【幸せを捕縛する!】〜恩恵により死に辛くなった俺は異世界を巡る〜
トロ
1章 〜己の力と使い方〜
第1話 プロローグ
世の中は
搾取する側、搾取される側がいて成り立っている。
勝者と敗者────まさしくその言葉が相応しいだろう。
中立だと言うやつがたまにいるが俺から言わせると────干渉しないだけ。
所詮は高みの見物を決め込んだ敗者になりたくないだけの人間だ。
何故こんな事を言っているのか?
それは俺が
日本人である俺は産まれて直ぐに、両親を交通事故で亡くしているらしい。
らしいと言うのは引き取ってくれた、唯一の身内である爺ちゃんからそう教えられたからだ。
爺ちゃんは
とりあえず言える事は普通じゃないという事だ。家には頻繁に黒服の怖そうな人がよく出入りしていた。俺には皆、優しくしてくれてたけど……。
そんな爺ちゃんも俺が10歳の時に癌で亡くなった。
最後に爺ちゃんは優しさと人の痛みのわかる人に育ってほしいと願い、それに俺は了承の意を伝えて看取った……。
散々、色々していたのに俺にはそういう方針で育ててくれていたのが今でも不思議だが。
その後は、親戚と名乗る人達が来て一緒に住む事になったが爺ちゃんの残した財産を横取りされ、虐待された俺は施設に保護された。
爺ちゃんの最後の言葉を守ろうと、小学生の時は落とし物をした人に、拾って渡そうとしたら泥棒扱いされたり────
中学生の時は虐められている女の子を庇ったら、次の日からは俺が虐められたり────
高校生の時は、その虐めが物理的な物に変わり、毎日殴られ、蹴られて青タンが絶える事はなかった……やり返す事もなく、ひたすら我慢した。
大学生の時は彼女が出来て嬉しかった。だけど、浮気をされた挙句に、最後はストーカー扱いされて警察署の厄介になった。逆に助けた女の子からストーカーの被害にもあったな。
学生時代は爺ちゃんの事が周りにバレて噂が広がったのも不味かったのだろう。
社会人になって、中小企業に就職しても────手柄は上司や同期に持っていかれ、使えないレッテルを貼られる。
残業してても無論、サービス残業だ。唯一の楽しみは帰宅後に読むラノベやゲームだった……俗に言う、オタクって奴だった。
まぁ、これぐらいの経験は一度はどれか経験してもおかしくはない事だろう。これだけ重なると不運としか言えないけど……。
そんな俺であったが、ある女性との出会いで生まれて初めて心から愛する事が出来て幸せな時期もあった。
結婚を目前に、先立たれてしまったが……。
それでも、この人生で爺ちゃんの教えは守った方だと思う。
◆◇◆◇◆
そして────
────負け組人生を振り返っている俺の目の前には神々しく光る神様らしき爺さんがいた。
なんで神様だと思ったのか?
その理由は簡単だ。
まず、光っている。普通の人は光らない。
そして────
『わし、さっきから神って言っておるじゃろ? 死んだと聞いてから、1人で物思いにふけっておらんで話を聞けぇい!』
当の本人がそう言っているのだ。きっとそうなのだろう。
というか、周りに何もないんだよ……。本当に何もないし、体が浮いている。
俺も信じたくはないが、常識的に考えてもこんな場所があるとは思えない。
夢だとしても、先程から抓ったり、顔を叩いているが、痛いだけだ。
「えっと、それで何でしたっけ?」
『やっと反応しおったか!? 1時間も待たされる気持ちを考えんか!』
そんなに時間経っていたのか。そりゃぁ怒るよな。
「すいません。そんなに怒ると脳出血で死にますよ? それで何の用ですかね?」
『神である、わしがそんな事で死ぬわけなかろう! ────今回、お主が此処に来た理由じゃが。生前に徳を積んだ若い者は転生させてやる決まりがあるからじゃ』
転生か……転生ね。うん、別にしなくていいな。特に未練なんかないしな。生きるのに疲れたわ。
「ちなみに日本に転生ですかね?」
『昔はそれも出来たのじゃが────残念ながら、剣と魔法のある異世界になる。この間の神会議で「若者は異世界に憧れている」と世論調査で出たので満場一致で決定されたのじゃ』
何、その神会議って奴……神様何人いるのさ? それに何処からの統計で、その世論調査出したのか凄い気になるわ。
「とりあえず、死因はわかりませんが。死んだ事は理解しました。そして、異世界に転生させる処置をとろうとしてることも聞きましたが────」
どうせ生きててもつまらないし辛いな。徳を積んでるなら天国行かせてくれよな……。よし、天国行きを提案しよう。
一息吐いてから再度、言葉を出す。
「────お断りします。天国行きを希望します」
『なんじゃと!? 世論調査では若者は「魔法使いたい!」「俺ツエェェェしたい!」「ハーレムほしい!」「ケモミミ最高!」「合法ロリ万歳」とか意見が大量に出ておったぞ!?』
いや、最後の奴とか犯罪臭しかしないんだが。それと、その世論調査どうやって出したんだよ!?
