第106話 三位一体

 俺、父さん、アナスタシアが部屋で談話した後──部屋を出ると──


 ──ジョンとセスの2人が立っていた。その顔は真剣だ。


「「若っ! お疲れ様ですっ!」」


「おっ、おぅ」


 勢い良く2人に挨拶をされて俺はなんとか返事をする。


「若っ! 約束守ってもらうでぇ〜! わいらは若の部下になる……そんで──笑顔で遊び尽くすっ!」


 そういや、そんな事言っていたな……。


「お前、それ本気で言って──るよな……。セス、お前、帝国どうするんだ?」


「んなもん、辞めるに決まっとるやん!」


「辞めるって……そんなに簡単に辞めれるものなのか?」


「大丈夫やっ! 手紙で辞めるて書いて、さっき送ってやったわ!」


 そんなに簡単に辞めれるものなのか??


「いやいやいや、それ本当に大丈夫なのか??」


「大丈夫やっ! ──たぶんっ!」


 たぶんって言ってるけど!?


「若、俺も手紙出しておきました!」


 おいっ! ジョン、お前もか!?


「十傑もそんな簡単に辞めれるのか??」


「大丈夫でしょ……たぶん」


 お前もはっきりしねぇなっ!


「……いや、本当に大丈夫なんだよな? 後で襲われたりしないだろうな?!」


「「若の強さなら大丈夫です」」


 何で、そこだけ敬語なんだよ!? しかも俺頼みかよ!?


 信用してくれてるのはいいんだが──後でいちゃもん付けられるの嫌なんだけど……。


「しかしなぁ……」


「若が、ごねるのであれば──お嬢にを言いまっせ!」


 あの事ってなんだ!?


「セス……あの事ってなんだ?」


「そりゃあ、決まっとるで〜若の格好良いエピソードですやん! お嬢が亡くなってから──「待てっ」──若、顔色悪いでっせ?」


「ストップだっ!」


「って事は?」


「……わかった……」


 いや、お前──俺の黒歴史を暴露しようとしただろ!? まさか脅して来やがるとは……。


「「ありがとうございますっ!」」


「絶対にアナに琴音が死んだ後の話するなよ?」


 マジで嫌だ……恥ずかしいとかじゃなくて、あの後──確か色々あった……バレたら────即死級の攻撃をされる自信がある。


「「はっ」」


 若干笑いながら返事されても困るんだけど!? マジ頼むぞ!?


「はぁ、それで王との話はどうなったんだ?」


「そうやな〜、結局あの後は1番の主役である若がおらんかったから──お礼言われて終わりやったで? また明日やて」


「そうそう、その後は手紙出して雑談してから──2人で若の様子見に来ただけかな?」


 そうか……、あの後すぐ解散になったんだな。


「って事は……また明日も王に会わなきゃならんの?」


「そうなりますね。若なら望めばどんな報酬でも可能な気がする」


「せやな〜、それに、お姫さんも若の事気になっとるみたいやったで?」


 良し、聞かなかった事にしよう。


 それより、明日も会うとか怠いな……ドランに任せて帰るか……そうだな、そうしよう! 面倒臭いのは丸投げだっ!


「ドランどこだ?」


「あー、あのドワーフは確か……部屋で酒飲んで寝るって言ってたんじゃねぇかな? 部屋はあそこかな?」


 ジョンがドランのいるであろう部屋に指差して教えてくれる。


 俺はフローラをまた召喚し、アナスタシアと父さんに荷物を纏めるように伝えに行ってもらう。

 フローラが迅速に動いてくれたので助かった。


「……よし、これで準備はOKだ。部屋に行ってくるわ」


 俺は歩き出す────


「……なぁ、付いてこなくていいぞ?」


「「えっ!?」」


 何で!? みたいな顔するなよ!


「いや、別にいなくても問題ないしな」


「「我らは若と共に」」


 跪くとか止めてくれ!


 メイドさんとかが凄く不思議そうな目でこっち見てるじゃないか!


「はぁ……もう好きにしろ……」


「「いえ〜いっ」」


 ハイタッチを交わす2人……こいつら本当に変わらないな……。


 とりあえず、メイドさんの目が気になるので足早にドランの部屋まで行く。


 コンッコンッ


「ドラン、入るぞ〜」


「うぃ〜」


 ノックをし、返事がしたので俺は扉を開ける。


「くっさっ……飲み過ぎだろ……」


 部屋に入って目に入った光景は大量の酒瓶だった。そして酒の臭いが半端なかった。アルコール度数強すぎるんじゃなかろうか?


「おぅ、レオンどうしたんじゃ〜わしと飲むか?」


「遠慮する。ここから早く出たいから単刀直入に言うぞ? 今日のうちに俺はヤマトに戻る。明日よろしくっ! じゃあなっ! 行くぞっ!」


「「承知っ!」」


「はっ? なにを──」


 ドランが去り際に何か言っていたが、俺は何も聞いていない。


 仮に追いかけてきても────


 バアァァァァンッ


 ────撃退するのみっ!


「待たんかぁぁぁあっ!!!」


 扉の破壊音と共にドランの叫び声が聞こえてくる。


「お前ら、迎撃準備だっ! 俺達は疲弊しているが──相手も同じっ! 更に言えば酔っ払いだっ!」


「「応っ!」」


 俺達は大槌を振り回すドランに対して、一斉に動き出す。


 仲間のはずなのに戦闘しているのが不思議でならないが──俺の平穏には必要な事だっ!

 絶対、明日面倒臭い事になる! 俺の第六感がそう言っているっ!



「セスは俺と同じく阻害、ジョンはトドメだっ!」


 まず──俺の鎖を放ち、大槌に絡ませて動きを阻害する。


「任せぇいっ!」


 その次はセスの影でドランの体を床や壁に貼り付けにする。


「喰らえっ!」


 最後はジョンの闘気を纏ったアッパーが無防備なドランの顎先をかすめる。


 これぞ、三位一体っ!



 ドランは声を上げる間も無く、脳震盪を起こし──その場に前のめりに倒れる。顔は俺を見据えている。


「済まない、ドラン……俺は──このまま逃げるっ!」


「…………」


 ドランは恨みがましい目で俺を見て来る。


 俺はそんなドランを一瞥し、衛兵がやって来る前にアナスタシア達に合流してから転移をフローラに使ってもらいヤマトに戻った……。


 ドラン────いつか、借りは返す!


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