第107話 エピローグ

 ドランを捕縛した後──俺、父さん、アナスタシア、ジョン、セスはフローラの転移で無事に脱出した。


 今はヤマトの近くにいる。一応、いきなり中に入っていいものかわからなかったからな……。


「若……本当に良かったんかいな?」


「あれめっちゃ、怒ってたぞ?」


「そうだな……もしもの時はお前らに期待する。部下になったんだろ? 体張って助けてくれたらいいぞ?」


 道中にドランとの件を聞かれ、俺は悪そうな顔でジョンとセスに返事する。


 2人は顔色が悪くなっていく。


「若……あの人って確か八首やんな?」


「そうだな」


「若……俺達で対応出来るのか?」


「お前らも弱くないんだから自信持てよ……仮にも元、国の最高戦力だろ? ドランもそんな1人だ。俺達ならどんな苦難だろうと立ち向かえるっ!」


「「若──」」


 2人の──俺を見詰める顔は……前世の時によく見た表情だ。あの顔は尊敬すると同時に────最後には俺に丸投げする。そんな時の顔だ……。


 俺は溜息を吐く。


「レオ、これからどうするのだ?」


 横からアナスタシアが話しかけてきた。


「とりあえず──父さんの助ける手段を探す為に情報収集はしたい。ただ、今日はもうすぐ日が暮れるから皆と合流して打ち上げでもやろう。父さんもアイリスと会いたいだろ?」


 俺は返事をし、父さんに聞く。


「そうだな。後──アリスちゃんとミアちゃんの顔も見たいしな」


「じゃあ、宿に行こう」


 今日は盛大に飯でも食って楽しもう。




 その後、ヤマトに到着した俺達は皆と合流して朱雀の事や、厄災を復活させる組織、父さんの事を説明した。


 皆協力すると答えてくれるけど、厄災の戦闘については今のままだと俺は許可しない。


 今回、厄災と対峙してわかったが……中途半端な戦力では被害が大きい。最悪────死ぬ。


 朱雀も切り札である赤闘気を使ってもギリギリだった。


 それに、厄災を復活させようとする組織……あいつらは油断出来る相手じゃない。父さんの話によると今の父さんと変わらない実力の持ち主ばかりらしい。


 俺も──もっと強くなりたい……皆を守れるだけの力がほしい。こんな時に戦闘系の恩恵じゃないのが悔やまれる。


 何回、何十回、何百回──死んででも皆を守る────それだけは変わらない。



 とりあえず、父さんの事を最優先で動く事を伝え、一通り話が終わると、宿の食事処で騒ぎに騒ぎまくった。


 アリスとミアは父さんとの再会に花を咲かせて、アイリスはハクマを抱えて父さんにべったりだった。


 フローラは相変わらず、ひたすら飯を食っていた。


 ミーラは俺との関係を父さんに認めてもらおうと自己紹介の時に「レー君のお嫁さん予定のミーラだよっ!」と言った一幕があった。


 その時、父さんの俺に向ける視線が一瞬険しくなった気がした。


 あの目は、何人嫁を増やす気だ? という目に違いない。俺は首を横に振って応えると────少し安心したようだった。


 アリスがジョンを睨んでいたのでジョンとセスの紹介した。その時、アリスがいきなり、ジョンに斬りかかるという事件もあった。


 疲弊しているジョンは俺に「若っ! ヘルプっ!」と言いながら必死に逃げ回った。


 アリスの攻撃はギリギリ当たらなかった。


 その時、セスは「なんなん!? 若の嫁さんって阿修羅か何かなんか!?」とか言ってきたので、三日月鎌鎖を首に当てた。


「言葉に気をつけようか?」


 と優しく諭すように言うと、首がもげるんじゃないかと思うぐらいの勢いで首を縦に振っていた。


 ジョンとアリスの関係性を簡潔に伝えたら──


「ジョンが悪いっ!」


 と言い、セスが影でジョンを妨害し──


「セス、裏切ったな!?」


 と答えたジョンはアリスに隙を見せて……一刀両断されかけた。


 その後、ひたすら土下座をさせられていたジョンは可哀想だった……。まぁ、因果応報だが。


 収まった後──しばらくすると、アナスタシアの目の前で跪いていた。


「「お嬢っ! 今度はお守り致すっ!」」


 とジョン、セスの言葉が聞こえてきた事から──アナスタシアに前世との関係を打ち明けたのだろう。


 ただ、その時のアナスタシアの表情は玩具を見つけたように笑っていた……。悪寒がするぐらい悪そうな顔だった……。


 2人が今後も無事だと祈りたい。



 途中、シバの乱入があり──酔っ払って裸踊りをしようとして、アイリスが叫んだ。


 三者が動き出す。


 娘に汚い物を見せられた父さんが、誰よりも1番早く行動する。呪鎖で巻き付け無力化し──


 ──次に酔ったミアが植物を使い覆う。


 その後、綺麗な大輪の花を咲かせて高笑いしていた──


 いつもの大人しくミアはそこにいなかった。


 ──最後にハクマが凍らせる。


 アイリスに懐いているからか……攻撃には殺意が篭っていた気がする。


 花の中心には失神したシバのオブジェが出来上がっていた。


 俺は心の中で合掌する。


 安らかにシバ……。


 真ん中にシバの裸体がなかったら、大きなドライフラワーで綺麗だと思えたんだが……シバの存在でとてもそんな風に思えなかった……。


 正直、気持ち悪い……せめて獣化してくれていたら良かったんだが、獣人状態のせいか男の大事な部分を晒している……。


 せめての救いはミアの植物で大事な所が隠されている事だ……。



 そんな出来事があっても、各々が楽しそうにしていた。


 俺も笑いながらその光景を見る。


 明日はとりあえず城に向かって情報を集めるか……。


 馬鹿騒ぎは夜中まで続いた────


 ────次の日、全員が昼過ぎまで寝ていたのはご愛嬌だろう。

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