第42話 俺は厨二病じゃない!

「さぁ! どんと来いっ!」


「いや、行かねーよっ!」


 そもそも殺し合いじゃないってわりに……得物がでっかい斧って……当たり所悪かったら死ぬだろそれっ!


「まぁ、ぶっちゃけお前不審者だし? あーどっかに戦ってくれる気の利いた奴いねーかなぁー。このままだと国に入れたくないなぁ〜〜」


 ぐっ……こいつ……ウザい!


「……わかった。俺が戦ったら国に入れてくれるんだな?」


「話がわかるねぇ。俺はヤマト国、【大蛇おろち】所属。破壊王のシバ! ん? どした??」


「いや……何でもない。少し心が痛いだけだ……」


 俺は片膝を着く。


 ……心が痛い……なんだ、この二つ名は……。やはり異世界だからなのか?

 まぁ俺も必殺技に名前とか付けてるが、それはイメージがしやすいからであって、断じて厨二病ではない。そのはず……。


 そうだ! 俺は二つ名なんて欲しくないから厨二病ではない!


 気持ちを切り替えよう。大蛇とかいう組織は国の精鋭なのだろう。破壊王という二つ名がついているぐらいだ。パワーを武器に暴れ回るんだろうか?


「……なんか苦しそうだな。それでお前の名前は?」


 お前のお陰で心に先制ダメージ受けたわ!


「俺の名前はレオン」


「では、レオン。お互いに即死するような攻撃は程々にしよう」


 大きな斧を片手でブンブン振り回すシバ。


 ……程々ってなんだろ? あれ普通に喰らったら即死間違いなしだと思うんだが。


「シバだっけ? ちなみに勝敗はどうするんだ? タイマンだよな?」


「むぅ、そういえば決めてなかったな。もちろんタイマンだな」


 いや、殺し合いじゃないなら決めとけよ! このままやってたら間違いなく殺し合いになってたろ!?


「──とりあえず、致命傷喰らったり、詰んだら終わりって事で! それじゃ開始っ!」


 シバは斧をで大きく振りかぶり、振り下ろす。



 ブォンッ



「──っ! マジか!? っと……」


 斧の重量を無視したような速度で向かってくる大斧。かろうじて避けるが、振り下ろす風圧でバランスを崩す。かなりの威力があると推測できる。


 ニヤッと笑ったシバは、地面に大斧が当たる瞬間に俺が避けた方向に斧の刃を向ける。


 まさかっ!? そのままこっちになぎ払うつもりか!?


 そしてその予感は的中し、俺の腹部に衝撃が伝わり、そのまま吹っ飛ばされる。


「レー君!」 「お兄ちゃん!」


「中々の反応速度だったが、まだまだ甘いなぁ。ありゃぁ死んだな────!? これは鎖か!?」


 俺は吹き飛ばされると同時にシバの周囲に鎖を発動させ束縛し、腕に連結させる。


「いつつ……勝手に殺すなっ! 殺し合い無しじゃねぇのか! 明らかに一般人なら死んでるだろっ!」


 起き上がり、文句を言う。


「いやぁ、ついな? 生きてるし良いじゃねぇか! それより、お前あの一撃で無傷とかおかしくねぇか? それに固有魔法か……」


 俺は鎖を腹に巻き付けて致命傷を避けたので傷は擦り傷ぐらいだ。衝撃で痛いけど、これなら直ぐに回復する。


 恩恵があるからとゾンビみたいに攻撃を喰らうのも痛いから嫌だし、恩恵は謎が多い。多用は控えるべきだろうと試練以降は判断した。


 でも、俺の恩恵って、死んだり、攻撃喰らったら発動するんだよな……。


 それより、今はシバだな。


「ったく、バカみたいに大斧片手で振り回しやがって────今度は俺の番だっ!」


 俺は身体強化し、巻き付けた鎖を全力で引き寄せる。


 簀巻き状態なので、抵抗出来ずにシバは宙を舞う。


 ドォーンッ ドォーン ドォーン ドォーン ドォーン ドォーン ドォーン


 俺は半円を描くようにシバを地面に何度も叩きつける。


 片手で大斧振り回す奴だ、これなら死なないだろ。泣きが入るまで続けようと思った矢先に。



 ジャリンッ



 鎖は引きちぎられる。


「はぁ!?」


 地竜すら身動き取れなくするぐらいの強度だぞ?


 こいつ絶対おかしいって!


「坊主やるじゃねぇか……。ここからは俺も真剣に行くぜっ!」


 ──っ!? はやっ!!!



 ヅゴォォォン



「おっもっ!」


 俺は直ぐに蛇腹鎖を発動し、振り下ろされた大斧を受け止める。


 さっきより重たい……これミノさんより余裕でパワーあるんじゃ……。


「おっ! 受け止めるとかやるじゃねぇか! じゃぁ続けて行くぞ〜っと! 必殺──滅多打ち」


「──────っ?!」


 それ、必殺技というより、ただがむしゃらに打ち込んでるだけだろ!?


 心の中で突っ込みを入れつつ、俺は大斧の嵐の様な猛襲を捌き始める。


 一発一発が致命傷の攻撃を俺は蛇腹鎖の剣形態で斜めにし、力の重心を逸らし避け、時に鎖で絡めとって力の方向を逸らしながら最低限の動きで避ける。


「お前、すげぇなぁ。レオンだっけ? 次の攻撃で最後だっ! 受け切れたら合格だっ! 死ぬなよっ!」


 いや、殺そうとするなよ。


「いや、なんの合格だよ!?」


「気にするなっ! 俺が楽しめたらそれでいいっ! さぁ喰らえっ! 金剛破砕撃っ!」


 ────!? 急激にシバの周囲に白いオーラっていうのか? それらが纏わり付く。


 俺は急激な寒気に襲われる。


「鎖結界【檻】」


 俺はヤバいと思い直ぐ様、ゼドの攻撃にも対応出来た鎖の密度が高い結界を選択し、自分を中心に網目状に展開する。


 そして、鎖の隙間からシバを確認するとで大斧を握りしめていた。


「おらぁぁぁぁぁっ! ガチンコ勝負じゃぁぁぁぁっ!」


 俺は是非とも遠慮願いたいっ!


 そんな事を心で叫びながら、攻撃を受ける。



 ゴオォォォォォォォォォォォォンッ



 轟音と共に砂埃が舞い、辺りは静寂した……。

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