第60話 マゼンダ総司祭のため息




勇者の仲間選抜会の結果・・・





聖教会は何とか隠蔽しようと努めたが

その噂は瞬く間に王都に広まった。




月見の塔・・・




勇者の仲間候補達は、皆、トチ狂った様に『踊り』を踊っていたらしい。



その荒々しさたるや、まるで獣、いや、悪魔のごとし!



これも皆魔王の仕業に違いないと皆口々に噂する。

勇者という存在に安堵したのもつかの間

魔王という存在の恐怖を改めて実感したのだった。





・・・





マゼンダ総司祭は執務室の机で頬杖をつきながら

ため息をつく。




(いや・・・それ・・・魔王軍の仕業じゃねーし)




なんで魔王軍がやった事になってんの?

むしろ自分の方が怖かったわ、狂った様に踊り見せつけられて、怖かったわ!



血圧が上がるのを感じる。




ふーふー・・・一旦落ち着こう。




万が一、いや、億が一

『魔王様がやった』という可能性もあるのだろうか?





「魔王様!流石です・・・勇者の仲間候補を魔術で操り、あのような余興を・・・見て下さい愚民どもは、恐怖に震えておりまするぞ!」





・・・

あー流石に・・・『ない』かな?


以前の報告でも、やらかしている から

もう流石に地雷は踏めない。

次こそ、殺される、確実に



そもそも、あの勇者の証を持つ者が現れるというお告げがあった村『トールツリー』は『人面樹』を派遣して、全員皆殺しにしたはずなのだ。



わざわざ、リスクを冒して

本人たちに事実確認を取ったから間違いない。




・・・




「ご苦労だった、人面樹達よ・・・あのような辺境の寒村・・・お前たちの圧倒的な力を持ってすれば、滅ぼすのは容易かったろ、はは」





「・・・・・・っす」




人面樹達は下を向いて黙り込む。





ん?


元気無いな

以前は、うるさいぐらいヒャッハーしてたのに




「そういえば・・・人面樹達・・・なんか『数』減ってない?」




その何気ない指摘に、

一斉にビクつく人面樹達



「はぁ?そんな事ねーっすよ?・・・はは、何言ってんスか?・・・気のせいっすよ気のせい!」




・・・




今思い出してみると

歯切れの悪い返事しか

返ってこなかった気がする。




いや、やはり、トールツリーは滅びたはずだ。

そういえば、聖教会の補修工事に来ていた者たちが噂をしていた。



「トールツリーから入荷するはずの高級木材がさー、さっぱり入荷しなくなったんだよねー」



確かに言っていた。

これはつまり、トールツリーが滅びたという事に違いない。


くくく


マゼンダ総司祭は気を取り直した。

そして、机から立ち上がり、部屋を出て行く。





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