の子の周りには季節の花が飾られているような絵になっている。

 それをカッターで黒い紙に切っていく。

 とても大変な作業は細かい線を切り出していくときだ。

 その線を切り出していくときに、細かい場所を間違えて切ってしまった。

「やっちゃった……。めちゃくちゃ難しい」

 わたしはため息をついてしまう。

 休み時間になっても休憩をしながら、わたしは作業を続けていたんだ。

 美術の授業はあっという間に終わった。




 もう昼休みになっていて、すぐに教室に戻って財布を片手に学食へ行くことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る