第22話 元・木こりの乱入
ユシアは、逃げ惑う人々の流れに逆らって走る。
なんとなく、未来が見えた。
街を命がけで守ろうとして死んだ自慢の息子の亡骸に
寄り添って、泣き崩れる、バートさんとセントさんの様子だ。
・・・
そんな様子は、
容易にリアルに想像できる。
だが、そんな未来は、許されていいはずがないんだよ
ユシアは走る。
斧を持つ手に力が入る。
「ユシア、前、壁!壁!、正門閉ざされてるけど、どうするの?」
後ろからフェリが大声を上げる。
このくらいの壁なら・・・
斧の刃の角を壁に引っかけて登れる。
木こり時代は、良く斧を使って木登りして、木の実を採ったり 魔獣を やり過ごしたりしてたっけ
ユシアは速度を落とさず、そのまま壁を駆け上がる。
そして、城壁の外、倒れているセンシと大きな魔獣の間に飛び降りる。
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上から落ちてきた突然の異物に
周りの理解が追い付かず誰もが足を止める。
ちらりとセンシの方を見る。
まだ息がありそうだ。
ふっと胸をなでおろす。
「何やってんだ、お前!」
・・・えーっと
「この間、スライムに助けてもらった、借りを返そうかなと」
は?
「馬鹿か!早く逃げろ!」
ユシアは言う事を聞かず、周りを見る。
魔獣に三方囲まれている。
センシは怪我をしているっぽい、
抱えて走るのは・・・無理だな
戦うしかない・・・か
(ここは気合いの入れ所だ、あっさりやられたら、ただの 足手まとい だ)
こんな絶望的な状況なのに
自分でも自然と落ち着いているのがわかった。
きっと、『斧』を持っているからかもしれない。
この先端にズシリとくる重み
ああ、手に馴染む~、なんだか安心感がある。
一時期失っていた手足が、戻ってきたようにさえ感じる。
周りに居る魔獣たちを・・・
少し見方を変えて・・・『木』だと思えないだろうか
多少枝ぶりが違うだけ
そうだな・・・
そう考えると・・・
魔獣討伐も、森林伐採も、大きな違いなんてない。
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