第44話 月見の塔の攻略
勇者の仲間選抜会・・・
それは世界の運命を決めるイベントであることは間違いない。
女神の宣託を受けた勇者がこの時代に顕現した今
残る憂慮は、勇者の助けになりうる仲間を間違いなく選べるかどうかだけなのである。
王城の広場で王がバルコニーから
勇者選抜候補に激励の言葉を送る。
勇者の仲間の選抜は一日後、
王都の北の外れにある『月見の塔』でおこなわれる。
ルールはシンプルで、
最上階に辿り着き、宝を手に入れた上位3名を勇者の仲間として認めるというモノだ。
王がバルコニーから去った後、
ユシアはきょろきょろと周りを見渡す。
(あー、みんな強そうだな・・・俺みたいな田舎者がここに居ていいんだろうか)
なんて思考が頭をよぎる。
「よぉー!センシじゃねーか!!」
身長2mもあろうかという重武装の大男がのっしのっしと近づいてくる。
彼の名前は『デカイ』
魔獣討伐士としてはかなりの腕で、十天衆入りも噂されるほどだったが
センシに席を奪われたらしい。
という情報を取り巻きが懇切丁寧に教えてくれた。
「?」
センシは覚えてい無さそうだ。
ユシアはセンシの無頓着さに同情さえ覚える。
「それにしても、なんだ?、『横の弱そうな奴』は、まさかお前の新しい仲間か?くく」
デカイは矛先を俺に変える。
今度の勇者の仲間選抜は、仲間と協力しても問題ないルールだ。
「お前の影魔術がいかに優れていようと、仲間の差で負けるかもなぁ、ははは」
などと威張り散らして去っていく。
まぁ俺としては自分は強いなんて威張る気も毛頭ないが
「安心しろ、お前はあいつより十分強いさ」
「ぐ」
不意のセンシの言葉にユシアはびっくりする。
(く・・・こいつ真顔でそんな事言うなんて、イケメンかよ)
むしろユシアはセンシのカッコよさに嫉妬の念を覚えた。
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皆が解散しかけた辺りで
背中に柔らかい感触と当時に
耳元から声が聞こえる。
「ユシア、久しぶり」
鬼の面を付けた人物が至近距離で囁いていた。
驚いて振り向く。
と彼女は音もなく後ろに跳んで距離を取る。
「マジョ!」
そして、ぺこりとお辞儀をする。
この間、空腹で倒れそうだった所を助けてもらった事に、改めてお礼を言いたいらしい。
「あー、お礼なんて全然」
ユシアは相変わらずテンパっている。
「ところで・・・横の彼は・・・どうして私をずっと睨んでくるの?」
横でセンシの顔つきが酷い事になっている。
今にも戦わんばかりの顔だ。
「センシ、マジョは敵じゃないぞ、この間ススラカの街の大岩を壊してくれた恩人だし」
ユシアが紹介してもなお
センシの警戒は緩まない。
「私も、このイベントに参加するためにロスト・ロイスから来たの、お互い頑張りましょうね」
そう言うと
マジョは音もなくふらりと居なくなってしまった。
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