Act.1-7 叡智~Odysseus~

神聖戦士ヘラクレス

Act.1-7 叡智〜Odysseus〜

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「俺達以外の戦士、『エース』・・・」


勇輝は自分以外の戦士が存在しているという事実に衝撃を受け、思わずその名が口から零れた。アスカは勇輝を見てコクリと頷く。


「エースは、君達と同じような形の黒い衣装を身に纏っていて、怪物が現れれば稲妻の如くどこからともなく瞬時に現れては去っていく・・・。そんな感じの戦士だったよ」


アスカは自分が見たままのエースの姿を、懐かしそうに訥々と語った。勇輝達はアスカの話を聞き、漠然とながらもその姿を頭の中で思い描いた。

しかし、アスカから語られた情報はそう多くなく、ますますその正体に興味が湧いてしまう。


「アスカはエースの正体を知っているのか?」


「・・・いや、ほとんど分かりません。戦士の存在こそ知っていますが、まだまだ自分の中でも謎だらけです」


アスカはそう言うと、話題を持ちかけたのにも関わらずあまり詳しく語れない自分に情けないと感じ、申し訳なさそうに苦笑いした。

アスカの話を一通り聞いて、どうにかして正体を知れないものかと皆がうーんと考え込み始めた。すると、譲治がハッと何か思いついたようでアスカに迫った。


「でも正体を知っていなくても、俺達と同じで怪物とかタイタン族と戦っているなら会えないことはないだろ?なあアスカ、エースってどこら辺に現れてたんだ?」


「うーん、僕がエースと会っていたのはアメリカにいた頃だったからなあ・・・」


「「えっ!?」」


「アメリカ」という言葉に譲治と碧は驚いた。

今まで都合よく周辺だけで戦士が集まっていたため、てっきりエースを含め戦士は日本国内にいるものだと思っていたのだ。


((あっ、そうだ。二人はアスカ君が今までアメリカにいたこと聞いてなかったんだ・・・))


事前にアスカがアメリカ出身であることをを聞いていて自然にその言葉を流していた勇輝とルカは、横目でチラッと二人の動揺を見て内心でそう呟いた。


「じゃあ、エースとはアメリカまで行かないと会えないってことですか!?せっかく一緒に戦ってくれる仲間が増えると思ったのになあ・・・」


「・・・いや。碧、まだ可能性はあるぞ。同じ戦士であれば、アテナ様を通じて接触できるかもしれない」


「アテナ様って・・・」


ミネルヴァが言った「アテナ様」に聞き覚えがあった勇輝はそれが何だったかを思い出し、ガッテンと言わんばかりに手をポンッと叩く。


「ああっ!前にルカが言ってたな。ミネルヴァ様の・・・上司だっけ?」


勇輝はニコニコしてそう言ったが、それとは対照的にミネルヴァは呆れているとも、少々イライラしているとも取れる顔をして頭に片手をやり大きな溜め息をついた。


「・・・勇輝。あながち、間違いではないが・・・」


ミネルヴァの機嫌を察してマズいと思ったルカは、勇輝の頭上にうつ伏せになって乗っかるとかなり焦った表情で片手で勇輝の額をベシベシと叩いた。


「ちょっと勇輝!アテナ様はこれまで多くの戦士を勝利に導いた戦いの神様なんだ!!ちょっとは口を慎んで!!!」


「イテテテッ!ごめん、ごめんてばっ!!」


「・・・はあ。とりあえずアテナ様とコンタクトを取ることにしよう」


ミネルヴァは二人のやり取りを見てまた溜め息が出てしまったが、すぐに気持ちを切り替えるためにコホンッと咳払いし、皆の方を向き直す。


「いろいろ準備や話も長引くかもしれないからな、交信は後日にしよう。皆の都合のいい日時を聞いて日取りを決めるから、その時にまたパルテノンに集合してくれ。とりあえず今日は・・・」


ミネルヴァは少し息を溜めると、真剣なトーンから打って変わって明るい声でにこやかに声を張った。


「お菓子でも食べていけ!」


ミネルヴァの言葉にルカがいち早く反応し、途端に上機嫌になる。


「あっ、そうだ忘れてた!みんな早く早く、先行っちゃうよ!!」


ルカは咄嗟に飛ぶスピードをぐんっと上げて、他の皆を置いて一目散にパルテノンへと直行した。


「ルカ、そんなに急がなくてもたくさんあるのに・・・」


「ははっ!こりゃあ、よっぽど楽しみだったんだろうな〜!」


ルカのあまりの行動の速さにミネルヴァは少し戸惑いを隠せないでいたが、他の四人はそれを微笑ましく感じいつの間にかその場が笑いに包まれていた。


「さあ、私達も行きましょう!」


碧がそう言って駆け足でパルテノンに向かい始めると、譲治とミネルヴァがそれに続いた。残された勇輝は、隣にいたアスカの方を向いた。


「アスカ君。俺会ったばっかりで君のことよく知らないからさ、お菓子食べながらいろいろ話さない?」


「えっ?」


アスカは勇輝からの誘いに少し驚いた顔をしたが、その表情はすぐに笑顔に変わる。


「いいの?じゃあ、お言葉に甘えるとするよ」


二人は、ルカや先に追いかけて行った三人に続いて走り出した。







「・・・」


ここは暗闇に包まれた神殿の中。その神殿の階に、膝を抱えながら座り込んでいる者がいた。テティスだ。何も喋らず黙ってはいたが、頬を膨らまし明らかに不機嫌だった。

そこに遠くの暗闇の中からコツコツという足音が聞こえてきた。その音はどんどんテティスの方へと近づいて来る。


「なーんだ、結局お前もヤラレてんじゃねえか」


その足音はミマスのものだった。ミマスはテティスが戦士に敗北して機嫌が明らかに悪いことが分かっていたため、わざと嫌みまじりに声をかけた。しかし、テティスはミマスの方をチラッと見たものの、そのまま何も言わずにすぐに視線を逸らした。


「あんなに自信満々だったのに、ダセえヤツ」


ミマスはテティスに無視されたことが面白くなく、さらに追い討ちをかけるように鼻で笑いながら揶揄う。すると、テティスは目を合わせないまま独り言を言った。


「・・・アンタに言われたくないんだけど、この脳筋バカが・・・」


テティスの声はわざとミマスに聞こえるような大きさだった。案の定、その言葉はミマスの耳に入ってしまい、ミマスの顔から途端に笑みが消え眉を顰めた。


「おい、今なんつった?」


「・・・ああ、『脳筋バカ』って言ったんだよ。馬鹿にそのまま『バカ』って言っただけだよ。悪い?」


テティスは「バカ」を強調してミマスを嘲笑した。すると、その言葉に本気で怒ったミマスは目を見開き、声を荒げた。


「あんだと!?てめえ、灰になる用意はできてんだろうな!!」


ミマスは短気であり、特に自分のプライドを傷つけられるとたとえ味方であれ本気で怒り狂う。テティスは自分を睨みつけるミマスを横目で見て、思った通りに憤ったことに鼻で笑う。そして、自分の掌から小さな水球を数個作り出すと、それをミマスに見せつけて挑発するように弄ぶ。


