第19話 魔物討伐
先程からオルトロスからの爪による切り裂き攻撃を避け続けているのだが、攻撃しようとすると、その背中からの蛇が邪魔をして、決定打を与える事ができない。
蛇と爪の連打が迫って来ているのを避け続けるのは限界がある────どうするか?
──そう思っていると。
蛇が捌ききれなくなり、足を絡め取られてしまった。蛇腹鎖で切り落とそうとするが、自在に動く蛇供を直ぐに取り払う事が出来ない。
「クソがっ! うっとおしいなっ!」
バランスを崩す俺をオルトロスは見逃す事なく、そのまま、横薙ぎに爪攻撃を仕掛けて来る。
ギンッ────ギギギギギッ
俺はそのまま身体強化を最大にし、蛇腹鎖でその瞬間は受け止める事に成功するが────
「ぐぅぅぅ、グハッ…」
────踏ん張る事が出来なくて数m程吹っ飛ばされる。
一応、衝撃を殺すために飛ばされる方向に飛んだが、それでもかなりの衝撃だった。
完全に力負けしている。そして、あの背中から生えてる蛇が厄介だな。
これがSランクか……Aランクのミノタウロスとは全然違うな。討伐難易度が極端に上がっている気がする。
オルトロスと戦闘を開始して、もう結構な時間が経っている。アイリス達心配だ……。
そろそろ、決着をつけたい。
俺は覚悟を決め。
不可視の八岐の舞を左手から発動し、右手は蛇腹鎖のままで戦闘を再開する。
八岐の舞は直ぐには絡ませない。あの蛇のせいで、直ぐに外される可能性が高い。
「おらっ、犬っころっ! とっととかかってこいやっ!」
言葉がわかるかわからないが、挑発に効果があったようでオルトロスは先程と同じように距離を縮め、猛襲して来る────
様々な角度から爪、噛み付き、蛇による攻撃が先程よりも多彩に襲いかかる。
なんとか避けながら、蛇腹鎖を鎖状にしたりして牽制はしているのだが効果がない。
俺は所々、背中の蛇からダメージを受けるが傷自体は大したことない。
ただ、少し痛みと痺れがある事から────毒が入っている事ぐらいだろう。
とりあえず注意すべきは噛み付きと爪攻撃だ。もし、他にも手を隠していたら臨機応変でなんとかするしかない。
普通に回避していてはダメだっ!
猛襲を蛇腹鎖で受け流して避けるようにする。
確か爺ちゃんが。
『行雲流水とは空の雲のように、流れる水のように自然体である事だ。剛に対して柔で制すのだっ! 力に対して力で相対するなら強いほうが単純に勝つが、物事の勝負はそれだけではないっ! 子供のお前がわしに勝てると思っとるのかぁぁぁっ! 立てぇぇい!!! 立たねば戦場で死ぬぞっ!』
────って言ってた。こんな化け物との戦闘中でも思い出せるぐらい爺ちゃんのインパクトが強いのが自分でもビックリだ。
今思えば、戦場を想定した訓練って現代日本では必要ないのではないだろうか?
まぁ別に戦闘に限って言われた事ではないのだが────いかんせん、ボロ雑巾のようにされた記憶しかない。
まぁ、言葉の意味を簡単に言えば、力で来る相手に馬鹿正直に力で対抗せずに、自然体で避けて、隙を見つけたら攻撃って事なんだが。
このオルトロスは力だけではなく、速さも兼ね備え攻撃のバリエーションもある。そんな相手に避けるだけでは、いつか追い込まれてしまう。
まさに今必要なのは明鏡止水だ。
集中して、攻撃の先読みをし、必要最小限の動きで攻撃を捌き、攻撃を誘導しつつ、隙を作る必要がある。
それを自然体で行えなければ、筋肉が変に力が入り硬直する。そうなればこちらが逆にやられてしまう。
本来なら相当の訓練を積まないと難しいのだが、前世で爺ちゃんから、今世でアナから壮絶な訓練を行った俺はそれが出来るようになっている。
俺の体はダメージも回復するから基本的に致命傷を明けても避ける事が可能だ。仮に致命傷を受けたとしても復活する。
そして────何度も爪を受け流した末に、オルトロスは功を焦った。
大きく腕を振り上げて、真上から撃ち下ろして来る。
隙が出来たオルトロス目掛けて蛇腹鎖を双頭の根本に突き刺した。
「ガァァァァァッ」
そのまま更に追い討ちで爆鎖を今度は鎖部分全てを使い発動する。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッン
マシンガンをぶっ放しているような音が響き渡る。
「グルルルゥゥゥゥ」
肝心のオルトロスは首は一つになってまだ生きているが、想定内だ。
蛇はほぼ全滅させれたから目的は達成されている。
俺は不可視の八岐の舞を巻き付ける。
その瞬間、首が一つになったオルトロスは俺の予想外の行動をとる。
口に魔力を込め始めたのだ。
なんかヤバいっ!? これは────ブレスかっ!?
俺は直ぐに行動を開始する。
「ガァァァァァァァァァアッ!!!」
火のブレスを放つと同時に俺も発動する。
【
ズッゴォォォォォォォォンッッ
爆発音の後に炎が鎖で作った結界魔法内を蹂躙する。
牢獄炎鎖は俺の中で最大火力を持った必殺技的な物だ。使うにはまず、鎖で捕縛しなければならない。
本来、獄炎は火属性の上位である炎属性の範囲魔法に分類され、極めて危険な魔法なのだが、それを結界内で行う事により威力を集約しているので、破壊力は折り紙付きだ。
だが────
「ガハッ……」
結界発動時に攻撃を受け、俺は右腕から肩にかけて消失していた。
痛みが無くなっていく────俺の体は逆再生のように元に戻り始める────超回復が発動しているようだ。
目の前の炎が収まると────オルトロスは原型を留めていなかった。
今回はブレス攻撃も予想以上の強さで完全には閉じ込められなかった為、穴が空いた状態で発動したからか……ブレス方向の地面辺りは酷く焦げている。
「ふぅ〜っ、キツかったな」
これで決着がついて良かった……。
俺の体は元に戻っている。もう少しで、死神の衣も修復するだろう。これがあっても貫通するとは……Sランク半端ないな。
さてと────ハクマが居るにも関わらず指輪の点滅は変わらない……か……。
アリスとミアを待っている時間はないな。魔物の数もこれだけとは限らない。
おそらく、俺と同じように足止めをくらっている可能性もあるな。
嫌な予感がする……。
早くアイリスの元へ行かなければな。
俺は家に向かって走り出す。
そして────家に着いた俺が見た光景は……。
「父さんっ!?」
父さんが片腕を無くし大量の血を出して倒れている姿だった……。
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