第126話 ピンハーネ大作戦



王都の一等地に居を構える、ナカヌキ商会のトップのピンハーネ




彼の朝は早い。

早朝から、湯浴みを済ませて、バスローブなる衣装に身を包む。


窓を開け、その身に朝の風を浴び、庭の花畑から一輪のバラを摘んで、その可憐な花弁の匂いを嗅ぐ。



スゥーーー



鼻腔をくすぐる香り



うーんSweet♡




「朝の、この『ルーティイン』は大事にしてるかな?」



これは彼の出版するハウツー本に必ず書かれており、ピンハーネファンの通称『ピンハネスト』達の常識である。



インタビュワーは、彼の一挙手一投足にうっとりしながら、質問を続ける。



「近々、何か『ビックプロジェクト』を立ち上げるという噂を伺いましたが、何か我々に教えていただける事はありますでしょうか?」



「・・・ふむ」


椅子に腰掛けながら、足を組み、一考する。



「今、言える事は何も無い・・・かな」



少し気落ちする彼を気遣う様に言葉を続ける。



「ただ、このプロジェクトは、今までの『歴史全てを塗り替える』ほど、アンヴェリーバブル!!な物であると断言しよう」



ピンハーネの自信に満ちた顔に恍惚な表情を浮かべ。「ご続報期待しています」と残しその場を立ち去る。



部屋で一人ピンハーネは、悩ましげなポージングで、ふっと息を漏らす。



・・・



王国の歴史、それは勇者と魔王の争いの歴史だ。



今現在、私ののナカヌキによる財力は、過去の豪商達とは比較にならないほど抜きに出ている!


それは即ち、経済界と王国、聖教会を裏から完全に支配していると言っても過言ではない。



そんな私が、次に着眼したのは、『魔王』だった。



魔王にコネを作る事ができれば、全世界を手中に収める事も夢物語ではなくなる。


「ふふ」


秘密裏に着実に、準備を進めてきた。



彼にとって、

その未来は、既に実現した様にすら、錯覚していた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る