「はっ!アンタの炎なんて、私の水技ですぐに御陀仏よ!!」


「やんのか!?」


テティスが水球を発生させたのを見て、ミマスも掌から炎を発生させる。


「上等だよ!!」


お互いが戦闘の構えを取り、身体からはパワーが溢れて禍々しいオーラが漂い始める。緊迫した空気に包まれ、今にも派手な喧嘩が始まりそうになる。

と、その時・・・


「やめろ二人共、喧嘩している場合か」


突然、ミマスとテティスとは違う冷たい声が響き渡った。

二人はその声にすぐさま反応し、その声の主の方を見る。二人の視界には金髪のロングヘアの大人びた雰囲気の女性が立っていた。二人はその顔を見て一気に青ざめる。


「ディオーネ!!聞いてよ、ミマスが私に『ダサい』とか言うから・・・」


「なっ、違えよ!喧嘩売ってきたのはコイツ・・・」


ミマスとテティスは喧嘩の責任を擦りつけようと揃いも揃って言い訳をし始める。その女性、ディオーネは、しばらく二人のやり取りを冷たい目で見ていたが、いつまでも二人から反省の言葉が出ないことに遂に痺れを切らした。


「やめろと言っているのが聞こえなかったか?」


無表情のまま、その冷たい声のトーンを変えずに二人を睨みつけた。はっきりと怒りを露わにしていないところが余計に恐ろしい。ディオーネの目を見て、二人の口喧嘩はピタリと止んだ。


「・・・済まねえ、悪かったよ」


「・・・ごめんなさい」


二人は少々悔しそうだったが、ディオーネには逆らえずやっと謝罪の言葉を口にした。


「分かればいい。それよりも・・・」


ディオーネは二人が謝ったのを確認すると、話題を切り替える。


「あの戦士達、意外にもしぶといようだな」


ディオーネの口から「戦士」の言葉が出ると、ミマスもテティスも血相を変えてヘラクレス達戦士のことを話し始める。


「ああ、特に『ソルジャーヘラクレス』ってヤツはやたらパワーもあるし、何より古代戦士の聖剣を持ってやがるんだ・・・」


「そうそう!あんな面倒な武器、他のヤツらも持ち始めたら堪ったもんじゃない!!」


先ほどまで喧嘩をしていた二人だが、両者共下に見ていた戦士達にまさかの敗北を喫して屈辱を味わっていたもの同士。二人の声には悔しさと怒りが現れていた。

二人の話を聞いていたディオーネも、戦士達がタイタン族にとって今後大きな障害になることは容易に想像できた。ディオーネは腕を組んで考え込む。


「そうなると、今のうちに潰しておきかないと少々面倒だな。私が直接やるべきか・・・」


「えっ、本当?今度はディオーネが行くの!?」


ディオーネがそう呟くと、それを聞いたテティスの顔が喜びでぱあっと明るくなった。目をキラキラさせながらディオーネの側に寄る。


「それなら私も一緒に・・・」


テティスがディオーネの手を取り、同行するために懇願しようとしたが、


「私が行こう」


ディオーネの背後から現れた別の者に遮られてしまった。その場にいた三人はその人物の方を見た。背丈が高く、顔にモノクルをかけた男性だった。


「・・・エンケラドス」


「ディオーネ、確かにあの戦士達は我々の任務の遂行において邪魔な存在だ。だが、そなたは他にやることがあるだろう?戦士共を倒すことよりも・・・」


エンケラドスは何か諭すように目を細めながら、自分に戦士との対決を任せるようにディオーネに告げた。ディオーネはしばらく黙り込んでいたが、納得したのか静かに頷いた。


「・・・ああ、そうだな。では、任せるとするか」


「ええっ!?せっかくディオーネの格好いいところ見れると思ったのに・・・」


ディオーネの影に隠れていたテティスは、ディオーネと一緒に行動できるチャンスを潰されてしまい少し恨みがましい様子でエンケラドスを見ていた。

すると突然、ディオーネが振り向き左腕をテティスの腰に回してグッと自分の方へと引き寄せた。咄嗟のことにテティスは驚いて固まってしまうが、ディオーネはそのまま右手でテティスの顎をくいっと持ち上げ、唇が重なってしまうくらいの距離まで顔を近づける。


「おやおや、私の普段の姿では不満かな?」


(・・・!!!)


怪しく光を放つトパーズのような黄色い目を細め、不敵な笑みを浮かべるディオーネの繊細な顔がテティスの目に焼き付く。

至近距離でディオーネに見つめられたテティスは頬を赤らめ、照れ臭そうに笑みを零す。


「いつも、かっこいいに、・・・決まってるじゃない・・・」


「フフフッ、可愛い子だ・・・」


ディオーネとテティスは、そのままお互いを見つめ合っていた。







「ケッ。あのイチャつきぶり、本当虫唾が走るぜ・・・」


テティスとディオーネのやり取りを少し遠くで見ていたミマスは、気色悪そうな表情を浮かべながら不快の言葉を吐き捨てていた。


「まあ、仲が悪いよりは良いではないか」


そんなミマスに、いつの間にか横にいたエンケラドスが話しかけてきた。


「其方とテティスもこのくらい仲がよければな・・・」


エンケラドスはボソッと独り言を言うと、それを聞きつけたミマスはムキになってエンケラドスを睨みつけた。


「お断りだ!冗談じゃねえよ!!」


ミマスはエンケラドスに指を刺しながら怒鳴ったが、エンケラドスに鼻で笑われて完全にいなされてしまう。ミマスは仕方なく落ち着くと、片手でエンケラドスの肩を掴んだ。


「・・・とにかく頼んだぜ、エンケラドス。アンタもやられりゃ、本当にディオーネ、いやリーダーに頼らなきゃならなくなる」


「・・・十分承知している」


また独り言のようにささやくとその場を去ろうと歩き始め、ミマスの手がエンケラドスの肩から滑り落ちた。

ゆっくりと遠ざかっていくエンケラドスをミマスは呆然と見つめていたが、ふと何かを思い出しエンケラドスを呼び止める。


「あっ、そういやさっきの『他にやること』って何だ?」


「・・・復活には、それ相応の代償が必要だからな」


「?」


エンケラドスが何か言ったが、ミマスにはハッキリ聞こえず思わず首を傾げる。ミマスは何と言ったのかと聞き返そうとするが、その前にエンケラドスがミマスの方を向いた。


「では、私は私で準備があるので失礼するよ」


そう言い残すと、エンケラドスは咄嗟に歩みを進め始めた。


「おいっ!」


ミマスは呼び止めようとしたが、エンケラドスはそれに構わず闇の中へと消えていってしまった。







何日かが過ぎて、遂に女神アテナとの交信の日がきた。この日は祝日で、学校が休みであるために街の方は遊びに出かける若者達でいつも以上に賑わっていたが、雑木林がすぐ近くのパルテノンの周辺は相変わらず人気は少なく閑散としている。

パルテノンの大広間の時計の針はもう少しで9時を回りそうになっていた。広間には譲治と碧、そしてアスカの三人がすでに集合しており軽く談笑をしていた。すると、カランコロンと玄関ドアに付属しているベルの音が鳴り響き、ドアから勇輝の姿が現れた。


