第59話 マジョの強硬策




ベットで狸寝入りをしている間、マジョは考える。





しばらく休んで、頭は冷えて、極めて冷静になる。


扉を壊して着替えを覗く。

今にして思えば、なんと消極的な『ぬるい手段』だったんだろう。


仮面部隊は迅速果断にして冷徹であらねばならない。


今まで、殺しすら、眉一つ動かさず、実行してきたではないか。




次の手は、シンプルに分かり易くいこう。




要は服で覆われている相手の裸を目視すればいいのだ。

その障害となるモノは、ズボンでありパンツだ。



ユシアに接近してその二つを瞬時に脱がす・・・いやまだ ぬるい・・・いっそのこと『確認したい部分だけを破り捨てて』しまえばいい。



布2枚程度、私の力からすれば、紙切れ同然

きっと相手は、あまりの早業に、破かれた事すら気づけない。


(無論、余計なモノまで傷つけないように、多少の配慮はするものとする)






$$$






夕刻、


宿の廊下で、ユシアとすれ違う。

おあつらえ向きな状況・・・



マジョは長い袖の中の右手をゴキリと鳴らす。



マジョは手を挙げて

先に通るように促す。


「ああ、悪い」


完全に油断しきっている。



マジョは待つ。

一歩、二歩、ユシアが自分の真横を通り過ぎる瞬間・・・




(今!)





目にも留まらぬ早業で、ユシアの股間に手を伸ばし、そのたった2枚の布を掴・・・


パンッ!!


間一髪、間にユシアの手が入り、

それを防がれる。



(え?何何?何が起きたの)




マジョは心の中で舌打ちをする。

無意識に防がれた。

この男、明らかに戦闘慣れしていない風だったはず、

いや、もしくはそれは演技で騙されていたのか?


マジョはユシアの方に向きなおり臨戦態勢を取る。


(武器を持っていない今なら、簡単に狩れる)





「マジョ殿!!!」




後ろからソウリオの声

しまった、仲間が戻ってきたのか




「マジョ殿の・・・ハレンチ!セクハラ!!」




(は?)



予想外の言葉にマジョは足を止める。


「いくら肉食系だからって、こんな廊下で、男性の股間を触ろうとするなんて! 一体何を考えているんだ!」


顔を真っ赤にしながらソウリオは続ける。


「そういう事は人の目のない部屋の中で、いや、聖教会の殉教者の立場としては、夫婦になってからだと思うんだが、本当にビッチすぎる・・・うう・・・私がそういう事に疎いだけかもしれないけれども!」




(斜め上の方向に誤解されている・・・いや、私もまだそんな経験ないんだけど・・・)




戸惑うユシアの顔と

必死に叫ぶソウリオの顔を見て


マジョはふーーと大きなため息をつく。



(まぁいいや)



なんだか馬鹿らしくなってきたので

のんびり確認する方向にシフトする事にした。





一方、ユシアは





(え・・・これってセクハラだったの?)


ああ、俺も田舎出身だから、

こういう時の対処がわからない・・・ああ・・・ああ


ユシアはユシアで

勇者の証関連の疑いが、すっかり頭の中から消え失せていた。



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