第165話 感化される者達



ククモの呪縛




それは、ドゥモ魔術学園の魔術的な戦力を大幅に削ぐ為の呪縛・・・



例えば、馬鹿みたいに長い無駄な詠唱・・・



それをおこなわなければ、長期的に身体的に精神的に『害』を及ぼすと吹聴する。


『恐怖』を煽る。


そして、それがさも当たり前の事であるかのように、権力者の名前を借りて『捏造』し、教育に織り込む事で、念入りに刷り込んでいった。


長い時間をかけて、仕込まれたこの呪縛、ここの教員でさえ、無詠唱は危険な行為だと信じ込み疑わなかった。


まして、生徒達がその呪縛に気づくのは、不可能だ。





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竜寮の『メーガネ』は、成績優秀な生徒の一人だ。


彼は先の蜘蛛の魔獣の襲撃で、全く役に立てず、早々に退場させられた。小さな軽傷を受けただけで痛い痛いと喚き散らした。



逆に、颯爽と現れ、奴らを一掃したセンシとマジョ・・・



醜態を晒した自分達と何もかも違う。


(彼らは『選ばれた人間』なんだ、自分達とは何もかも違う)


そう言い訳して、目を逸らす事にした。




放課後、夜半過ぎ、

校舎の修練場から、音が聞こえる。


センシだ。彼は汗だくで無心に剣を振り続けている。


「なんだ、何か用か?」


メーガネは気づかれてキョドる。


「どうして鍛錬なんて、もう十分強いのに・・・」


すぐ立ち去ろうとした。だが、気づけば、センシに質問を投げかけていた。「何でもない、忘れてくれ」そう言いかけた時、センシが口を開く。



「俺もちょっと前までは、自分が十分強いと思っていた・・・」



だから、牛鬼と戦った時、死んでも仕方がないとあきらめかけた。



「あいつらは、そんな俺を嘲笑うかのように強くて・・・それに以上に貪欲にどんどん突き進んで行きやがる」


あと、常識外れだ、むしろ俺がおかしいのかって疑いたくなるくらいに、セオリーとか無視なんだよ・・・



ひとしきり、その愚痴っぽい話を聞いたあと、メーガネは、自身の宿舎に戻る。


涙が、


ぽろぽろと溢れ始めて止まらない、それ程までに自身の『情けなさ』に打ちひしがれていた。



ドゥモ魔術学園の生徒達・・・



彼らは今現在は弱いが、

『本物達』を見て、何も感じないほど、鈍感ではなかった。



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