第45話 後ろから付いてくるソウリオ



月見の塔のは王都の外壁からかなり離れた距離にある。





古代遺跡であるそれは20階層以上もある巨大な建造物であり

以前は物見に使われていたが

今は放棄されており、中は魔獣がはびこっている。



勇者の仲間選抜開始から一時間

ユシアとセンシはまだ低層をうろうろしていた。


先頭集団はとっくにもっと先に進んでいる。




「センシ、急がなくていいのか?」




センシは「問題ない」と返して焦るユシアをなだめる。


センシは考える。

もし魔王軍の目的が・・・

ここに集まった選抜候補の始末だとして、どこに刺客を送り込むか?


塔の上層?


いや、せっかくの好機だ、

しっかり皆殺しにするためには、塔の下層から逃げ場のない上層に追い込んでいくのが手っ取り早い。


ゆえに、塔の下層でしっかり追撃準備をした方が賢明だ。




「そうだぞ、センシ殿、もっと急がないと、勇者様の仲間になれない!」




後ろからもう一人の女の声

ユシア曰く、聖教会の聖騎士のひとりらしい。



「なんだ?お前は」




「私は『ソウリオ』という者だ、さっき自己紹介しただろ」


確かにそれはさっき聞いたが、聞きたいのはなぜ俺たちに付いてくるかという事なんだが・・・





「私は聖教会の槍術にも長けているし、回復術だってかなりのレベルなんだ、役に立つぞ」





センシはソウリオの言葉が全く信用できないという顔で彼女を見る。

ソウリオは半泣きになっている。


「いいだろ、センシ、回復術できる味方が居る方が」

「そうよそうよ、了見の狭い男ねー全く」



回復術師は貴重だ。

その人的価値はどんな金貨よりも重いとされ、

野良の回復術師ではなく、聖教会というブランド付で戦闘もこなせる回復術師なんてそうそう居ない。


魔獣との戦闘でも真っ先に標的にされることからも

こんなイベントに参加させる必要なんてなく

補充要因として大切にされるはずなんだが・・・




「お前・・・何か隠しているだろ」




センシの睨みに

ソウリオは滝の様な冷や汗をかいている。



「全然、何も隠してない、隠してないぞ」



ソウリオは誤魔化しつつ、ユシアのフェリの背中に隠れるのだった。




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