「ふわあぁぁ・・・、おはようございま〜す」


三人はその音に気付いて、一気に視線が勇輝に集中する。


「おっ、来た来た。勇輝、早くこっち来いよ」


譲治に手招きされて勇輝は三人の側まで駆け寄る。


「あっ、もしかして俺、ビリっけつな感じ?」


ミネルヴァとルカの姿は見当たらないものの、勇輝は他のメンバーが全員集合していることに気づくと、遅れたことに申し訳なさそうに頭を掻いた。


「ええ。でも、一応間に合ってますから大丈夫ですよ!集合時間ギリギリですけど」


「みんな『パンクチュアル』ってことだね。いいことだよ」


「・・・えっ、パンク?」


「『時間通りの』って意味の形容詞ですよ」


碧に言われて気づく。ああ、自分の知らない英単語か・・・、と。帰国子女のアスカと成績優秀な碧の会話から自分が突き放されているような気がしてと、勇輝は思わずハハハと苦笑いする。

しばらくこんな調子で雑談をしていると、大広間の奥のドアがギイッと音を立ててゆっくりと開いた。


「あっ!勇輝も来たんだ!」


ドアからルカがひょっこり飛び出て来た。ルカはフワフワと浮遊して勇輝の目の前まで来ると、その顔を不思議そうに見つめた。


「そんな疲れたような顔しちゃって、大丈夫?」


「ん〜?」


ルカの見た勇輝の顔は、目が半開きで少し虚にも見えた。勇輝はルカからの指摘に適当な返事をすると、眠いと言わんばかりに片目を擦り始めた。


「昨日の夜、休みだと思って結構な時間ネットサーフィンしててさ・・・、正直寝足りてないんだよねえ・・・」


ネットサーフィンは勇輝の趣味の一つ。普段だったら程々の時間でやめるのだが明日が祝日だと言うことで油断し、昨夜長時間夢中でパソコンをいじってしまい結局寝たのは日付が変わってからだったのだ。勇輝が集合時間ギリギリにパルテノンに到着したのも、眠気から準備が遅れてしまったせいである。

ルカが来てから少し時間をおいてミネルヴァもドアから姿を現した。普段パルテノンにいるときはフクロウの姿をしているが、今日は珍しく「峰元さやか」の姿をしていた。コツコツと勇輝達の方へ歩いて来る。


「待たせたな。どうやら『私が席外した間』に全員揃ったみたいだが・・・」


「ミネルヴァ様〜、俺ちゃんと時間通り来たんですけど・・・」


遠回しに勇輝が遅刻したかのように言うミネルヴァに勇輝は言い訳をしようと思ったが、不意にゴトッと何か重みのあるものがテーブルの上に置かれる音が聞こえ勇輝は視線をテーブルにやる。


「何これ?・・・水晶玉?」


テーブルに置かれていたのは少し大きめの水晶玉だった。しかも、様々な色彩の宝石の装飾が施された豪華な台の上に置かれており、いかにも「魔法道具(マジックアイテム)」という雰囲気を醸し出している。


「ああ。これを介してオリュンポスにいらっしゃるアテナ様と面会することができるんだ」


水晶玉を設置し終えるとミネルヴァはフッと突然振り返り、目の前にいた勇輝を軽く指差して窘めるようにその先を上下に揺らした。


「其方達、くれぐれも失礼のないようにな」


「は、はい・・・」


急にミネルヴァの真顔が現れて勇輝はたじろいたが、再びミネルヴァが水晶玉の調整に入ると勇輝は不満そうに口先を尖らせた。


(其方達って、絶対俺のことしか言ってないじゃんか・・・)


と思った瞬間、ミネルヴァの頭が動いた。マズイ、気付かれたかと思って勇輝は慌てて表情を変えるが、当のミネルヴァはアスカの方を見ていた。


「それと、アスカ。其方は少し隠れていてほしい。『戦士』に関わる問題は、我々当事者の間で解決することなのでな・・・」


「・・・分かりました」


アスカは軽く頷くと、ミネルヴァに言われた通り少し離れた大広間のカウンターの陰に待機した。それを確認すると、ミネルヴァは水晶玉の前で立ち膝をする。その横でルカも畏まった姿勢を取り始めたのを見て、後ろにいた三人はミネルヴァを真似て同じように立ち膝をした。

すると、突然透明なだけの水晶玉が光を放ち始める。


「「!!!」」


その眩しさに思わず三人は目を瞑ってしまう。その間何が起こっているのかわからない。

しばらくして光が消えていくのを感じ目を開けると、一人の女性が水晶玉によって映し出されていた。鎧兜を身につけ、大きな盾と長槍を両手に持っている。


『・・・』


その女性はゆっくり目を開けると、足元にいたミネルヴァとルカに目を向けた。


「アテナ様、お忙しい中時間を取ってくださり感謝いたします・・・」


『礼はいらぬぞ、ミネルヴァ。私も丁度、其方に伝えておきたいことがあったのだ。其方の方から一報を入れてくれて好都合だった』


「それは何よりでございます」


「アテナ様、お久しぶりでございます!!」


『うむ、ルカも元気そうだな』


「はい!」


ミネルヴァとルカの反応を見て三人は改めて理解する。今目の前にいるこの女性こそが、戦いの女神てなであるということを。その姿は人間と同じであるものの洗練されていて神々しく、ただ者ではないという風格を表すのには十分すぎるほどだった。

そんなことを考えながらすっかり見惚れていた三人だったが、


『其方達の後ろにいるのは・・・』


アテナが自分達の存在に気付いた。初めて見るアテナの姿にすっかり気を取られていた三人は突然呼ばれて慌てふためいたが、真ん中にいた勇輝がいち早く話し出した。


「あっ、はい!俺は大空勇輝と言います!えっと、変身すると・・・」


『ソルジャーヘラクレス、だな』


勇輝が言おうとした名前をアテナは先に答える。


「あっ、はい・・・」


まさかアテナが自分の名前を知っているとは思わず、後に続ける言葉に迷った勇輝は一瞬戸惑うが何とか短い返事をする。アテナは勇輝の顔をしばらくじっくり見ると、今度はその両隣にいる譲治と碧を順々にみる。


『向かっての右隣が、焔村譲治ことソルジャーテセウス。左隣が、水無月碧ことソルジャーペルセウス。既にミネルヴァから色々と聞いている』


「はっ、初めまして・・・」


「初めまして、アテナ様!」


アテナに見つめられた二人は緊張で固まりながらも辿々しく応える。後ろの三人の確認が終わると、アテナは一呼吸して間を置き再びミネルヴァを見下ろす。


『全員揃っているな。本題に入ろう、と言いたいところだが・・・』


アテナは後ろの方を横目でチラッと見た。


『そこに隠れている者もこちら来なさい』


「!!」


カウンターの裏に隠れていたアスカは存在に気づかれて思わずビクッと驚いてしまう。

どうしよう、呼ばれてはいるが自分は戦士とは関係がない。そう思ったアスカは前に出ようか迷ったが・・・、


「・・・アスカ、何をしている。早くこちらへ」


それを見兼ねたミネルヴァが少しイラついたような声で催促した。ミネルヴァに注意されて失礼なことをしているのだと思ったアスカは仕方なく陰から姿を現し、皆の側まで来ると譲治の横に並んで立ち膝をした。


