第3話 初めての魔法

 魔力を感じた日から5年が経過した。


 もう普通に歩けるし、話す事も可能になった。お陰様で、情報を得るのが楽になっている。


 まず、母さんが使っている魔法は生活魔法というらしく、世間一般的に使われている魔法らしい。


 魔力も訓練次第で上がるらしい。


 攻撃魔法、補助魔法、回復魔法などの種類があって、そこから更に属性魔法による地火風水などの分類があったり、精霊魔法、固有魔法、刻印・魔法陣による魔法など色々あるらしい。


 まぁ、どういった物があるかなんて学のない人達には大まかにしか知らないみたいで、そんなのがあるんだな程度の認識しかしていないようだ。


 所詮は近くに住んでる人達に聞いただけの情報でしかない。だから今さっきの話は信憑性に欠けるのでらしいと言った。


 魔力量については魔力を使えば使うほど魔力量は増えている。やはりテンプレは大事だな。やってて良かったテンプレ式!


 その為、毎日限界まで魔力を使っている。方法は簡単で、動かすのは体の中で全体を巡らせ、放出する際はサイコキネシスのように物を浮かせたりすればいいだけ。


 この調子で頑張って、適性があるかわからないけど、いつか属性魔法から使ってみたいと思っている。


 ただ、適正があるかどうか確かめる術はないんだけどね。一応、何度か試してみた感じ、魔法が全く発動しない……やり方が間違っているんだろうか?


 小っ恥ずかしい詠唱を教えて貰ってやっても生活魔法すら使えないっていうのはいったい……。


 仮に魔法が使えたら────あわよくば、動物やらの食料を調達をしたい。


 野菜クズのスープばっかりで不味いし、飽きた……。


 もう少し栄養がほしい。


 神様の爺さんよ……もう少しイージーな場所に転生出来んかったんかね? 異世界に来て魔法使えないとか酷過ぎるぞ?



 父さんは毎日、開拓している人達の護衛を頑張りながら、たまに狩りを行っているみたいだし、いつか連れて行ってくれないだろうか?


 母さんは最近では農作業を少し手伝うようになり、俺は近くのちびっ子達が集まっている所に預けられる。


 保育所のようなものだが、大人が面倒を見てくれているわけではない。8歳ぐらいの子供達が下の子供を見ているだけなので、正直つまらない。


 早く大きくなりたい。


 目新しい情報も特にないので、現在も棒を使って素振りをしたり、基礎体力や筋力をつけている。なんたって魔法使えないからね!


 いつか、この世界の本格的な戦闘術も習ってみたい。日本にいた頃は爺ちゃんから護衛の為に散々────殺されるかと思うぐらい叩き込まれたけどこっちの世界の戦闘術も気になる。


 まぁ、今出来る事を頑張ろう。このままだと、俺は村から出たら魔物に殺されてしまうかもしれない。魔物の強さもわからないしな。


 そんな事を考えながら棒を振り回していると──


「れぇおん、なぁにしえるの?」


 ──声をかけられる。お隣に住んでる家の女の子で、名前をアリスだ。


「いつゅも、ぼーふりまわしてるね」


 ──次に話しかけて来たのは、これまたご近所さんに住んでいる女の子でミアという。


 2人とも同い年で幼馴染というやつだ。髪の毛の色も2人とも茶色から金髪の中間ぐらいかな。


 ちなみに俺は前世と同じ黒色である。母さんの赤色もいいなと思ったけど、似たのは父さんの黒色の髪の毛だ。2人とも見た目は悪くないので将来に期待出来るはずだ! 目指せイケメンっ!



 ──おっと、返事をしなければ。


「向こうで遊んでおいで」


「しょんなの、つみゃんない。みんなとあしょぼうよ〜」


「しょうだよ〜」


 2人して俺を誘ってくる……この子達、何故か俺に懐いてきている。


 将来結婚したいだとよ! モテモテだな俺!



 あっという間に夕方になり、母さんが俺を迎えに来た。


「レオン〜、ちゃんといい子にしてたかなぁ?」


「うん、アリスとミアと一緒にお話ししたよ?」


「あらあら、女泣かせな事したらダメよ?」


「大丈夫! 仲良くしてるよ!」


 ほぼ、素振りとかしていて構ってはいないけど、よく話しかけて来てくれるから仲良くしているに違いない。


「お父さんと一緒でレオンはモテそうだし、誰かに刺されないか心配だわ……お父さん昔、何度も刺されてたし……」


 俺は母さんの言葉に頬が引きつる。


 父さん……かなり物騒な目に合ってるな。俺はそうならないように気を付けたいと思う。


 雑談していると、父さんも帰宅する。


「愛しの嫁と息子よー! 帰ったぞー!」


「エリクっ! んーっ」


 目の前でキスをする両親。


 仲睦まじいのはいい事だ。


 俺にも同じように愛情を注いでくれる。胸が暖かくなる感じがする。


 前世では親の愛情はわからなかったし、結婚は出来なかった。家族というものを今世では感じられるのが嬉しかったりする。


 爺ちゃんはいたけど────あれは特殊だと今なら流石にわかる。


 いつか、楽させたいな……そのためには、やはり、食生活から見直さなければ……。



 プリーズ栄養!


