第51話 斧を呼ぶ声



月見の塔中層





土人形は壊されても

時間が経つと再生する。

よって、いくら倒しても数は減らず、どんどん追い詰められていく。



センシの魔力探知によると

土人形を操る敵はひとりで、膨大な魔力を所持している。




(こちらの情報をきっちり把握していることから、このフロアのどこかに居るのは確実、おそらく土人形のどれかの中に隠れているんだろうが・・・)





「こいつ、隠れるのが、かなり上手いわね」

マジョがぼそりと呟く。

彼女は塔の廊下で寝そべっていた所をソウリオに保護され、

現在引きずられながら逃げ回っている。



(ヤバいな・・・相当魔力を削られてきた・・・このまま寝技に持ち込まれたらジリ陣だ)




「どうするの、どうするの、ヤバいわよ」

慌てるフェリ

センシの魔力もあと少し

マジョは体力ギレ


ソウリオは元気だが、槍でダメージを与えられない。




ユシアは・・・まだまだ全然体力があり余っていた。




木こり時代、一日10時間は木を切り続けていたユシア


そのブラック環境に体が慣れきってしまったせいか

スロースターターとなり調子が出るまでに時間がむしろかかるほどだ。

塔を登り始めて3時間ほど、まだまだ序の口だった。




だが、




「センシ・・・斧・・・斧のストックがもう無いんだが!!」



先ほどの戦闘で斧をどんどん使い潰し、

あと一本しかなくなっていた。



「はぁ?」




ユシアは焦る。

(斧、どこかで『斧』を補給できないだろうか!)







$$$







!?





オノノンは、はっと目を覚ます。


「オノノンさん、気が付いたッスか・・・あの、鍛冶場で気絶するのやめてくださいよ、危ないっすよ?」


鍛冶場の新入りが呆れながらオノノンさんに言葉をかける。



だが、オノノンは聞く耳持たず

無心で自分の仕上げた斧を求めて這いずる。

・・・斧は無事だ。

しっかり仕上がっている、最後の方は意識が無かったが、無意識にここまでやっていたのか。


中々の仕上がりだ。



最高とまではいかないが、今できる限りの渾身の作品と言える。




ぽろりと一筋の涙がこぼれる。

いや、泣いてばかりもいられない。



そうだ、今目覚めたのは、確かに・・・聞こえたんだ。





「斧を・・・『斧を呼ぶ声』が聞こえる!!」






「は?」



「待ってろ!!、今行くぞ!!!」


オノノンは工房の鍛冶屋たちの制止を力任せに振り切って

全力疾走で走って行った。







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