第2話 開拓村に産まれたようです

(知らない天井だ……)


 目が覚めて、一度は言ってみたかった言葉を発したのはいいが、此処が何処かわからない。体は動かないし、声も「あぅ」としか出ない。


 自分の体を見ると赤ん坊になっている事に気付く。


 転生マジだったんだな……。


 周りにも誰もないないので状況の確認が出来ない。


 幼児ということは、寝るのと食べるのが仕事……。


 今はひたすら眠い……寝よう。


(おやすみ)




◆◇◆◇◆



 ────周りが煩い! 雑音酷くて、おちおち寝れないじゃないか!


 俺は目を開けると、そこには女性と男性の2人がいた。


 この人達が──俺の両親だろうか?


 何か俺に話しかけて来ている。耳を澄ませて聴くことにする。


「エリク、この子全然泣かないの……大丈夫かしら? 心配だわ……」


「マリ、確かに泣かないが、お産に立ち会った婆さんが異常はないって言ってたろ? 心配しすぎだ。母乳は飲んでるんだし──大丈夫さ」


「そうね……寝てばっかりだから心配で……何か障害でもあるのかと思って……」


 今の会話と見た感じから察するに──目の前にいる男性と女性がやはり両親で、母親の名前はマリ、父親の名前はエリクというらしい。


 母さんは美人というより、おっとりした可愛らしい印象で、髪の毛は赤く、長さはセミロングで目がクリっとした細身だ。


 父さんは黒髪短髪で、イケメンと言えばイケメンなんだろうが、こちらも細身で、男性としては頼りない感じだ。


 おっと、親の見た目より、自分の心配をしなければ……このままだと障害があると思われる。


「きゃっ、きゃっ、あうぅぅぅ」



 どうだ!?



「エリク! レオンが話しかけてくれたわ!」


「おぉっ! 可愛い声だ!」


 此処に来てやっと俺の名前が出て来たな……。


 レオンという名前か……うん、格好良いじゃないか!


 とりあえず、これで俺が普通? かどうかわからないけど、心配は解消出来たっぽい。


 しかし、これから先の事を思うと少し憂鬱だ……。


 老人になってから経験する物だろうと思ってた事が、まさか転生してされる事になるとは……。


 開き直るしかないな。




 ◆◇◆◇◆



 まぁ、そんなこんなで1ヶ月が経ちました。


 少しずつ体を動かしてみたけど、中々厳しい。いくつか情報が手に入ったので整理してみたいと思う。


 まず、恩恵で簡易鑑定があると聞いていたから使ったら──すんごい頭痛が起きた。その結果──



 名前:レオン


 恩恵:言語理解、無限収納、簡易鑑定、超再生、即死回避


 ──という結果が俺の目に現れました。


 言語理解、無限収納、簡易鑑定は言葉通りだと思う。


 言語理解は親の話がわかるから、既に発動している。これが異世界転生のご都合主義という奴だろう。


 楽して言葉がわかる!


 無限収納はまだ使った事は無いが──想像はつく。俗に言うアイテムボックスなんだろうな。容量制限は無限とあるので無いはず。時間停止とかしてるとありがたいな。


 簡易鑑定も今使っている感じだと、簡単な事ぐらいしかわからないのだろう。ゲームみたいなステータスやスキルとかは表示されない。


 そもそも存在しているのかわからない。


 超再生は神様の提案でつけてもらっている奴だな。名前からして怪我しても回復するのだろうか?



 問題は神様の爺さんに丸投げした残り一つの恩恵だ。


 ギリギリになって思いついた戦闘系か生産系を言う暇がなかった。


 まさに神頼みだったのだが………。



 俺の最後の恩恵はだった。


 文字通り、即死を回避する恩恵なのだろう。


 確かに死にたくないとは伝えたし、これで更に死に難くなるだろう。それ自体は歓迎するべき事だ。


 しかし────これでは攻撃手段がない。


 両親が話しているのを聞くに──魔物はけっこう頻繁に現れるみたいだし死活問題だ。


 これは成長と共になんとかする必要がある。仮に生産系の恩恵を貰ってたとしても役に立たない可能性が高かったかもしれない。

 その理由は──俺の生まれが村である事も影響している。村は村でもの子供だ。


 そりゃー死亡率高いだろ! もっと安全な場所に転生してくれてもいいじゃないだろうか?


 小さい内はどちらにせよ、生産系があっても使い道が限られる上に、情報も少ないと悪目立ちもするし、恩恵があっても何を作ればいいかもわからない。


 何より、魔物に襲われる率が高い開拓村で引き籠る事ができない。


 戦闘系でない以上────これから身を守る術を見つける事が最優先になるだろう。


 他の情報では父さんが村の自警団をしていると話していたのを聞いた。


 誰にって?


 もちろん、母さんである。


 母さんは俺の子守で家にいるため、他にも色々と独り言のように俺に話しかけている。


 それに対して俺は──


「あう!」


 ──とか言って相槌を打っているので、どんどん情報が入ってきた。


 現在も村を作るために村人が一丸となって働いている。俺もある程度大きくなったら手伝いとかあるんだろうな……。


 正直、遠慮したい。どうせなら────自由に生きたい!


 なので、いつかは村から出るつもりだ。その為には多少の戦闘は出来る様にしておかなければならない。



 まずその前に、この世界だが────


 電気、水道はもちろんない。母さんの話を聞いていると──中世ヨーロッパぐらいの文明ぐらいだろう。いつか確かめたいものだ。


 食事事情は質素だ……目の前で食事を取っている両親を見ているので間違いない。野菜の入っただけのスープとパンを食べていたぐらいだ。


 他に特筆する事は────異世界の定番、魔法だ!


 夜中に目の前で照明の魔法をいきなり使われて一定時間、目が見えなくなってパニックになったが、魔法の存在があるとわかって興奮した。


 この世界の常識では魔法を使えるのが一般的のような気がする。


 なんせ村人である母さんが使えるのだから──きっと俺にも使えるはずだ!


 という事で、異世界のテンプレでは魔力を小さい頃から使うと魔力が増大する話が多い。


 俺はそれを信じる事にする(根拠はない)。


 では、どごに魔力があるのか?


 探してみようじゃないか!



 んー、………わからん。



 右手に何か集まる様に意識してみよう……。



 おっ、何か温かい物が手に集まる感じがするな……これが魔力かな?


 ──!? 頭痛がキツいな……魔力切れなのか? ちょっと動かしただけなんだが……。


 俺はまだ幼児だし、無理良くない!



 寝よう!

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