第14話 サックは銅級冒険者

「しかしワシ以上の威圧を鼻歌感覚で発する

とは今までどんな生活しとったんじゃ?」


ポリポリと茶菓子を頬張りながらラドラが問う。


「ホントです。マスターは王都で最強を誇る

冒険者だったんですよ。私への威圧も防い

でくれましたし。」


リノアもラドラの隣でお茶を飲む。

ラドラが

「構わないから一緒にお茶するのじゃ。」

と控えていたリノアを隣へ招いていた。


「リノアに威圧かけた訳ではなくてじゃな。

サックがあまりにも涼しい顔をしとるから

どこまで耐えられるか見たかったんじゃ

よ。」


「で、強くしすぎて範囲が拡がったと?」


「う、うん…すまぬ。」


大きなため息のリノアに小さくなるラドラ。

お茶をすすりながらコントのようなやりとりを楽しんでいると、


「しかしじゃ。サックには涼風程度にしか感

じなかったようじゃな」


「そんな事ないですよ。モルト山の中でもこ

んな圧力は感じたことなかったですよ。」


「で、モルト山ではどんな生活をしとったん

じゃ?今の口ぶりでは魔物、たおしとった

んじゃろ?」


「まぁ、拾われてすぐは生きた心地はしなか

ったですね…」


遠い目をしつつお茶をすする。過去の修行の日々がフラッシュバックしカップを持つ手が小刻みに震える。


「サ、サックさん?」


「サック?…大丈夫か?」


「はっ」としてカップをテーブルに戻すと渇いた笑いをし、咳払いを一つ。


「こほん。至って普通の生活でしたよ」


「どんな普通だったのでしょう…」


「目に生気が宿っておらん。現実逃避するほ

どの生活か。それほどに魔物と戦闘経験も

あるのじゃろう。」


「それで、依頼の事なのですが、直ぐに受け

られますか?」


どうやら俺の品定めのようなので話は終わりだろうと冒険者としての話に戻す。


「おお、そうじゃの。モルト山で生活してい

たのなら金級からのギルド証を発行しよ

う。ワシ権限で。」


「あ、お断りします。」


「え?」


「な、なんじゃと?こ、断る?」


リノアは手を口に当てて驚き、ラドラは身を乗り出してつめよってくる。


「登録したてで金級昇格は前代未聞じゃぞ。

何故断るんじゃ」


「俺が何を出来て、何を出来ないのかまだ自

分でも解らないと思います。なので通常通

り銅級から始めさせてもらって冒険者の基

本を学んでいきたいです。」


ラドラは目をパチクリさせている。見た目の年齢ではないのだろうがその仕草は愛らしく頭を撫でたいという衝動にかられる。


「わかった。そのまま銅級のギルド証で依頼を受けてくれ」


大きくため息を吐き奥の自分の机にいくラドラの背中に向かいサックはソファから立ち上がり頭を下げ、


「本日よりお世話になります。よろしくお願

いします。」


挨拶をし部屋を出ようと振りかえると、


「サック」


席についたラドラが声をかけてきた。


「リオルカの最後はどうだった?」


「自分のやることは全てやったと。それと後

を頼むと。」


「…そうか。」


机に肘をつき頭を沈めていた。












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