 まず、目的のための手段が必要だ。獲物を捕まえる手段が。


 この間、怪我をしたが直ぐに治った。おそらく、超回復のお陰でだろう。


 そんな簡単に死ぬ事はないだろうし、即死回避もある。あとは攻撃手段をなんとかするために、とりあえず今は基礎体力と魔力量の増大だ!





 しばらく日が経ち──


「そろそろ、村の外を見てもいい頃合いだろ」


 ──と非番の父さんが言う。


 俺は内心ガッツポーズをとった。念願の外だ!


「まだ子供なのよ? ダメよ!」


 ところが、母さんは心配だと反対するが────


「そろそろ、レオンに魔物の恐ろしさもちゃんと知ってほしいから、今回の狩りに一緒に連れて行く。何かあっても守れるだけの力があるから心配は要らない」


 この一言で母さんも黙る。 


「父さんっ! ありがとうっ! 全力で守られるよ!」


 父さんって強いの? という疑問が出てくるのだが、自警団しているし、魔物討伐してるぐらいだから強いのだろう。ピンチになったら俺の事を守ってくれるはずだ!


 これからの時期は寒さが強くなり、備蓄で凌いでいくのだが、今年は農作物が天候により不作でかなりヤバいそうだ……。


 そのために各家は協力して狩りに出かけたりしていると、奥様方情報で聞いている。


 我が家も狩りに出かけられたらいいのだが、最近頻繁にゴブリンという、緑色で子供ぐらいの大きさの魔物が村に襲ってきており、村を守る父さんは最近、肉の調達にあまり行けていない。


 ちなみにゴブリンは食えないので、害獣扱い。これがオークとかになると肉確保になるのだが、中々倒すのには骨が折れると聞いている。


 まぁ、俺は連れて行ってもらえるので文句など何もない。


 いざ行かん! 外の世界へ!






 そして、村の外までやって来ました!


 いつも、村の中でわからなかったけど────村の外は平野が広がっており、たまに木々が生えていたり、岩があったりと、閑散とした風景で、遠くには森が見えた。


 今は道というか……うん、道なんだろうな……。


 砂利道ではないが、砂が踏み固められたような感じかな? 日本にいた頃のアスファルトが懐かしい。


 そして、俺はがあったので父さんに声をかける。


「父さんは、その剣で獲物を獲れるの?」


 普通は狩りなら弓などを使うと思うのだが、父さんは剣しか持って来ていない。


「ん? レオンは俺を疑ってるのかぁ? 大丈夫、大丈夫。父さんはな、実は魔法を使えるんだ! 剣なんて護身レベルでしか使えんよ。母さん以外に誰にも言ってない秘密なんだぞぉ?」


 おー! なるほど! それならおれの安全は安心だ!


 それに攻撃魔法がすっごく見たい!


「魔法見せてーっ!」


「ふふふ、もうすぐ見れるぞ? ほら前から、ゴブリンが来たぞ。父さんの格好良い所をちゃんと見てろよ?」


 ゴブリン3匹が遠くから歩いてきていた。


「父さん、来たよっ!」


 自信満々で戦闘を開始しようとする、父さんのお手並み拝見だ。


「ほっと!」


 気の抜けた掛け声と共に、父さんの手から何かが飛び出す。


 先頭にいたゴブリンの頭を何かが貫通した……。


「ほっほっと」


 更にその後も、なんとも言えない掛け声と共にゴブリンの頭を何かが貫通する。


 これだけ、いとも容易く倒せるのに何故我が家に肉があまり食卓に並ばない?


 あんまり食べれる獲物がいないのか? それとも危険を避けて狩りをしている?



 倒す度に俺にドヤ顔をしてくるのはいいんだけど────掛け声なんとかならないだろうか?


 何度か見てると貫通した物が何かわかった────だ。



「どうだ、レオン! 父さん強いだろう?」


「父さん格好良いよ! 今の魔法なの?」


「あれは固有魔法で鎖魔法だ! 父さんしか使えないんだぞ?」


 固有魔法は詠唱がいらないのか? まさかあの気の抜けた掛け声が詠唱じゃないよな?


 そんな事より、鎖魔法か……格好良いな……。

 


 固有魔法という事は属性魔法と違って希少なんだろうけど────

 

 ──使ってみたいな……親子なんだし出来るんじゃないだろうか? 遺伝してる的な!?


 俺は生活魔法すら使えない────だが、この鎖魔法を使ってみたい事もあり、ドヤ顔の父さんはガン無視で、5年間頑張って増やした魔力を手元に集めて、鎖をイメージしながら放つ────




 ビュッ




 すると、前に突き出した手から鎖が発現する。


「父さん出来たよ! ひゃっほぉぉぉっ!」


 やった! 初魔法だ! 俺異世界に来て魔法使ったよ!


 俺は呆然とする父さんをそっちのけにしてテンションが上がった状態で鎖魔法を父さんが正気になって止めるまで連発し続けた。

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