第69話 隠し事はお互い様
影魔術師は普段、実力の半分も出さない。
『昼間に魔術が大幅に弱体化する』その弱点を隠すためだ。どんなに信頼できる仲間に対してもそれは同じ、そう師匠に教えられた。
だが、単独で敵を殺しきれると確信した時は別だ、全力で速やかに敵を処理する。
影が鴉達の残骸を喰らっている間、センシは岩場に腰を落とす。
この隠し事は、戦闘において重要だ。命を預ける仲間に対し、ある意味、裏切りと取れなくもない。
・・・まぁいいか
所詮あいつらは即席のパーティ、そこまで入れ込む必要もない。
それにあいつらの方だって色々抱えてそうだしな
特にユシアの方、妖精とごちゃごちゃと何か隠してる。
詮索する気は全くない・・・
どうせ『下らない隠し事』だろうしな
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朝、ユシアは、宿を出て気晴らしに当たりを散歩する。所々黒い羽根が数枚落ちている。
(昨日こんなのあったっけ?)
ふと広場の方に目をやると、村の子供たちが必死に棒切れを振っているのが目についた。あれは俺の真似だろうか・・・
気づかれないように立ち去ろうとしたが、枝を踏んでしまい、はっと目が合う。
昨日握手を求めてきた子供もいる。子供達の戸惑い顔に、俺も困る。なんて声をかけるべきか、
「斧なんて武器にしない方が良いよ」とか「俺の真似なんて、とんでもない」とかそんな後ろ向きの台詞を飲み込んで、
「斧を使うんだったら、もっと こう どっしり腰を落とした方が・・・」
なぜか斧の使い方指導をしていた。
子供達はパァッと笑顔になって俺の方に集まってくる。
「もっと教えて勇者様!」
「流石、勇者様!!」
「・・・だから、その呼び方はやめろぉ」
ユシアは必死で抵抗した。
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