第12話 マゼンダ司祭の高笑い



勇者の証を持つ勇者の再来と街への到着に、王都は湧く。





そんな中、

王都、聖教会、最高司教のマゼンダは

落ち着かない様子で、自室をうろつく。



(もうすぐ・・・もうすぐだ・・・もうすぐ、私の宿願が叶う)



腕の肉に仕込んだ、毒ナイフ

これで油断した勇者を一刺しに殺すのだ。



仕込みに何十年もの歳月を費やした。


マゼンダは魔王直属の魔族だ。

聖教会に潜り込むために調査を重ね、人間のふりをして、日々を過ごす。

毎日毎日、餌共が歩く姿を眺めながらずっと自制をしてきた。




それもこの日のため・・・今日、勇者を殺すのだ。






$$$







鳴り響く鐘の音

民衆の歓声・・・



マゼンダ司祭は

大聖堂でやうやうしく勇者を迎え入れる。



奴は、誇らしげに手の甲の勇者の証を示しながら目の前に立っている。


抑えろ、まだ、殺気は抑えるんだ。

油断しきった所を一撃で仕留めないと意味がないのだから・・・




顔を上げる。

憎くて憎くてたまらない勇者が、ついにその眼に映す。





・・・





一目見た瞬間、何かの間違いかと思った。




だが、周りの人間どもは彼が勇者だと讃えている。


く・・・


盛大に吹き出しそうになるのを必死にこらえる。




これが勇者・・・だと・・・




この・・・『腕のインクの落書きを自慢げに見せてくるガキ』・・・が勇者だと?





馬鹿だ!なんて人間は阿呆なんだ!




マゼンダは、涙を流す。

そして、大げさに両手をあげて叫ぶ。




「なんと・・・なんと・・・素晴らしい、これぞ、本物の勇者の証!」





声と共にさらに湧き上がる喝采


その馬鹿な人間どもの姿を横目に見つつ、にたりと笑う。




(女神の聖域が堕ちるのも時間の問題・・・魔王様・・・あなたの覇道を妨げる障害はもう存在しません)





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