第171話 次の目的地



パーティ会議




フェリは張り切って、声を出す。


「さぁ、この場所でやるべき事は、終わったわ・・・次の目的地を決めるわよ!」



おー・・・



パーティのテンションは低い。

無理もない、ユシア以外、『やるべき事』を知らないからである。(なんならユシアも知らないうちに水の力与えられてた)



「あのー、『ひとつ』いい?」



マジョが小さく手を挙げて発言する。



「魔王を含めた『魔王軍が大侵攻』を開始したってさ、ゆっくり侵攻してるから、王都到達まで『あと1ヶ月』ってとこかな・・・」




・え?

・・・え?




一堂は絶句して黙り込む。

マジョは続ける。


「戦力差から言って、王都は1ヶ月後に、火の海で、灰の山になる事は、ほぼ間違いないんじゃない?」


フェリは滝の様に汗をかいて焦る。

勇者は4神(火の神、水の神、木の神、風の神)の力をもらい、魔王を倒す。

そう教わって、それ以外知らない。



「なら、こんな呑気に旅してる場合じゃないな」



センシは冷たく言い放つ。

フェリとしても、その考えは当然だと思った。


『4神から力を貰えば、絶対に魔王を倒せる』その確信が無い限り、今ある戦力でどう戦うかを考えるべきだ。



「ちなみに、『木の女神』って人物は、『魔王城』で木の結晶になって幽閉されてるらしい」



マジョのすらすら出てくる情報にセンシはため息を吐く。

「そんな情報よく仕入れる事ができたもんだ・・・」

「最近、魔獣側の有能な協力者ができたからね・・・」



・・・魔王城に行くしかないか



ユシアはぼそりと呟く。

正直、怖さはある。水の神に全ての勇者が生き残れる訳ではないと言われた事が更に拍車をかける。



「私は『その案』悪くないと思うよ」



マジョは考える。


私達4人で魔王軍を迎え撃てる訳もない・・・

かと言って、このまま王都が壊滅すれば、人間側の周辺国の統率は無くなって、あとは魔王に従属するか、各個撃破されるかの二択・・・


もうほぼ詰みかけている・・・


ならば裏をかき、逆に相手の居城に攻め込むのも一手

(なんて、ボードゲームみたいに考えてるけど、実際はそうも割り切れないだろうか・・・)


マジョは、ソウリオやセンシの顔を観察する。



「私は!・・・ユシア殿について行く」



「王都で勇者の仲間にならなくていいのか?」

「ユシア殿には『大恩』がある、それを返すまでは忠義を尽くす」


ソウリオの決意は揺るぎない。



「・・・俺も行くぜ」


センシはしばらく考えてからそう宣言する。

「正直、王都が壊滅するのは、個人的にどうでもいい。ススラカと王都は距離が離れてるし、戦火は及ばないはずだ」



「・・・あともうひとつ・・・魔王城のある魔都ラクドで・・・『影魔術を使う男』の目撃情報があったってさ」



マジョはセンシの方を見ながら話す。センシは目の色を変える。


「そいつは、魔王城へ行く理由が増えたな・・・」


その眼は、ぎらぎらと殺気に満ちていた。




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