第105話 使用方法は──
「今向かう──」
俺は父さんのいる場所に到着する。
「レオンか……アナスタシアちゃんのお陰で大分マシだよ……ただ、いつか血が流れ切って────死ぬだろう……」
傷口から血を流し続ける父さんは仰向けで寝た状態で俺に話し掛ける。
傷を受けると治らない呪い……この世界に呪いを解く方法があるか俺にはわからないが──なんとか方法を探さなければ……。
「父さん……」
「これは報いだ……」
「……そんな事はない……俺も────愛する人を失ったら……きっと同じ事をする……」
復讐に走った事を言っているのだろう……俺は間違ってないと思うし、きっと力のある今なら────復讐に走る可能性は高い。
「……似た者親子か……だが、お前は間違うな……残り時間は少ないが──お前達と過ごせるのはありがたいな」
俺達と過ごせると言った時、微かに笑ってくれる父さん。
最後の時間を俺達の為に使ってくれる──それが嬉しく思うと同時に最後の時間と思うと胸を締め付ける。
「そう……だな……アイリスが待ってるよ……。父さん……どれぐらい持ちそうだ?」
「たぶん血の流れから──もって2日ぐらいがいい所だろうな……」
短い……。
「そうか……まだ、遺言や後悔を口にするのは早い……。アナ悪いけど、しばらく回復を──頼む」
アナスタシアに父さんを頼み、俺はフローラを召喚する。
フローラは焼き払われた惨状を見てびっくりしていたが、事情を軽く話し、転移を使ってもらう。
行き先はアルステラ王国────
王なら何か治す方法、もしくはそれに関係する事を知っているかもしれない。
◆◇◆◇◆
俺達は父さんとアナスタシアを除く、全員がアルステラの城に到着し、王座の前にいる。
父さんは別室でアナスタシアの治療を受けてもらっている。
王が入室してくる。
周りの皆は一言も話さない──いや、俺が話そうとしている事を察して黙って見ていてくれる。
「王よ──時間がないから、単刀直入に言う。呪いを解く方法は知らないか?」
俺は無礼なのは承知で王が目の前に来た瞬間にそう言う。
「呪いを解く方法は残念ながら知らぬ。解呪のアイテムかは分からぬが、宝物庫にそれに近い物があったはず。それを今回の報酬の一つにする」
特に気にした様子もなく俺の問いに答えてくれた。
「あぁ、助かる」
俺は頷きながら返事をする。
「──持って参れ──」
「いや、急いでいるから俺が直接取りに行く。構わないだろ?」
「ふむ……良かろう。では、そこの衛兵と行くが良い。此度の働きご苦労であった」
「感謝する」
王は解呪のアイテムを取りに行かせようとするが、俺が遮り、一緒に向かう事を告げると許可が降りた。
俺は衛兵と宝物庫に足早に向かう。
国宝級のアイテムならなんとかなるかもしれない。
◆◇◆◇◆
宝物庫に到着したが衛兵が目録を手に持ち、待つように言われた。中には入れてはもらえなかった。
まぁ、他国の人間を宝物庫に入れる事はないだろうな。
しばらくすると、衛兵が宝玉を片手に宝物庫から出てくる。
「レオン様、こちらが、そのアイテムになります。──ただ……」
衛兵は口籠る。
「どうした? 何か問題でもあるのか?」
俺は衛兵に聞き返す。
「この宝玉は使い切りの魔道具で、効果は──解呪ではなく……進行を和らげる延命用のアイテムになります……そして永続効果ではありません。この目録の記載通りなら約一月の効果になります」
「そう……か……。これで構わない。ありがとう」
俺はそう告げて、衛兵と別れ──父さんのいる部屋に向かう。
このアイテムで生きる時間が増えるならそれで構わない。その間に──解呪する方法を見つけるだけだ。
俺は父さんの眠っている部屋に到着する。
コンコンッ
「入るよ」
俺はノックをして中に入ると──父さんはアナスタシアと楽しそうに話していた。
「おぅ、レオン。アナスタシアちゃんは良い子だなぁ〜。俺の事をお義父さんと呼んでくれたぞ? それで、どうしたんだ? もう話が終わったのか?」
俺に気付いた父さんは、特に辛そうにするわけでもなく────昔によく見せてくれた笑みを浮かべて俺に話しかけてくれる。
「ったく……父さんは安静にしてろよな……。俺は先に抜けて来た。傷の具合はどうだ?」
「レオ、傷は我が治している間は微々たる出血で済んでおる」
俺が傷の具合を聞くと、アナスタシアが状態を教えてくれる。
「わかった……これは今回の報酬で貰った呪いの進行を抑えるアイテムらしい。効果は約一月ぐらい……まだこれで生きられる。その間に呪いを解く方法を探そう」
俺は手に出して宝玉を見せる。
「おーありがとう、レオン……それどう使うんだ?」
────!? 確かに! 父さんに言われるまで気が付かなかった……急いでたせいで使い方聞いてないっ!
どうすればいいんだ??
俺が使い方をどうするか悩んでいると──
「レオ、お義父さんの足元で割ればいいよ?」
アナスタシアが小声で教えてくれる。
俺が恥をかかないように気を使ってくれるアナスタシアはマジ女神だ……。
そういや……記憶の入った宝玉を前に使った時も割ったな……。
この世界の宝玉は割る為に存在しているんだろうか?
俺はとりあえず、父さんの足元に──というか、寝ているベットの近くに投げ捨てる。
パリンッ
「うおっ!? 危ねーな! 何すんだ!? というか壊れたぞ!?」
うん、壊れたな……しかも、何も起こらないんだけど……。
偽物なのか?? ちょっと不安になってきたぞ?
アナスタシアを見ると──少し気まずそうにしていた。
おいっ、本当に使用方法あってるよな!?
しばらくすると──淡い光が父さんの傷口を覆う。
「────!? これは……治ったのか?」
父さんが不思議そうな顔をして言葉を発する。
傷口はなくなり、出血はしていない。これで一先ず安心か……発動しなかったらどうしようかと思った……。
アナスタシアを再度見ると、ドヤ顔していた。
きっと内心は安心しているはずた。
さぁ、後は一月以内に解呪の方法を探すだけだ────
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