第39話 閑話 〜ミーラ過去編3〜
お父さんがお母さんを殺して……どれぐらい経ったのだろう?
あれから僕の感情は希薄になった気がする。
それに時間の感覚もわからない。たまに聞こえるのはお父さんの声だけ。
その声も僕の意識が朦朧としてて、聞き取れない事も多い。
色々と話をしてくれる。本当に色々なんだ。
初めの頃はお父さんの思い出話がほとんどなんだけど、一つの物語みたいに話してくれたり、他にも僕の知らない事をたくさん声に出して言ってくれた。
僕は子守唄を聴いている感覚になっていた。
お母さんの事を話す時は辛そうだけど、幸せに過ごした時の話になると、聞いてる僕は背中がむず痒い。
でも、話す事がなくなってきているのか……ある時期からは僕に語りかけると……
「愛してるぞ」
「幸せになれよ」
「お前は俺の宝物だ」
とかの言葉が多い気がする。
僕もその頃ぐらいから意識がない時が多くて半分寝ているみたいな状態だ。お父さんさんも僕も限界なのかな?
◆◇◆◇◆
────!?
お父さんが話しているのが聞こえる。
久しぶりに誰か来たっ!
何人かいるみたいだ……。此処の試練についてお父さんから教えてもらったけど、1人で来ない場合はお母さんの時のように1人になるまで戦わないとダメらしい。
魔物を倒した後は、お父さんと戦う事になる。力を制限されていても英雄のお父さんに勝てる人なんてきっといない。これまでに何組みか此処に来たけど、1人を残して全員死んだ。
可哀想に……この人達も1人を残して皆死ぬんだろうな。
ただ、時間の経過と共にお父さんの感情には今までなかった希望を感じさせるような気がする。
しばらくすると、魔物を倒し終えたのだろう。お父さんと話をしたり、戦ってたりしているようだ。
お父さん、楽しそう。
僕の意識もかなり久しぶりにしっかりとする。と言ってもよく聞こえる程度なんだけどね。
それにしても、今回の相手はどこかおかしい。お父さんの攻撃は確実に当たっているだろう気配はしている。
だけど、この人はまだ生きている。
こんなにお父さんと戦える人なんて今までいなかった。どんな人なんだろう?
もしかしたら、お父さんを助けてくれるかもしれない。
見てみたいなぁ。
【流水】
【百花繚乱】
の言葉が聞こえてきた。
お父さんが【
これらの技の凶悪性は知っている。
これで決まる……そう思ったんだけど、結果はお父さんの攻撃が全く通用せず、──いや、通用はしているけど、直ぐに回復していた。
その人の顔は凄く悲しそうで優しそうだった。
まるで友達を心配するように話しかけてくる。
あれっ? 僕見えてる?
なんで?
お父さんとレオン君の最後のやり取りが始まる。
「ありがとう。どうやら、やっと解放されるようだ……。俺とここまで戦える奴はいないと思っていたから嬉しいよ」
お父さんが弱体化してるとはいえ、凄いよ。
「そうか」
その返事には納得いかない……もっと自慢してもいいのに。
「君はどうして、そんな悲しそうな顔をしているんだい?」
そうだよ。君はお父さんを解放してくれたんだよ? もっと胸を張ったらいいのに。
「デッド……「ゼドだ。それが俺の本当の名前」……ゼド、心残りはないか?」
「ないと言えば嘘になるな。君「レオンだ」……レオンは俺の頼みを聞いてくれるのか?」
「聞けることならな」
「じゃあ、この肉体の依代になってる子を幸せにしてほしい……」
────!?
お父さんっ! まさかっ!?
「──!? ゼド!?」
僕の体を纏っていた存在が消えていく。
「この子もきっと、俺と同じでろくでもない未来が待っているかもしれない。だから俺はレオンにこの子を託す。頼めるかな?」
この人なら僕を任せられるの?!
「なんでそこまで、その体を気にかける?」
「もちろん、その子が俺の娘だからだ。子供の幸せを願うのは親として当たり前だろ?」
これはもうお父さん公認でいいよね?
「……わかった。俺が面倒見るよ。こんな所に置いておけないしな」
えっ!? まさかのOK!?
「ありがとう。それにしても君は本当に子供らしくないね。さて……本当に時間切れのようだ」
「そうみたいだな」
お父さん! 本当にこの人と一緒になっていいの!?
お父さんは大きく息を吸い込み、
「我は七英雄の一人、ゼドっ!!! この試練の終了を告げる!!! 究極の選択肢が今後もレオンに訪れるかもしれない……だがっ! 例えそんな状況が来たとしても、決して折れない、その心を持って諦めず立ち向かえ! その鎖を持って、未来を……そして幸せを掴み取れ! ……ったく泣くなよ……最後ぐらいきっかり決めておけっ! 我が認めし者、この先に幸があらんことを……」
僕の中にいたお父さんが消え始める。
ありがとう。
長い間一緒にいてくれて。
後は僕がお父さんとの約束守るね。
『ミーラ……こいつは信用できる。幸せになりなさい』
うんっ!
お父さんが言質とってくれたから後は僕が押して押して押しまくるよっ!
そして意識を失って、目を覚まして、リッチになったお母さんと再会して、此処から脱出して……
レオン君の固有魔法の鎖がヤバい事を認識させられたよ。
まさか地竜を一撃でミンチにするなんて……
いや、格好良かったんだよ?
だけどね……
グシャってなったんだよ! グシャって!!!
それを見てた全員がドン引きだよっ!
と、まぁ僕の過去と今はこんな感じ。
お父さんの言う幸せって、何かまだわからないけど、レオン君なら……きっと僕に教えてくれそう。
だって、お父さん解放してくれた上に、お母さんとまで再会させてくれたんだもん。
これから楽しみだなぁ〜。
そうだっ! 近いうちにレオン君のこと、お母さんみたいな感じで呼ぼうっ!
呼び方は……レー君かな?
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