「初めまして、アスカ=グリーンと申します・・・」


『アスカ、か・・・、よろしい』


アテナは初めて見るアスカの名を確かめ、そしてゆっくりと頷くとアスカにある頼み事をする。


『ではアスカ、早速だが其方の口から話してくれぬか?』


「えっ?」


アスカは驚いて目を丸くする。その顔を見てアテナは話を続ける。


『今回の謎の戦士の件については、其方が一番熟知しているようだからな・・・』


アテナは事前に謎の戦士「エース」の話はミネルヴァから聞いていた。しかし、もっと詳しい話が聞きたいと思っていたアテナは、目撃者であるアスカから直接証言してもらおうと考えていたのだった。


「・・・分かりました」


アテナの意図を理解したアスカはその頼みを引き受けると、ゆっくりと口を開ける。







ーーーこれは僕がアメリカのボストンにいた時の話です。


ここ神山地区で人間世界で破壊の限りを尽くすモンスターやタイタン族が現れていたのと同じように、ボストンでも街に出現しては暴れ回る怪物が何体といました。僕を含め住民達はその正体不明の怪物達を「UMA(ユーマ)」と言い、恐れていました。


しかし、ほぼ同時期にこれに対抗する者が現れました。それが「エース」です。エースは「神速の戦士」と名乗り、颯爽と現れてはUMA達を得意の雷撃で退治し、そして静かにその姿を消していました。


エースは黒い衣装と大きなハットで身を包み、目元を仮面で覆っていたためにその正体はほぼ謎でした。分かるのは、覗く目は琥珀色をしていたことくらいです・・・ーーー







『・・・なるほど。アスカ、その者は本当に勇輝や譲治、碧と同じ『戦士』なのだな?」


アスカの証言が一通り終わると、アテナは付け加えて質問する。


「はい。勇輝君達と同じようなブレスレットをつけていたので間違いないです。それに、妖精と一緒にいましたから・・・」


『妖精か、どんな姿をしていた?』


「えっと、ピンク色の髪の女の子だったと・・・」


『・・・はあ、分かった。通りで最近姿が見当たらないわけだ』


(ギクッ!!)


アテナの呟きを聞いたルカの顔が何故か青ざめていく。


「アテナ様、ご存知で?」


ルカの変化に気付いていないミネルヴァは、アテナが何か知っているような素振りを見せたのでルカに構わずアテナに問う。アテナはああと応えて一呼吸置くと、


『きっと『ダフネ』のことだろう』


一度紡いだ口からある名前が出てきた。その名前を聞いた瞬間、


「あの、ごめんなさいっ!!!」


ルカが勢いよく床で土下座をした。何故このタイミングで土下座しているのかが全く理解できず、ミネルヴァとその後ろにいた四人は呆気にとられて口が勝手に開いてしまう。しかし、それとは対照的にアテナの方は何か見当がついているのか冷ややかな目でルカを見ていた。

しばらくしてルカがゆっくりと顔を上げると、半泣きになりながら弁明を始めた。


「実は預かっていた五つのヒーローストーンのうちの一個をダフネに渡しちゃったんです。『私も戦士探しやりたい』ってすごく迫られちゃって、断り切れなくて、つい・・・」


ルカは必死になって言い訳をしたが、それは逆効果だった。


「何だと!?ルカッ!ヒーローストーンは世界の危機を救う希望なのだぞっ!!同じ妖精とはいえ黙って手渡すとは・・・」


広間中にミネルヴァの怒鳴り声が響き渡った。その大きく鋭い声にルカの身体はすっかり固まってしまい、ギイィィィッとゆっくり頭を横に捻るとそこには今まで見たこともないような鬼の形相の顔があった。


「ひいっ!?す、すみません・・・」


真正面から激怒したミネルヴァにギロリと睨みつけられてさらなる恐怖に追い討ちをかけられたルカは、もうすでに号泣していた。


((か、顔が完全に般若になってる・・・))


その様子を目の当たりにした勇輝達四人もミネルヴァのあまりの迫力に、自分達が怒られているわけではないにも関わらずとてつもない恐怖感を覚えた。

すると、それを見兼ねたアテナはまた溜め息を吐くと静かに話の続きに映ろうとし、その吐息を聞いたミネルヴァはハッとなって落ち着きを取り戻し再びアテナを見上げた。


『・・・ルカ。ミネルヴァのいう通り、何の報告もせずにヒーローストーンを勝手に手渡したことは重罪だ。本来なら戦士のパートナーとしての役目を解任することに加え、オリュンポスからの追放もおかしくないが・・・』


「ええっ、そんな!?故郷に一生帰れなくなるんて、それだけはお許しを!!」


「追放」という単語を聞いてルカは頭を地面に打ち付けるほどに何度も土下座をする。


(ルカ・・・)


いけないことをしたとはいえこの仕打ちは惨い。そう思った勇輝がルカを庇いに入ろうとして前のめりになって何か言おうとすると、その様子に気付いたアテナが勇輝よりも先に話し出す。


『待て、判決は私一人で決めるものではない。結果が出るまで引き続き戦士達のサポートをしなさい』


「えっ・・・」


予想外の言葉にルカは呆気に取られてアテナの顔を見る。その顔は笑ってはいないものの、怒りとか軽蔑とか、そういった感情は一切見られない。アテナはさらに続ける。


『それに・・・、今はそれどころではない、この話の続きは事態が収束してからだ』


アテナの低いながらも迫力ある声が響く。ルカはその言葉に感銘を受けた。


「あっ、ありがとうございます!!!」


完全に許された訳ではないが、ルカはアテナから幾らか猶予を貰えたのだ。ルカからは恐怖ではなく喜びの涙が溢れてくる。ルカは精一杯の感謝を込めて深々と頭を下げた。


(ふう、よかった・・・)


ルカがすぐにでもオリュンポスから追放されるのかと恐れていた勇輝も、勇輝と同じことを考えて心配していた他の三人も、一時的に見逃してもらえたルカを見て安堵した。


『・・・話が少し逸れてしまったな』


場の雰囲気が落ち着くと、アテナが話を戻す。


『確か其方達はそのエースとやらと接触したいと申していたな。しかし、ヒーローストーンだけを片手に持って飛び出したダフネが、何かしらの連絡手段を持っているとは考えにくい。残念だが、今すぐに接触することはできないだろう・・・』


アテナは淡々と「エースと今すぐに話をしたい」という勇輝達の願いは叶わぬことを説明した。


「そうですか・・・、承知いたしました」


ミネルヴァがそう言うと、勇輝達の間に落胆の空気が流れた。自分達と同じようにパートナーの妖精を引き連れて敵と戦っているのだから、エースの存在はそう遠くにはいないような気がしていたのに・・・。


『・・・其方達、いつまでも悲観することはない。世界の危機が訪れようとしている今、エースもきっと其方達の目の前に現れるだろう』


そんな空気の中、アテナから慰めの言葉が与えられた。


「しっ、失礼しました。いつまでも悲観していてはいけませんね・・・」


アテナから指摘されて六人は、自分達が元々不確かであった願いが叶わなかっただけでクヨクヨと心に虚しさを引き摺っていることに気付き、少し恥ずかしくなって顔が赤くなる。


