第138話 魔王の演説



魔王は200年後、復活を果たす。




必死に暗躍し、勇者の復活を阻止せんとあらゆる方法を用いた。

なんとしても勇者は殺さなければならぬ、自分が直接赴いて、殺戮する方法が一番確実だが、


だが、


怖い・・・怖い・・・

勇者怖い・・・



いつどこで勇者に出くわすか、わからない・・・よって、部下に全てを任せた。



念には念を入れる。

マゼンダにも圧をかけ、徹底的に勇者が存在しない事を確かめさせた。


・・・もういいか

・・・もうそろそろ大丈夫か?



・・・

はぁ・・・・


ふふ

ふふふふ




いやぁあああふうううう!!




誰も居ない居室で、思わず叫び声がで漏れ出てしまう。


そして、その気分の盛り上がりのまま、

すり寄って来た商人のピンハーネとかいう男を葬り去る。



ああ・・・




やはり、やはり、自分こそが、『最強の存在』だと再認識する。



誰も、我が覇道を邪魔する事など出来はしない・・・





$$$





魔都ラクドでは、



盛大なパレードがとり行われている。巨大な太鼓の音が響き、ラッパの高い音と共に行進する。魔王軍中央の兵士達


魔王はそれを高い場所から見下ろす。


拡声魔術を使い、広場に整列した魔獣達に話すかける。



「さぁ、蹂躙の時間だ」



長く我々は、四神とその領域に住まう人間どもの土地を支配できずにいた・・・が、それも今日で終わり・・・



何故ならば!

今後勇者が生まれてくる事は無いからだ。



その証拠がこれだ・・・



魔王が後ろにある天幕を燃やすと、そこに現れたのは、緑に輝く結晶に閉じ込められた『木の女神』だった。



魔王は黒い炎の矢を宙に顕現させ、一気に『それ』に向かって撃ち落とす。稲妻が落ちるような轟音と共に地面が揺れた。


だが『それ』には傷が入っていない。



世界樹は攻め滅ぼしたが、最後の最後で奴は『結晶に、閉じこもり』おった。


まぁこんな呪物、地中深く掘って埋め、今後一切悪さができないように閉じ込めてしまえばいい。



「我々は、もう勇者は存在しないと知っている訳だが・・・」



そういえば、人間の王の城には、勇者を名乗る人物が滞在しているらしい・・・




勇者の証を手の甲にインクで書いただけの『贋物』だったそうだ。




くく

くくくくく・・・


魔王の笑いと共に周囲から、怒号の様なあざける笑いが起こる。



「偽物にすがる人間の愚かな事!」

「我々の様に、正しい情報を伝達する事もできないのだ」

「目先の恐怖と欲望でしか判断できない猿どもめ!」



盛り上がりは最高潮に達する。



そして、魔王が手を上に上げ、グッと握る。その瞬間、全員が黙り、一転、周囲が静寂に包まれる・・・魔王が最後に締めの言葉を継ごうとした瞬間



「ちょい、待ちぃ」



カンサイが魔王の立つ壇上の下に乱入する。



そして、跪き、こう述べる。



「勇者の証を持つ男は、まだ存在する」



そう魔王に進言する。




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