第127話 過剰すぎる戦力
小雨の降る中、馬車の一群は、ひっそりと王都を出発する。
秘匿された一団は、各々が、深くローブを被り姿を隠している。
「一体何処へ向かうんだ?」
大半の者には、行き先すら伝えられていないようだ。
馬車の最後尾の男は、首を傾げる。
だが、不満は無い。なぜなら、この馬車の護衛の仕事の見返りが、とんでもなく破格であるからだ。
「さぞ、ご大層な商談なのだろうな」
この最後尾の馬車だけでも、見知った顔がちらほら、皆、かなり腕の立つ魔獣討伐師達だ。
「そうだな、ここに居る俺達は予備戦力だろうけど」
誰かの挑発ともとれる発言に、怒る者も居た・・・が、周りの圧に負け黙る。
「先頭の馬車に『ジュモ様』が乗り込んでいるのを見た」
「王都十天衆のジュモだと?」
ざわつく周囲、
ジュモと言えば、魔術の扱いならば、当代最強とさえ噂される魔女である。彼女はお金が大好きで、相当な額を準備しなければ会う事すら難しいと聞く。
「あとは、人間とは思えない様なデカい図体の男、あれも十天衆の一人、『怪力パウワ』だ」
十天衆の中でも『最高戦力』と噂される二人が護衛する一団
(一体、何処へ向かっているんだ?)
誰もが、静かに囁きながら、この異様な一団の行き先を考える・・・が、全ては推測の域を出ない。
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先頭の馬車の中、
ジュモはローブを外し、窓の外に顔を出す。
「はぁ・・・陰気な空だ・・・嫌になるねぇ・・・そう思わないかい?モロク」
少し高齢な女性は、ため息混じりに、
向かいに座るフードの老人に話しかける。
「・・・そう・・・ですな」
これまた陰気な返事に、ジュモはもう一度ため息をつく。
「あんたと、こんな場所でもう一度会うとは思わなかったよ、クソジジイ・・・十天衆の席は、弟子の『センシ』に譲って、引退したんじゃなかったのかい?」
『センシ』という名にぴくりと反応する素振りから、少し黙る。
「・・・隠居生活も・・・退屈だった・・・それだけの事ですよ」
モロクは、そう呟き、にたりと笑う。
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