第136話 カンサイの賭け



魔都ラクド




魔王城下のこの都市は、高い城壁に囲まれた城塞都市である。イーズルファの様な地方都市とは異なり、整然と道が引かれ、都市の規律に従わない不純物は即刻排除される。


そこかしこに魔王の像や絵が、崇拝の対象として飾られる。魔王こそがこの都市の絶対王であり、神であった。



このラクドは今これ以上無いほどに賑わっている。



もうすぐ、魔王が人間の領土に大々的に侵攻する前の『決起会』が催されるからだった。




$$$




魔王軍、イーズルファ担当幹部のカンサイは、既にラクドに侵入していた。


深くフードを被り、目立たない様に身を隠す。



カンサイは考える。



どうやって、魔王様に勇者の情報を伝えるか?

今の自分の身分は、担当地区を放棄し、徴兵の任務も失敗した裏切り者だ。


迂闊に魔王城に近づけば、捕縛されて終わる。


手紙をしたためる案も却下だ。そんな紙で書かれた裏の取れない情報は雑音でしかない。



・・・



誰か魔王城内部の信頼できる側近に話を通す。


だが、魔王の側近達は、それぞれが腹黒い奴らの集まり・・・到底信頼できなう。



結論、俺自身が魔王様に直接謁見するしか方法が無い。



・・・はぁはぁ



想像するだけで息が上がる。



これは『賭け』だ。



選択肢を誤れば、

確実に殺される。



だが、だが、これはチャンスでもある。


勇者の情報がここまで出回っていないという事は、マゼンダとフドゥが『裏切っている』という証拠。


奴らを蹴落とし、自分が出世できる、またとないチャンス。


そして、あの股間に勇者の証を持つ男、奴の潜在能力の高さは侮れない。


奴はまだまだ弱い。今魔王軍全力を持って潰せれば、確実に排除できる。



この情報は値千金のはずなんだ。



カンサイは覚悟を決め、じっと機を伺う。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る