第167話 王都侵攻開始



ユシアが水の神の力を手にした頃




魔王城と周辺都市ラクドでは、魔獣達の大侵攻が今まさに始まろうとしていた。



魔王軍の精鋭が先頭をきり、

大きな魔獣の馬が引く馬車から魔王が手を振る。

割れんばかりの喝采に見送られながら、魔王軍の大軍が、ラクドを出立した。



「皆殺しだ、人間共は全員首を刎ねて殺す!!」


「美味しい肉が食べ放題だわ!」


「頭蓋骨は俺によこせ、たくさん集めて首飾りにする」



「ババアは殺しても良いが、若い女は駄目だ。ひとしきり楽しんでから殺す」


「幼い美男子も殺しては駄目だ、ひとしきり楽しんで、でで、じゅるり」


「美男子も殺しては駄目ヨォオオ・・・だが、不細工はコロス」



魔王軍の兵士達は、王都でおこなわれる一方的な虐殺が楽しみで楽しみでたまらない。



「唯一の脅威は、『勇者の存在』かな?髪の薄い偽物らしいが・・・」


がははは!!


周囲に笑いが巻き起こる。



「いや、待て、カンサイが言っていた『股間に証がある勇者』ってのも脅威だぞ」



・・・・ぷぷぷ

・・・あっはははは!!!




魔王軍の魔族達はどこまでも、上機嫌だ。


彼らには、王都中の人間を、なぶり殺し、死体の山を築く姿が、すでにある未来として見えていた。





$$$





「魔王軍が侵攻を開始した?!」



魔王軍の大軍が、ラクドを出発した報は、すぐに王都に届く。魔王軍としても隠す気も無いし、もはや隠しきれる規模でも無い。



「すぐに国民達に伝えて、避難を促さないと!!」



「・・・いや、やめておこう」




・・・は?

いやでも



「無用な混乱を招く恐れがある!」



王城の幹部達はすでに自体を処理しきれていない。

彼らにできるのは、ただただ保身のために事実を『隠蔽』する事だけだった。





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