『うむ。では、今度はこちらの話に移らせてもらうぞ』


目の前の六人が改めて心を入れ替えたのを確かめると、今度はアテナの方から話を進める。


『実は最近、妙にモンスター達の数が減ってきているのだ』


「モンスターが、減ってる?」


アテナが告げたことは思ったより深刻でなく意外な内容だった。ミネルヴァは少し考え込むと、ハッと何か思い出す。それは、後ろにいた勇輝や譲治、碧も同じだった。


(そう言えば、ここ最近モンスター族と戦った記憶がない・・・)


三人が戦士に成り立て頃はタイタン族の存在も知らず、街に現れては被害をもたらすモンスターを数々倒していた。しかし、タイタン族が現れてからもモンスター達は度々出現していたもののその数は減っていき、ここ最近に至っては全くと言っていいほど姿を現さなくなっていたのだった。


「じゃあ、モンスター達の襲撃による被害も減っているということなのですね」


モンスター達の襲撃が減れば、その分世界の平和と秩序は守られる。この話をを聞いたルカは喜んだが、それとは対照的にアテナの顔は先程よりも一段と真剣な表情へと変わり目も鋭くなった。


『ああ。しかし、油断しない方がいい。あまりに突然のことで、私を含めオリュンポスの神々はこれには何か裏があると考えている。』


そう言うと、その視線はミネルヴァと戦士三人へと向けられる。


『今、我々の方で原因を調査しているところだ。分かり次第其方達にも伝える。ミネルヴァ、引き続き頼むぞ』


「はっ!!!」


ミネルヴァが深く頭を下げると、それに倣って横にいたルカや後ろに並んだ四人も深々と礼をする。それと同時に、女神アテナの姿を映していた水晶玉が一瞬ピカッと大きな光を放つと、次にその光が消えた時にはもうアテナの姿はなかった。

女神の目の前にいた緊張が皆からまだ抜けないらしく、しばらく広間の中で沈黙が続いた。


「はあ、なんか話してただけなのに疲れちゃった・・・」


最初に口を開いたのは勇輝だった。緊張から解き放たれて勇輝の身体に一気に倦怠感が現れる。それを皮切りに沈黙もなくなり、他の皆も次々に喋り出す。


「本当だな。最初は女神の存在なんてあまりイメージつかなかったけど、いざ見てみると迫力ありすぎて流石にビビったなあ・・・」


「僕もなんだか見ているだけで畏れ多い感じがしたよ・・・」


「でも、なんだか・・・」


碧がミネルヴァの方をチラッと見る。


「ミネルヴァ様と同じ雰囲気でしたね、アテナ様って」


「何?」


水晶玉をせっせと片付けていたミネルヴァだったが、クスクスという碧の笑い声が聞こえて少し不審そうな顔で振り向く。


「あ、その、かっこいい口調とか、クールビューティーって感じの顔とか・・・」


碧が恥ずかしそうな顔で慌てて言い訳していると、横から勇輝がボソッと呟いた。


「でも、怒りっぽいところは主従で全然ちが・・・イデデデデデッ!!」


突然勇輝の両頬にかなりの痛みが走った。抓られている、そう思った勇輝の目と鼻の先にミネルヴァがいた。ミネルヴァの口角は上がっているものの、ギラリと光る目は笑っていない。


「今なんて言ったんだあ・・・?」


「す、すびばせん・・・。いひゃいんで、て、はなしてくだひゃい・・・」


勇輝は痛いのと怖いので半泣きになっていたが、余程癇に障ったのかそれでもミネルヴァは容赦無く勇輝の頬を横に広げていた。

そんなやりとりを気まずそうに見ていた他の四人であったが、この空気に耐えられなくなったルカがビューンとどこかに飛んでいく。ルカの飛んでいった先には黒いリモコンがあった。


「ねえ、気分転換にテレビでも観ようよ!なんか面白そうな番組やってるかもしれないし・・・」


ルカが自分の身長以上のテレビのリモコンを辿々しく操作すると、広間の上の方から音が聞こえて来た。そちらへ目を向けると、天井から吊り下げられるタイプの黒いテレビの画面が光っていた。どうやらニュースをやっているようだった。


「な〜んだ、ニュースか」


ルカはバラエティ番組を見たかったようで、残念そうに肩を落としていた。よく見て見ると、テレビに表示された時刻は11時50分を示していた。


「昼前のニュースだよ。もう少し待ったら面白いの始まるんじゃないかな?」


「そっか、じゃあこのまま待とう!」


ルカは開き直り、リモコンを近くのテーブルに置くとその横に自分も腰を下ろしてテレビに目を向ける。それを見た三人もテーブルの近くにあったベンチ型の腰掛に座る。

しばらく四人でボーッとニュースを観ていると11時59分になり、テレビに映っていたキャスターが原稿を整理し始める素振りをした。


『これでこの時間帯のニュースは終わりです』


(はあ、やっと終わったよ)


今にも始まりそうなお昼のバラエティ番組に心を踊らせていたルカだったが、


『ここで緊急ニュースです』


「・・・えっ?」


突然のことに思いっきり水を掛けられてしまう。


『今日の11時半過ぎ、神山一番町公園で突如として巨大な茨が発生しました。茨は徐々にその数を増やしている模様で、現在原因調査のため公園周辺への接近が制限されているとのことです』


緊急ニュースの内容を見て、テレビを見ていた譲治と碧が勢いよく立ち上がった。


「あれは、敵の仕業だな!」


「ええ、早く行きましょう!ミネルヴァ様!」


「分かっている、すぐに向かうぞ!」


緊迫した雰囲気に包まれミネルヴァは真剣な表情で応えたが、


「みねるゔぁしゃま、い、いいかぎぇんはにゃしてえ・・・」


手は勇輝の頬を抓ったままだった。


「ま、待って。僕も・・・」


バタバタと玄関へ向かっていく勇輝達を見てアスカもそれについて行こうとする。


「アスカは行っちゃダメッ!!」


しかし、ルカがアスカの服の袖を引っ張ってそれを阻止する。


「でも・・・」


「アスカ君」


戸惑うアスカに声が掛けられた。振り向くと、玄関のドアを開けていた勇輝がアスカを真っ直ぐ見ていた。


「・・・これは俺達『戦士』の使命だから」


そう言い残すと、勇輝は玄関から飛び出して行った。








勇輝達は急いで公園に向かう。公園の近くまで来ると、少し大きめの立て看板が道路に倒れているのが見えた。近づいて見ると、立て看板には「立ち入り禁止」の文字があった。


「・・・おかしいな。立入制限していた人がいたはずなのに」


これを見た譲治はテレビで見ていた光景と違うことに気づきそう呟いたが、違和感はそれだけではなかった。看板は何かに激しく打たれたような凹みがたくさんあり、その周囲には制限用のパイロンやロープが無残に散らばっていた。

