第125話 戦闘斧愛好会の昂り



「誰が金出すか!ボケェ!」




オノノンの提案で急遽、招集された戦闘斧愛好会のメンバーは、オノノンの提案を鼻で笑い、ヤジを飛ばす。


どうして水知らずの男の鎧の為に出資しなければならないのか、意味が分からない。



「この戦闘斧愛好会って集まりも終わりにしようぜ!」



戦闘斧なんて所詮、時代遅れのマイナー武器、射程も短いし、野蛮なイメージ持たれてるし、結局・・・ダサいんだよッ!


その言葉に、全員、顔を上げない。心のどこかでそれを否定しきれないからだ。



オノノンは、それでも静かに全員に語る。


「だが、あの男・・・ユシアは、『斧・竜巻』を撃ってみせたぞ」




・・・は?




斧・竜巻って、あの伝説の斧の振りだけで風を巻き起こすっていう技かよ?


周囲がざわつく。


「嘘だ!」

「出鱈目を言うな!」


飛び交う怒声の中、さらに一人が立ち上がり、声を上げる。



「嘘じゃ無い!!」



アイダ村の男だった。

「俺は、『斧・竜巻』を直接見た訳じゃあ無いが・・・『あの男』であろうことは、容易に想像がつく」



・・・あの男は・・・

とてつもない『オノラ』を放っていた・・・



『オノラ』とは、斧を愛する者にだけ見えるオーラの事で、熟練者はそのオーラを見るだけで、どれだけ斧を愛して鍛え上げているか知る事ができる。



奴が、アイダ村に来た時、斧を使うと聞いたから、冷やかしに見に行った・・・


初めて奴の背中を見ただけで・・・全身の毛が逆立つ程の圧力を感じた。



(なんて・・・鍛え上げ極限まで研ぎ澄まされたオノラ・・・)



あまりの美しさに、その場で腰を抜かし、失禁してしまう程だった。


その話に呼応するかのようにまた一人立ち上がる。


「俺も!俺もそいつを見かけた事がある」


圧倒される程の『オノラ』の中に少しだけ滲み出る・・・『悲しみ』の感情・・・



「わかる!!」



奴のオノラには、強いだけじゃなく、心の中をぐっと掴まれるような哀愁を感じるよなぁ!ぐっとくるというか、キュンとくるというか・・・



全員がざわめきだす。

「どこにいるんだその素晴らしい男は」

「アイダ村を救った英雄でもあるらしい」

「一度で良いから見てみたい!」


端に座っていた老人は、ひっそりと涙を流す。

(終わりかけたと思っていた・・・戦闘斧じゃったが・・・ようやく・・・光が・・・)



「聞いてくれ!・・・俺はこの『戦闘斧界隈の勇者』に鎧を作ってやりたいと思う、誰か否定する者はいるか?」



「無い!」

「作ってやってくれ」


「我ら戦闘斧愛好会は、ユシアを全力でバックアップするぞ」


「おおーー!!」

「戦闘斧、最強!」

「戦闘斧、最高!」



我んばかりの喝采が講堂に響き渡るのだった。




$$$




・・・という事があったんだ。


オノノンの説明にアーマは生返事で応える。

(正直途中から、ついていけなくなったが)



鎧の依頼料は、それでも、紙の鎧のそれより、数十倍は高い。しかもゴテゴテした飾り付けも必要ない。


アーマは、少し息をはいて、

オノノンに問いかける。


「なぁ、オノノン、お前は、そいつの事、大切か?」


「当たり前だ、あいつの身代わりなら死んだって悔いは無い」



・・・なら、『本気で』鎧を作んなくっちゃ、な・・・



アーマはがっちり握手を酌み交わし、その仕事を受ける事にした。



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