第62話 フドゥは動かない




石魔人のフドゥ






彼は、マゼンダ総司祭に次ぐ、

クロ―ベルン王国の王都付近担当のナンバー2である。


王都で暗躍するマゼンダに代わって、直接魔獣の指揮をとっている。



ススラカの街に牛鬼を差し向けたり、月見の塔にギヤルとドロロを派遣した。





『熟考』する事・・・





これがフドゥの強みだ、

他の短絡的な魔獣や魔人とは一線を画す。




牛鬼が敗戦し、撤退してきた時も彼は取り乱さない。

焦り慌てる事が最も危険な行為であると理解しているからだ。



(え、どういう事?)

牛鬼によるセンシ抹殺とススラカの街の征服計画は完璧だったはず

内心頭が混乱していたが顔に出さない。



落ち着いて・・・とにかく落ち着いて、あくまで冷静に!・・・状況を聞く。




チー牛を超えるチー牛にやられた?





チー牛を超えるチー牛・・・・・・だと!?


そもそも、チー牛ってなんだよ?

という疑問が湧いたが、

上の立場に立つ自分が知らないわけにはいかない・・・と思いわかったふりをして頷く。





マゼンダ様への報告は・・・待った方がいいな





フドゥは、そう熟考し、結論を出す。

所詮、たかが田舎町への制圧失敗、たいした話ではない。


近々、もっと大きな案件、勇者の仲間選抜への強襲が控えている。

この成功報告と同時にこそっと挙げてしまおう。





・・・





そして、月見の塔を襲撃した、ギヤルとドロロの敗走





いやいやいやいや・・・





内心頭が爆発しそうだが、

部下の手前なんとか平静を装う。




マゼンダ様への報告は・・・できないに決まっている。




前の失態を報告していない事も含めて

叱責を受ける事は必至


いやそんなものでは済まない・・・間違いなく、殺される




・・・





フドゥは動かない。





最近・・・天変地異が起きて、何もかも有耶無耶にならないかな?

と切に願っている。



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