嫌な予感がして急いで公園の入り口まで来た勇輝達だったが、目の前に現れた光景に驚愕した。


「あれは!?」


公園は大量の茨に埋め尽くされていた。茨の間から垣間見える草花は今の時期であれば元気に育っているはずだが、今にも粉々になりそうなまでに茶色く枯れ果てていた。

そして、宙を見るとなんと茨で人が吊るされていた。その人はぐったりとしてぴくりとも動かず、気を失っていることが容易に分かる。


「やっと来たか。待ちくたびれたぞ・・・」


その横に背丈の高い男性が立っていた。


「アンタの仕業だな、その人を離せっ!!」


勇輝がその男を睨みつけて叫ぶと、男はフッと静かに笑う。すると次の瞬間、茨で吊るされていた人が勇輝達の方へ向けて投げ飛ばされた。


「わっ!?」


勇輝は突然のことだったが、投げ飛ばされたその人をしっかりと受け止める。


「そんな奴に興味はない。最初から離すつもりだったが?」


その男は気絶した人を近くの木に寄り掛からせている勇輝を見ながら、馬鹿にするように低く笑う。その態度に、勇輝は我慢できなかった。


「無防備な人を弄びやがって・・・、アンタ絶対許さない!!!」


「・・・その気になったか、いいだろう」


男は目を見開き戦闘の構えを取った。


「このエンケラドス、貴様ら戦士の力を試してやろう!!!」


「みんな、いくよっ!!!」


その男、エンケラドスが構えたのを見て三人は左腕のブレスレットを翳して叫んだ。


「ヘラクレスパワーメタモルフォーゼッ!!」


「テセウスパワーメタモルフォーゼッ!!」


「ペルセウスパワーメタモルフォーゼッ!!」


叫んだと同時に三人が光に包まれる。


「いくぞ、パルテノンモードッ!!」


それを見たミネルヴァも続いて変身の言葉を叫び、四人は光に包まれながら姿を変えていった。その光が消えると、変身した四人が姿を現した。


「輝く勇輝の戦士、ソルジャーヘラクレスッ!!!」


「燃え盛る情熱の戦士、ソルジャーテセウスッ!!!」


「清らかなる慈愛の戦士、ソルジャーペルセウスッ!!!」


「戦いの女神アテナに仕えし魔導士ミネルヴァ、ここに参上!!!」


変身した四人とエンケラドスの両者が向き合う。張り詰めた沈黙に包まれていたが、先に動いたのは戦士達とミネルヴァの方だった。


「「はあああああっ!!!」」


四人が同時にエンケラドスへと向かっていく。しかし、エンケラドスは構えたまま動かない。四人とエンケラドスとの距離がどんどん狭まっていき、その間隔はもう2、3メートルしかない。


「・・・」


遂にエンケラドスは行動に出た。

エンケラドスは構えていた腕を思い切り上へ振る。すると、突然メキメキという音が聞こえ地面が割れ始めていた。割れたその隙間から何かが見える。


「!?、みんな避けるんだ!!」


ミネルヴァが叫んだ直後、地面から勢いよく数本の茨が飛び出て来た。四人はそれぞれ茨を見切って躱し、茨との距離を取る。


「この位はやるか・・・」


エンケラドスが手招きすると、先ほどまで四人を狙っていた茨達が集まってくる。どうやら茨達はエンケラドスの指示によって動いているらしい。


「行け」


エンケラドスが手を前に出すと茨達は一斉に四人に向かって飛びかかっていく。


「こいつら先に片付けるぞ!!」


迫り来る茨を前に、テセウスが手から赤く輝く炎を出す。


「パッションストリームッ!!!」


テセウスが放った炎の渦は茨達を巻き込む。巨大とはいえ植物である茨達は炎に弱い。炎が燃え移った茨達はどんどんと黒くなり、やがて塵となって跡形もなくなる。


「よしっ!!」


効果絶大であることにテセウスは思わずガッツポーズをしたが、


「!?」


メキメキッと地面からまた不審な音が聞こえ、次々と茨が発生する。


「それなら私達も!!」


今度はペルセウスとミネルヴァが茨に挑む。


「フローズン・ハートブレスッ!!!」


「フェザーアローッ!!!」


二人の技も茨に命中し次々となぎ倒されていったが、結果は同じだった。倒されてもすぐに地面から止め処なく新しい茨が発生して妨害され、肝心のエンケラドスとの距離が縮まらない。


「くっ、一か八かだ!ジャスティスブレードッ!!!」


ヘラクレスが剣を鞘から抜くような動作をすると、白い光の剣が右手に握られた。


「うおおおおおっ!!!」


ヘラクレスは行手を阻む茨達をその剣でどんどん斬り倒し、強引にエンケラドスへ近づこうとする。時には茨の上を伝ったり跳ぶ時の踏み台にしたりと、アクロバティックに進んで行く。

ヘラクレスは遂にエンケラドスの目の前まで来た。エンケラドスに斬りかかろうと大きく振りかぶった時だった。


「・・・かかったな」


振りかぶったヘラクレスの腕に、いつの間にか背後から迫っていた茨が巻き付いてきた。


「あっ!?」


腕に巻き付いた茨にヘラクレスは気を取られた。すると、その瞬間を好機とするばかりに数本の茨が次々にヘラクレスに巻き付き始める。


「「ヘラクレスッ!!!」」


他の茨と戦っていて視線を逸らせなかった三人が気付いた時には、ヘラクレスは両腕と共に胴体が縛られ状態だった。


「ああ、惜しい惜しい」


エンケラドスは捕まえたヘラクレスを自分の側へと引き寄せる。背後にいるエンケラドスの囁きがヘラクレスの耳元に吹き込まれる。


「離せっ!くそっ、こんなの・・・」


耳元が緩い感触に襲われ、悪寒がしたヘラクレスは早く抜け出そうと身体を拘束している茨を取り払おうともがく。抗うヘラクレスの姿をエンケラドスは面白そうに見つめる。


「ほう、抜け出すつもりか?どれ、試してみようじゃないか」


そう言うと、エンケラドスは右手を力強く握り込んだ。すると、ヘラクレスを拘束している茨が徐々に不気味な黒緑色のオーラを帯び始める。


「なっ、何だこれ!?」


それを見たヘラクレスは危機感を感じ、さらに必死になって腕を動かしてもがく。しかし、ヘラクレスはもがけばもがくほど茨の締め付けが強くなっていくような感覚を覚えた。


(・・・力が入らない。まさか・・・)


ヘラクレスは気付く。拘束が強まっているのではなく、自分自身の力がどんどん弱くなっていることを。


「はあ、はあ・・・」


呼吸がどんどん乱れていく。顔から大量の冷や汗が流れ落ちる。項垂れ、遂にほとんど抵抗できないくらいに体力を奪われてしまう。


「さあ、精力を全て吸い尽くされる前に抜け出せるかな?」


エンケラドスは他の戦士達やミネルヴァには見向きもせずにヘラクレスの苦しむ姿を一人楽しんでいる。その姿を見たミネルヴァが勘付く。


「まさか、彼奴最初からヘラクレスが狙って・・・」


「何だって!?早くヘラクレスを助け出さねえと・・・」


このままではヘラクレスがやられてしまう・・・。戦士という仲間であり、そして親友でもあるテセウスは一刻も早くヘラクレスを救うべく、さらに必死になって茨達を倒してエンケラドスへ向かって走ろうとする。しかし、