「天国でお願いします」
『すまぬ、無理なんじゃ……ある人の願いでお主は転生する事が決まっておるのだ』
決まってるのかよ!?
しかも、ある人の願いって誰だよ!
決定事項であるなら────せめて──
「せめて、記憶消して転生してくれませんかね?」
『それも出来ぬ。神会議で徳を積んで若者の転生は【異世界転生特典】〜記憶付き〜というキャッチフレーズで決定されておる。多少の変更は出来ても、転生を拒否する事はできん。その場合は転生特典を適当にする事になる。何人も担当しとるが、普通「チートだぁぁぁっ!」「転生だぁぁぁっ!」「合法ロリだぁぁぁっ!」って喜んでおったぞ?』
もう一度言うが神会議て何人いて、どんな奴らなんだよ?!
断られる事ぐらい考慮しとけよ!
多少の変更が出来るなら記憶消してくれよ!?
そして、その最後の合法ロリって言ってる奴は絶対、徳を積んでないだろ……。
「特典ってのを適当に決められるの嫌なんで、どんな物があるか聞いても?」
『まず、お主が行く異世界には魔物がおるのじゃ。なので、普通に転生させる場所を考えると、成人までに死ぬ確率が80%ほどになる。そのために規定で
異世界は物騒だな……死亡率80%は高すぎやしないか? 転生させる場所を考えるなら安全な場所にしてくれやしませんかね!?
剣と魔法のファンタジーに行くなら、やはり魔物は確実にいるのだろう。
恩恵ってのを5つ貰えるのなら────
『ちなに、【言語理解】【無限収納】【簡易鑑定】の3つの他に2つ選ばせてやろう』
なんだ、3つのは決まってるのね。
「じゃぁ、死にたくないので、そんなのでお願いします」
せめて、せっかくの第二の人生だ。直ぐに死ぬのだけは避けたいな。
『ふぅむ、では────
「では、それでいいです。残り一つも、死にたくないんで、神様が良さげなの選んで下さい」
『丸投げじゃのう……』
「ちなみに何で5つまでなんですか?」
『ふむ、昔に恩恵を10個以上渡しとった時期もあったんじゃが……世界を脅かす存在になったりと、パワーバランスがヤバくなったんでな。神会議で5つまでに決まったんじゃ』
「徳積んだ人を転生させたんじゃねーのかよ!?」
『まぁ、今までいい事したから、これからもするとは限らんからのぉ。……残り一つの恩恵はこれにするかの……っと言う事で、転生して来るのじゃ!』
恩恵が決まると同時に落とし穴に落とされ、意識がシェイクされる……。
死んで、この扱いは酷いな。
とても徳を積んだとは思えない……。
落とし穴って罠だよね?
──しまった!?
肝心の戦う術がない事に気付いた!
最悪、生産系で外に出ない手段もあるな……残り1つの恩恵が戦闘系か生産系である事を祈りながら意識が遠のいていった。
今度こそ────幸せになりたいな……。
そんな事を転生する時に思った……。
そして──俺が15歳の時──
──幸せになりたい──いや、ならなければならない──そう決意した事件が起こる。
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