第128話 魔王との商談



魔王領と王都の境にある山間の廃墟・・・




そこがピンハーネ一行の目的地であり、魔王との会談を設けた場所だった。



そこの大きな教会の講堂にぽつんと1人、椅子に腰掛ける人物が居た。


ツノの生えたただの背の高い男にしか見えないが、その佇まいだけでなんともいいしれない威圧感がある。


(あれが、魔王・・・)


ピンハーネの方も腕の立つ最低限の手勢で臨み、残りの手勢は馬車で待たせてある。



「畏まらずとも良い、ここへは『我1人』で来た、無礼講といこうではないか」



魔王は、こちらの緊張を察して、笑顔を向けてそう話す。



ここには、魔王一人しか居ない・・・



対するこちらの手勢は、十天衆の2名を含め、多勢に無勢・・・


(ここで魔王を『殺して』しまえば・・・英雄だ)


そんな思考が過るが、


息を吐き、おもむろに、懐からバラの花を取り出し、鼻に押し当てて吸う。


すーはー、すーはー



いつものルーティンを終え、にこりと笑い、ピンハーネは落ち着きを取り戻す。





$$$





「改めまして、私、ピンハーーーーーーネと申します♪」


高音の歌声、ビブラートを交えた自己紹介は、より相手に自分の印象を植え付けるためのピンハーネの商売テクである。


すかさず、指をパチンと鳴らす。


背後から、踊り子と小規模楽団のコーラスが始まる。


さらに最高級のワインとチーズと料理を次々振る舞っていく。



『初手接待』・・・



これはピンハーネの商売の鉄則だ。


魔王も、楽団に手を叩いて喜んでいるし、ワインの味も気に入った様だ。



これは・・・『勝ちパターン』入ったな・・・ピンハーネは、にやりと笑う。



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