「何だ!?」


テセウスの足元に別の茨が巻き付き、そのまま引っ張ってテセウスの体勢を崩す。


「ぐわっ!!」


テセウスは地面に思い切り叩きつけられた。


「くそっ・・・」


テセウスは痛みが残る身体を踏ん張って起こすと、目の前の茨達はテセウスを挑発するようにその身体をうねらせている。


「この茨・・・、私達をヘラクレスに近づけさせないつもりなんだ・・・」


ペルセウスの顔が青ざめる。無限に沸き続けるこの茨達は自分達を攻撃するものではない。一人だけ古代戦士の武器を扱えるヘラクレスを先に仕留めるために、邪魔が入らないようにただ妨害するだけのものであると、ペルセウスはようやく気付いたのだ。


((どうすれば・・・))


無数の茨に囲まれ、背中を合わせた三人は皆どうすることもできない悔しさと絶望感に苛まれていた。









「勇輝君・・・」


「ダメだって!側まで来るのでさえ危ないのにっ!!」


戦いが行われている所から少し離れた場所に、茨から辛うじて難を逃れていた大きめの植木が数個連なっている。その裏に二人の影があった。パルテノンで待機しているはずのアスカとルカだった。


「でも、このままじゃ勇輝君が・・・」


アスカは拘束に苦しむヘラクレスの姿を見ているだけでは耐え切れず植木の陰から飛び出ようとするが、それをルカは必死に止める。


「アスカまで巻き込まれたら元も子もないんだよ!戦士じゃないのに出しゃばっちゃダメ!!」


「っ!!」


ルカの言葉を聞いて、アスカの脳裏にふと何かが映った。


ーーー戦士でもないアンタが首突っ込むな、足手纏いなんだよ!ーーー


その瞬間、アスカの目からボロボロと大粒の涙が零れた。


「・・・ハハハ。結局エースと同じこと言われちゃったなあ・・・」


「アスカ?」


「僕にも、あんな力が、あったらいいのに・・・」


アスカの声は上擦り、そして所々掠れていた。溢れた涙が頬を伝い、それをアスカは服の袖で拭き取る。

すると、それを見ていたルカが少し気まずそうに聞く。


「・・・ねえ、アスカはどうしてそんなに『助けたい』って思うの?」


「えっ?」


「だって、分かってるでしょ?タイタン族との戦いは、ヘラクレス達でさえ下手したら命を落とすかもしれないんだよ!なのに・・・、なんで自分から危険なことしようとするの?」


どうして?どうしてアスカはそこまで頑張ろうとするの?アスカを見ていると、何だか・・・

ルカの声は震えていた。そして、その顔からは緩い一滴が滴り落ちていた。

それを見たアスカは、少し俯くと目を瞑り笑みを零した。


「・・・世界を守るのは、勇輝君達だけの使命じゃないからだよ」


アスカはそう呟くと、再び戦いの方へと目を向ける。


「僕の父さんは実業家でね、責任感とか協力の大切さを誰よりも知っていた。だから、僕は小さい頃から教えられてきたんだ、『一人一人が責任を持って行動し、壁にぶつかった時は仲間と助け合ってそれを乗り越えろ』ってね」


「・・・アスカ」


「勇輝君達は同じ世界に住む仲間、いや、『友達』だから。だから・・・」


アスカは覚悟を決め、勢いよく立ち上がる。


「この世界を守るために、僕も戦うんだっ!!!」


ピカッ・・・!!!


アスカが叫んだ瞬間、突如として眩い大きな光が現れた。その光は、ルカが持っていたバッグの中から放たれていた。


「!?、ヒーローストーンが・・・」


驚いたルカが慌ててバッグを開けると、中に一つだけあった緑色のヒーローストーンが輝きを放ちながらゆっくりとアスカの左手首へ向かっていく。


「あれは・・・?」


その光は遠くにいるエンケラドスをも引きつけ、不審そうにその光景を見つめる。


「アスカ!?何故ここに・・・」


その光景を見ていたミネルヴァは、アスカが約束を破ってこの場に来たことを叱りそうになった。しかし、その気はすぐに失せた。今まさに、目の前で新たなる戦士が誕生しているのだ。

アスカの左手首にブレスレットが現れると、ミネルヴァは咄嗟に叫ぶ。


「アスカ、それは戦士として覚醒した証(あかし)。『オデュッセウスパワーメタモルフォーゼ』と叫ぶんだ!!」


「・・・、はいっ!!」


アスカはブレスレットを嵌めた左腕を翳(かざ)して思い切り叫んだ。


「オデュッセウスパワーメタモルフォーゼ!!!」







「くっ・・・!?」


突然現れた眩い光に、思わずエンケラドスは両腕で目を塞いでしまう。それと同時に、周囲ではメキメキと何かが壊れるような音が聞こえ始める。


「!?、茨が・・・」


辛うじて目を開けられていたテセウスが目の前の光景に驚いて叫んだ。戦士達の攻撃を受けてもなおどんどん増殖していた茨がその光を浴びた途端に苦しみ暴れ、終いにはボロボロと崩れ始めたのである。

拘束を受けていたヘラクレスが、崩れる茨と共にスルッと抜け落ちてしまう。気を失っているのか、そのまま地面に衝突しそうになる。


「あっ、危ない!」


そうペルセウスが叫んだ瞬間、ヘラクレスは視界から姿を消していた。視線をずらすと、ヘラクレスは光に抱き抱えられていた。その光が着地すると同時に光はたくさんの粒となってスッと宙へと消えていき、一人の人物が姿を現す。

