夏空
須川 庚
プロローグ
六月。
いつもより数十分、起きるのが遅かった。
あと数分後には学校に行く時間だって、気づくのに数秒かかった。
「ひいっ!! まずい」
わたしは急いで洗面所に行く。
洗顔と歯磨き、寝癖を直して夏服に着替えて、慌ててリビングで朝食を諦めて行くことにした。
「
迎えに来た幼なじみの
「いま行く~!」
わたしは肩まである髪をポニーテールにして、学校用のリュックを片手に玄関に走っていく。
今日はお昼にガッツリ、学食を食べるのがすでに確定した。
「遅くなった! ごめん」
目の前には慧がため息をついて、ドアを開けた。
「早くしないと……」
わたしはうなずくと、家族に玄関から叫ぶ。
「いってきます!」
「いってらっしゃい」
遠くから両親の声を聞き、ダッシュで最寄り駅に向かった。
最寄り駅に着くと、いつも使ってる路線がまさかの人身事故で運転見合わせていた。
「マジかよ、再開の目処がたってないのか」
「迂回しないとね。急ごう」
慧と一緒に遅延証明書をもらい、学校には遅れることを連絡済みなので別路線で迂回することにした。
実は数ヵ月に一回人身事故で止まっているの路線なので、迂回するのにはすっかり慣れていた。
「慧がいてくれて助かる~」
「蒼空。俺は保護者じゃねぇ……」
そのまま改札口を入ってから、すぐに別路線のホームに向かう。
人混みに飲まれそうになるけど、慧が手をグッと引っ張ってくれた。
「蒼空、大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫!」
心臓の鼓動が速まる……その理由は慧にはわからないと思う。
慧のことが好きだから。
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