抱き抱えられていたヘラクレスが目を覚ます。その目には見覚えのある顔が映っていた。


「・・・アスカ君」


ヘラクレスは驚きのあまり目を見開いた。

確かに目の前にいるのはアスカであったが、「いつものアスカ」ではなかった。緑色の服を見に纏い白いマントを翻した、戦士の姿をしていた。

アスカはそのままヘラクレスを側にあった一本の木に寄り掛からせた。


「ヘラクレス、大丈夫!?」


隠れていたルカがヘラクレスを心配して側まで寄って来た。


「ああ、何とか・・・、ね」


ルカがヘラクレスの顔を覗き込むとヘラクレスは笑顔を返してくれたが、話す気力もほとんどなくなるほど疲れているのが分かった。

その様子を見て、アスカは立ち膝をついてヘラクレスと視線を合わせると静かに囁く。


「勇輝君。いや、ヘラクレス。後は僕達に任せて」


そう言うとすぐに立ってエンケラドスの方へと振り向く。


「貴様・・・」


突然の邪魔が入った。エンケラドスは堅い表情こそ変わっていなかったが、その声には明らかに不愉快さが混じっていた。緑色の鋭い目がアスカを睨みつける。

アスカはエンケラドスの方へと数歩歩みを進める。そして、挑むかのように目と目を合わせて叫ぶ。


「華やぐ叡智の戦士、ソルジャーオデュッセウス!!数多の智略、咲かせて魅せようぞっ!!!」


オデュッセウスの渾身の叫び響き渡る。

ヘラクレスの側でその姿を見ていたルカは、思わず口から感嘆の言葉が漏れる。


「ソルジャー・・・オデュッセウス。アスカ、君の強い気持ちがヒーローストーンと共鳴したんだね・・・」


新たな戦士が誕生し、ルカだけでなく他の戦士達やミネルヴァは歓喜と心強さに笑みを零していたが、


「・・・フッ」


そこに静かながらも威圧感のある、別の笑い声が聞こえた。エンケラドスが、笑っていたのだ。


「フハハハハハッ、実に面白い!!」


甲高い笑いが響き渡り、エンケラドスはオデュッセウスを再び睨みつける。その目は怪しく鈍く光り、ただならぬ狂気に満ちていた。


「本当はヘラクレスとやらを先に始末したかったところだが・・・、いいだろう、貴様らから葬ってやろう!!!」


エンケラドスがそう叫んだ瞬間、地面から大量の茨が発生した。茨達は次々と四人に襲い掛かろうとする。


「チッ、しつこい奴等め・・・!!」


「いけない!これじゃあまた囲まれちゃいます!!」


「くそっ、これじゃあいつまで経ってもアイツとまともにやり合えないじゃねえか・・・」


テセウスとペルセウス、ミネルヴァの三人は茨のしぶとさに悔しさを滲ませていたが、


「僕に任せて!!」


オデュッセウスが前に出て両腕を横に広げた。


「エメラルドセラピーッ!!!」


オデュッセウスから深緑の風が吹き荒れ辺りを包み込む。すると、その風を浴びた茨達が一斉に攻撃をやめ、うねって暴れ始めた。どうやらこの風には、茨達が嫌う成分があるようだ。

茨達が苦しんでいるのを確認すると、オデュッセウスはテセウスとペルセウス、そしてミネルヴァの方を見て叫んだ。


「みんな、茨にトドメをさしてくれ!!」


オデュッセウスは再び視線を変えると、エンケラドスの方へと直進していった。それを見た三人はお互いを見合って頷き合い、茨達へ向かってそれぞれ攻撃を放った。


「パッションストリームッ!!!」


「フローズン・ハートブレスッ!!!」


「フェザーアローッ!!!」


苦しんでいるところを攻撃されては一溜まりもない。茨達は三人の技をまともに喰らってしまい、次々と消滅していく。オデュッセウスが放った風の効果は絶大で、風を嫌って地面から新たに茨が発生することもなくなり、増殖し続けていた茨はあっという間に全て消滅した。


「はあああああっ!!」


「ふん・・・」


三人が茨を片付けている間に、オデュッセウスは一人エンケラドスに挑んでいた。お互いの攻撃が拮抗し合い、なかなか勝負が動かない。


「これでも喰らえっ!!」


オデュッセウスが右拳を大きく引いて渾身の一撃を喰らわせようとする。拳は真っ直ぐ進み、エンケラドスの胸元に命中した。


「やった・・・、!?」


しかし、オデュッセウスは右拳からエンケラドスを殴った感触が抜け落ちていくような気がした。よく見ると、エンケラドスの身体が黒く染まり始め、それはまるで花弁が散るように消滅していく。衝撃を受け硬直した瞬間、背後から声が聞こえた。


「もらったぞ!」


オデュッセウスの背後から大きな影が迫っていた。振り向きかけた時には、すでにエンケラドスが目の前まで距離を詰めていた。


(しまった!)


エンケラドスがオデュッセウスに殴りかかろうとしたその時だった。


「それはこっちのセリフだ!!」


「何!?ぐわっ・・・!」


何者かの声が聞こえたと同時に、エンケラドスは横から攻撃を受けていた。かなりの衝撃にエンケラドスは吹き飛ばされてしまう。

突然のことに驚いて振り返ると、そこには先ほどまで疲れ果てていたヘラクレスが立っていた。


「ヘラクレス、動いて大丈夫なのかい!?」


オデュッセウスは心配して慌ててヘラクレスの方へ駆けつけた。しかし、ヘラクレスは先ほどまでのことが嘘だったかのようにピンピンしていた。


「へへっ!さっきの技を浴びたら、なんか元気でちゃってさ・・・」


そう言うと、ヘラクレスは吹き飛ばされて倒れ込んでいるエンケラドスの方を向いた。


「行くよ、オデュッセウス!」


ヘラクレスの横顔は自信に満ち溢れていた。まるで、オデュッセウスを心から信頼している仲間であると言っているかのように・・・。


「・・・ああ!!」


オデュッセウスもそれに応え、ヘラクレスの横に並んで構え直した。


「貴様ら・・・」


エンケラドスは二人を睨みつけながらよろよろと起き上がる。


「ただで済むと思うな!!!」


攻撃の体勢を取り直して二人に襲い掛かろうとしたが、


「!?」


突然、エンケラドスの動きが止まった。


「・・・何用だ?・・・うん、うん。・・・ああ、承知した」


エンケラドスが何か呟いている。戦士達は不審そうにそれを見ていたが、しばらくするとエンケラドスははあっと溜め息をついて戦士達の方を見返した。


「残念だがタイムリミットだ。急用ができてしまったのでな・・・」


そう言うと、エンケラドスの周囲に黒い渦が発生し始めた。それは次第にエンケラドスの全身を包み込むように大きくなっていく。


「逃げる気か、そうはさせぬぞ!」


いち早く反応したミネルヴァは、咄嗟に杖から白い魔法弾を数発繰り出した。それらは渦を纏うエンケラドスの目の前まで直行し、衝突して渦と拮抗する。

しかし、黒い渦の力は凄まじく衝突した魔法弾は次々と破壊されて散り散りになってしまう。


「くっ・・・」


消滅した無数の魔法弾のかけらが空中に飛び散る。その間から、わずかにエンケラドスの顔が見えた。まるで嘲笑うような不敵な笑みを浮かべた、不気味な表情だった。


「さらばだ。また戦える時を楽しみにしているぞ・・・」


「待てっ!!!」


ミネルヴァがそう叫んだと同時に、エンケラドスの姿は黒い渦と共に消えてしまった。







「ねえ、よかったの?助けに入らなくて」


「ああ、こっちの戦士の実力を見たかったんだよ。おまけに、新しい戦士の誕生にも立ち会えたしいいもん見れたよ。しかし、まさかボストンにいたあのボーイが戦士になるとはね・・・」


「『足手纏い』とか言ってわざと冷たく当たって関わらせないようにしてたみたいだけど、結局彼は何にも変わってなかったね。他人のことほっとけないところ・・・」


「ったく、それで毎回ヒヤヒヤしたんだこっちは・・・。ありがた迷惑もいいとこだったよ」


「で、どうなの?見た感じの感想は・・・」


「パワーはまずまずだけど、集団としての役割認識が少し甘い。各々がそれなりに上手い立ち回り方をしなきゃ、親玉どころかディオーネとすらも張り合うのが厳しくなるな・・・」


「唯一古代戦士の武器を扱えるあの『ヘラクレス』って子の力を、最大限に発揮できるようにしないとね!!」


「おっ、わかってるじゃん?」


「じゃあ早速、あなたが司令塔として合流しなきゃ!」


「いや、生憎私にはまだやることがあるんだ。もう少しだけ時間をかけさせてもらうよ」


「ええ、ルカに早く会いたいのになあ・・・」


「ボーイフレンドが恋しい?先にあっちに行っててもいいけど?」


「ううん、あなたについて行くわ!だって、私はあなたのパートナーですもの!!」


「ハハッ、こりゃあ頼もしいや!じゃあ行くよ、ダフネ!!」


「うん、エース!!」




To be continued…

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